発表年:2004年
ez的ジャンル:"ベース・バカ一代"系エレクトロニカ
気分は... :脳が活性化する!
今回はドリルンベースのパイオニアSquarepusherの『Ultravisitor』(2004年)です。
Tom Jenkinsonのソロ・プロジェクトSquarepusherの紹介は、デビュー作『Feed Me Weird Things』(1996年)に続き2回目となります。
ベースの生演奏とブレイクビーツで構成される"ドリルンベース"というスタイルで音楽シーンに衝撃を与えたデビュー作『Feed Me Weird Things』(1996年)から14年が経過していますが、今年も最新作『Shobaleader One: D'Demonstrator』をリリースし、相変わらずの存在感を示しているTom Jenkinsonです。
『Shobaleader One: D'Demonstrator』(2010年)
正直、テクノ/エレクトロニカの分野に明るいわけではなく、Squarepusherの作品も全て聴いているわけではありません。それでもたまに彼の作品を聴くと、非常に刺激を受けます。実に脳が活性化する音世界だと思います。
今日紹介する『Ultravisitor』(2004年)は、数あるSquarepusher作品の中でも名盤との誉れが高い1枚です。
ただし、決して聴き易い作品ではないと思います。でも、その一筋縄ではいかない所が魅力のアルバムだと思います。
全体としては、益々"ベース・バカ一代"に磨きがかかってきた印象を受けます。いつも彼の作品を聴いて真っ先に思い浮かぶのは故Jaco Pastoriusですが、本作は特にJacoのイメージと重なります。ジャズ/クロスオーヴァーの色合いが強く、即興演奏のパートも多いので余計にそんな印象なのかもしれません。
個々の楽曲というよりもアルバム全体が醸し出すオーラに圧倒されます。その意味では全体の構成がいいのかもしれませんね。
ジキルとハイドのように、美しさと狂気が交錯する彼らしい音美学を堪能しましょう!
全曲紹介しときやす。
「Ultravisitor」
タイトル曲は脳内にビンビンとパルスが伝わってくるSquarepusherらしい仕上がりです。程良くメロディアスなのもいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=slA1I2xlqek
「I Fulcrum」
ジャズの即興演奏のような、つなぎの1曲。ライブなのか擬似ライブなのかよくわかりません。
「Iambic 9 Poetry」
本作のハイライト。美しく、澄み切った演奏でスタートしますが、徐々に狂気が顔を覗かせてきます。安静と狂気が背中合わせになっているような危さにゾクゾクします。Nu Jazz的な面白さもあるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=XXpzK1ItQGw
「Andrei」
美しく穏やかなアコースティック・チューン。美しすぎるのが逆に不気味です・・・
http://www.youtube.com/watch?v=4bM3yxq3iDg
「50 Cycles」
近未来のスラム街といった雰囲気の不穏な空気が流れるラップ入りの曲。アングラHip-Hop好きの人はなかなか楽しめるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=bJzbpO3O5s8
「Menelec」
僕がイメージするSquarepusherらしい電脳チューン。複雑に絡み合う電子信号たちが脳内を駆け巡ります。でも実に音楽的です・・・
http://www.youtube.com/watch?v=-PNHzcAD4wU
「C-Town Smash」
みんなでベース・ソロに酔いしれるための曲?なのかな・・・
「Steinbolt」
「Menelec」同様、脳内にビンビン響く電脳ロック・チューン。アルバムでも最も狂った仕上がりなのでは?確信犯的な凶暴さがSquarepusherらしいのかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=uyw-_JxwFPY
「An Arched Pathway」
暴発したベース・ソロといった感じなんですかね。このあたりになってくると、僕にはよくわかりません。
http://www.youtube.com/watch?v=_fMCl-3N38k
「Telluric Piece」
「An Arched Pathway」からシームレスにつながっています。現代音楽風のアブストラクト感があります。
「District Line II」
訳のわからん衝撃が体中を突き抜けていきます。僕がSquarepusherに求めているのはこうした刺激のような気がします。
「Circlewave」
この曲もライブなのか擬似ライブなのかよくわかりません。嵐の前の静けさといった雰囲気の演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=-VMX-Xb8ngE
「Tetra-Sync」
「Iambic 9 Poetry」と並ぶ本作のハイライト曲。"ベース・バカ一代"とも呼びたくなるJenkinsonの高速ベースが唸り、彼ならではの音空間へと誘います。上手く表現できませんが、美しい凄みをもった演奏だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=8KspEq14CYQ
「Tommib Help Buss」
「Tetra-Sync」で最高潮に達したテンションをクールダウンするための1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=-dwZlcTOniE
「Every Day I Love」
優しいムードに包まれてアルバムは幕を閉じます。
http://www.youtube.com/watch?v=1fl6FiHiblE
『Feed Me Weird Things』(1996年)