発表年:1968年
ez的ジャンル:ブラジリアン・サイケ
気分は... :独特のサイケ・ワールドがたまりません!
今回はブラジルを代表するロック・グループOs Mutantesによるサイケなデビュー・アルバム『Os Mutantes』(1968年)です。
Os Mutantesは1965年にサンパウロで結成されたブラジルのロック・グループ。
結成時のメンバーはArnaldo Baptista(vo、key、b)、Sergio Dias(vo、g)の兄弟と女性メンバーRita Lee(vo、fl、per)の3名。1966年にシングル「Suicida」でデビューし、1968年にはサイケ・ポップなデビュー・アルバム『Os Mutantes』をリリースします。
同じ1968年にはCaetano Veloso、Gilberto Gil/Tom Ze/Nara Leao/Gal Costaらと共に、ブラジル音楽シーンに衝撃を与えたトロピカリアの金字塔的アルバム『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』をリリースしています。
1969年に2ndアルバム『Mutantes』をリリース。その後、Liminha(b)が加入し、3rdアルバム『A Divina Comedia ou Ando Meio Desligado』(1970年)をリリースします。さらにDinho Leme(ds)が加入してグループは5人編成となり、4thアルバム『Jardim Eletrico』(1971年)、5thアルバム『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets』(1972年)をリリースします。
しかし、『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets』を最後にRita Leeがグループを脱退し、ソロへ転向します。その後、Rita Leeはブラジル・ロックの女王の地位を確立していきます。
Os Mutantesはメンバー交代を繰り返しながら存続しますが1978年に解散しています。2006年にArnaldo Baptista、Sergio Diasを中心に再結成され、2009年には35年ぶりのスタジオ・アルバム『Haih Or Amortecedor』をリリースしています。
ブラジルのグループですが、ブラジル音楽好きよりもサイケ/ロック好きからの支持が高いグループですね。
特に今日紹介するデビュー作『Os Mutantes』はブラジリアン・サイケの名盤として再評価の高い1枚ですね。当然ながら英米のサイケ・ロックの影響を受けた1枚ですが、ブラジル人ロック・グループならではの、と言うかOs Mutantesにしか出来ない、独特のサイケ・ワールドを創り上げている点が素晴らしいですね。
『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』(1968年)に収録されていた楽曲が3曲あるので、聴き比べてみるのも楽しいと思います。
レコーディングにはメンバー3名に加え、Dirceu(ds)、Jorge Ben(vo、g)、Dr. Cesar Baptista(vo)がゲスト参加しています。また、『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』と同じくRogerio Dupratがアレンジを担当しています。
ぜひ60年代サイケ・ロック好きの方に聴いて欲しい1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Panis Et Circenses」
Gilberto Gil/Caetano Veloso作。『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』にも収録されていたソフト・サイケ・チューンでアルバムは幕を開けます。ストレンジな浮遊感にぎっりきます。
http://www.youtube.com/watch?v=BYibDbcb4yI
「A Minha Menina」
作者のJorge Benもゲスト参加している人気曲。Jorge Ben作品らしい躍動感と本作らしいサイケ・テイストが融合したトロピカル・サイケ・ポップに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=SEpSFOibJho
「O Relogio」
Os Mutantes作。幻想的なムードに包まれた1曲。夢の中で彷徨っているようです。
http://www.youtube.com/watch?v=sPVacwApYBo
「Adeus Maria Fulo」
Sivuca/Humberto Teixeira作。アルバムの中で最もブラジルらしさを感じる仕上がり。このあたりはブラジルならではのロックですね。
http://www.youtube.com/watch?v=SOKlD3TVVGs
「Baby」
Caetano Veloso作。『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』やGalのソロ1st『Gal Costa』ではGal Costaがキュートに歌っていました。それと比較すると、Os Mutantesヴァージョンはサイケ・モード全開の仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=0wvaKHGhGbI&feature=related
「Senhor F」
Os Mutantes作。このあたりは完璧にThe Beatles『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の世界ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=kYXHWWxsN0A
「Bat Macumba」
Gilberto Gil/Caetano Veloso作。『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』でもGilberto Gilが歌っていたクラブ世代に人気のバイーア・グルーヴです。Os Mutantesヴァージョンはファズ・ギターが唸りを上げる強烈なサイケ・ロックに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=eb4NArQ7cvk
「Le Premier Bonheur Du Jour」
Francoise Hardyでお馴染み「朝一番の幸せ」のカヴァー(Jean Gaston Renard/Frank Gerald作)。フレンチ・ポップの名曲がRita Leeのヴォーカルによる怪しげなサイケ・モードのポップ・チューンに生まれ変わっています。
http://www.youtube.com/watch?v=qvUXQB2aXlw
「Trem Fantasma」
Caetano Veloso/Os Mutantes作。邦題「幽霊列車」。個人的にはアルバムで一番好きな1曲。Os Mutantesならではのサイケ・ポップに仕上がっていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=qETJGc_6S-I
「Tempo No Tempo (Once Was A Time I Thought)」
The Mamas & The Papas「Once Was A Time I Thought」のカヴァー(John Philips作)。英語ヴァージョンに聴き慣れていると、ポルトガル語で歌われていること自体にストレンジな印象を受けるかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=uGEgkbgr20k
The Mamas & The Papas「Once Was A Time I Thought」
http://www.youtube.com/watch?v=xneFpj8c-n0
「Ave Gengis Khan」
Rita Lee/Arnaldo Baptista/Sergio Dias作。ラストはメンバーのペンによるオリジナルで締め括ってくれます。ガレージ調サイケとオリエンタルなサウンド・コラージュによる摩訶不思議な音空間はまさにOs Mutantesワールド!
http://www.youtube.com/watch?v=gyc-lW54V7k
興味がある方は他のOs Mutantes作品やRita Leeのソロ・アルバムもどうぞ!
Caetano Veloso/Gilberto Gil/Tom Ze/Nara Leao/Gal Costa/Os Mutantes『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』(1968年)
『Mutantes』(1969年)
『A Divina Comedia Ou Ando Meio Desligado』(1970年)
『Jardim Eletrico』(1971年)
『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets 』(1972年)
Rita Lee『Build Up』(1970年)
Rita Lee『Hoje E o Primeiro Dia do Resto da Sua Vida』(1972年)