発表年:2010年
ez的ジャンル:印象派MPB
気分は... :心の扉を開け放ちたい・・
今回は一部からは非常に高い評価を得ているTatiana Parraのデビュー・アルバム『Inteira』です。
発売直後の7月に購入し、それ以来愛聴しています。
夏よりも秋が似合うアルバムと先延ばしにしていたら、11月のエントリーになってしまいました(泣)
まぁ、満を持しての紹介ということで・・・
Tatiana Parraはサンパウロ出身の女性ヴォーカリスト。
これまで数多くのアーティストのレコーディングに参加しており、自身のアルバム・リリースが待ち望まれていたアーティストです。
ブラジル国内では、女性シンガー・ソングライターDani Gurgel、男性シンガー・ソングライター/ギタリスト/To Brandileoneといった同じサンパウロ出身の新進気鋭アーティストの作品や、ソングライター/ギタリストとして高い評価を得ているLuiz RIbeiroが手掛けた子供向けアルバム『Teco Treco』(2009年)へ参加しています。
また、アルゼンチン・ネオ・フォルクローレ・シーンの重要グループAca Seca Trioの作品や、Aca Seca TrioのメンバーAndres Beeuwsaertのソロ作にも参加しており、その方面からも注目を集めるようになります。現代アルゼンチン音楽の最重要アーティストと目され、日本でも熱狂的に支持されているCarlos Aguirreとも交流があるようです。
そんなTatiana Parraへの注目が高まる中でリリースされた、待望のデビュー・アルバムが『Inteira』です。
プロデューサーにはベース奏者のMarcelo Marianoが起用されています。Marceloは、元Sambalanco Trioのメンバー、Elis Reginaの元夫/プロデューサー&アレンジャーでとしてお馴染みのCesar Camargo Marianoの息子です。
ブラジルの先人ミュージシャンの有名曲と、自身のオリジナルを含むサンパウロの新進アーティストの楽曲が、いいバランスで配されています。
ゲストとして、プロデューサーMarceloの父Cesar Camargo Mariano、前述のようにTatianaとの親交が深いAca Seca Trio、ボディ・パーカッション集団Barbatuquesなどが参加しています。特にAca Seca TrioメンバーAndres Beeuwsaertのアレンジ&ピアノによる本作への貢献は大きいですね。
アルゼンチン人アーティストとの交流も交えて創られた、ブラジル音楽の新しい可能性を感じさせてくれる1枚です。
聴けば聴くほど、その美しい音世界に魅了されます。
全曲紹介しときやす。
「Abrindo a Porta」
Pedro Viafora/Pedro Alterio作品。サンパウロの新世代シンガー・ソングライター作品がオープニングです。揺れ動く心模様を見事に表現しているTatianaのヴォーカルが素晴らしいです。心の扉を開け放ちたい!
「Bandeira」
Paulo Cesar Pinheiro/Sergio Santos作品。Cesar Camargo Marianoがアレンジ&ピアノで参加しています。最高のサンバ詩人Paulo Cesar Pinheiroとミナス出身の実力派シンガー・ソングライターSergio Santosによる素晴らしい楽曲を、Cesar Camargo Marianoがエレガントなアレンジ&ピアノでバックアップしています。Tatianaの自然体のヴォーカルもグッド!聴いていて心が穏やかになっていくのがわかります。最高!
「Vento Bom」
Sergio Santos/Andre Mehmari作品。Andre Mehmariは繊細な演奏で人気のブラジル人ジャズ・ピアニストです。アコーディオンの音色が印象的な味わい深い仕上がりです。秋に聴くにはピッタリな1曲だと思います。
「Depois」
Dani Gurgel/Tatiana Parra作品。Tatianaとその才能が注目される女性SSW、Dani Gurgelの共作です。Aca Seca TrioのAndres Beeuwsaertがアレンジ&ピアノで参加している点でも興味深い1曲。美しくアーティスティックな仕上がりに、ただただ魅了されるばかりです。
「Oracao」
Dani Black作品。Dani Gurgelらと同じくサンパウロの新世代SSWとして注目されるDani Blackの楽曲を取り上げています。独特のミステリアスな雰囲気が印象的です。
「Choro das Aguas」
Ivan Linsの名曲をカヴァー(Vitor Martins/Ivan Lins作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)に収録されています。そんな名曲カヴァーをバックアップするのはをゲスト参加のAca Seca Trioです。メンバーのJuan QuinteroとTatianaによる奥深いヴォーカル、Andres Beeuwsaeの美しいアレンジが至高の音世界へと誘ってくれます。絶品!
「Inteira」
Giana Viscardi/Tatiana Parra作品。タイトル曲はTatianaがピアノも弾いています。新世代MPBの世界観に上手くジャズ・テイストをブレンドしている感じですね。Teco Cardosoのソプラノ・サックスも印象的です。
「Amor de Parceria」
Noel Rosa作品。1930年代に活躍したサンバ詩人Noel Rosaの楽曲をボディ・パーカッション集団Barbatuquesのビートと共に歌い上げます。アルバムのいいアクセントになっています。、
「Uma Valsa para Tres」
Chico Cesar/Chico Pinheiro作品。Tatianaが敬愛するChico Pinheiroの作品です。アレンジも担当しているDebora Gurgelの美しいピアノとNailor "Proveta" Azevedoのクラリネットのみというシンプル・サウンドでTatianaの歌表現を際立たせています。
「Testamento」
Milton Nascimento/Nelson Angelo作品。Miltonのオリジナルは『Clube da Esquina 2』(1978年)に収録されています。シブいセレクトのカヴァーですが、彼女の雰囲気にマッチしているのでは?
「Sabia」
Chico Buarque/Antonio Carlos Jobim作品。Andres BeeuwsaertのピアノとFernando SilvaのチェロのみというシンプルなバックとTatianaの歌が創り出す小宇宙に魅了されてアルバムは幕を閉じます。
関連して、Dani Gurgel、Aca Seca Trio等もチェックしてみると、さらに楽しめると思います。
Dani Gurgel『Nosso』(2008年)
今年はアルゼンチン音楽が密かなブームとなっていますね。
本作あたりをきっかけにアルゼンチン音楽へ入っていくのも良いのでは?