発表年:1988年
ez的ジャンル:ブロンクス系コンシャスHip-Hop
気分は... :たまには硬派なHip-Hopも・・・
今回はKRS-One率いるHip-HopグループBoogie Down Productionsの2ndアルバム『By All Means Necessary』(1988年)です。
Boogie Down Productions(BDP)は、KRS-One、D-Nice、DJ Scott La Rockの3人によりサウス・ブロンクスで結成。1987年に1stアルバム『Criminal Minded』をリリースします。当時彼らはMarley Marl、MC Shan、Roxanne Shanteらクイーンズ出身のHip-HopクルーJuice Crewと激しいバトルを繰り広げており、『Criminal Minded』には、それを象徴する「South Bronx」、「The Bridge Is Over」といった曲が収録されています。
しかしながら、1987年にDJ Scott La Rockがブロンクスでの乱闘騒ぎを止めに入ったところを銃撃されて死亡してしまいます。グループ存続の危機に追い込まれたKRS-Oneでしたが、それを乗り越えて2ndアルバム『By All Means Necessary』(1988年)をリリース。暴力禁止や教育の重要性を訴えるようになります。
その後、『Ghetto Music』(1989年)、『Edutainment』(1990年)、『Live Hardcore Worldwide』(1991年)、『Sex and Violence』(1992年)といったアルバムをリリースし、グループは解散。KRS-Oneはその後もソロで活躍しています。
僕の中でKRS-Oneは、Public EnemyのChuck Dと並ぶ社会派Hip-Hopのリーダーというイメージが強かったですね。しかしながら、De La Soul、Jungle Brothers、A Tribe Called QuestといったNative Tongues一派好きだったので、それ程熱心にBDPを聴いてわけではありませんでした。
それでも1st『Criminal Minded』、2nd『By All Means Necessary』はHip-Hop史を語る上で外せない2枚だと思います。共に有名なHip-Hop雑誌『The Source』でマイク5本(最高評価)を獲得した作品です。80年代、90年代のHip-Hop作品の中でマイク5本を獲得した作品は40枚にも満たないはずなので、いかにBDPの最初の2枚が強烈であったか想像できると思います。
僕の記憶が正しければ、『The Source』誌でデビュー作と2ndが連続でマイク5本を獲得したのはBDPとA Tribe Called Questの2組しかいないのではと思います。
※後年、マイク5本に訂正された作品は除く
今日紹介する2nd『By All Means Necessary』は前述のように、Scott La Rockの死を乗り越えて制作された作品であり、BDPが社会派ユニットへ大きく舵を切った作品です。
ファンはご存知の通り、ジャケのポーズはMalcolm Xの有名な写真を模したものです。
「My Philosophy」、「Stop the Violence」、「I'm Still #1」、「Jimmy」といったクラシックを中心にリアルHip-Hopを堪能しましょう。
全曲紹介しときやす。
「My Philosophy」
クラシックその1。これぞBDP!シングル曲にもなりました。Stanley Turrentine「Sister Sanctified」ネタのトラックにのって、KRS-Oneの哲学を叩きつけます!Hip-Hopのストレートな格好良さが伝わってきますね!また、N.W.A.「Gangsta Gangsta」、Black Moon「How Many MC's...」、Beastie Boys「The Sounds of Science」、Canibus「M-Sea-Creasy」、Slaughterhouse「Wack Mc's」でサンプリングされていることからも本曲のクラシックぶりがわかると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=DOaHLsNPM88
N.W.A.「Gangsta Gangsta」
http://www.youtube.com/watch?v=KHaOul8gVVc
「Ya Slippin'」
Deep Purple「Smoke on the Water」を大胆にサンプリング。個人的には少し気恥ずかしくなるトラックですが(笑)
「Stop the Violence」
クラシックその2。シンプルながらも推進力のあるトラックをバックにKRS-Oneが暴力禁止を訴えます!そのBDPは本曲のタイトルの通り、Stop the Violenceというの名の運動を展開し、米国の大学をツアーすることになります。本曲はBlack Star「Definition」、Fugees「Stop The Violence」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=OngLP0CnyUs
「Illegal Business」
BDPらしさの1つであるラガ・テイストの仕上がり。Fat Albert and the Cosby Kids「Creativity」、Jefferson Starship「Rock Music」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=aE5DwGkuu6k
「Nervous」
スペイシー感のあるヒップ・ハウス調のトラックがこの時期らしいですね。Rhythm Heritage「Sky's the Limit」、War「Galaxy」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=TuOBkmYaS1c
「I'm Still #1」
クラシックその3。All The People「Cramp Your Style」ネタのトラックが文句なしに格好良いシングル曲。余計なものが削ぎ落とされるのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=5N9t3aNPvt0
「Part Time Suckers」
Stevie Wonder「Part-Time Lover」をパロったタイトル、リリックと、Smokey Robinson & the Miracles「Mickey's Monkey」ネタのビートが印象的です。このパターンで2Pacも「Part Time Mutha」という曲をリリースしていましたね。
http://www.youtube.com/watch?v=LKsTbvb8trM
「Jimmy」
クラシックその4。Sequence「Funk You Up」ネタのトラックに、Paul McCartney & Wings「Let 'Em In」の替え歌フロウがのっかる思わずニヤリとしてしまう1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=12mbmoEJ2dg
「T'Cha-T'Cha」
ラガ色の強い仕上がり。昔ラガ調の曲って苦手だったのですが、久々に聴くとパンチが効いていていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=ha5F3A9njtk
「Necessary」
ラストは淡々とKRS-Oneのメッセージが語られます。
http://www.youtube.com/watch?v=nnW8oGkDeqo&feature=fvst
他のBDP作品もどうぞ!
個人的にはラスト作『Sex and Violence』あたりも結構好きです。
『Criminal Minded』(1987年)
『Ghetto Music』(1989年)
『Edutainment』(1990年)
『Live Hardcore Worldwide』(1991年)
『Sex and Violence』(1992年)