発表年:1969年
ez的ジャンル:"ニュー・ソウルの父"系ソウルフル・ジャズ
気分は... :流れゆくままに...
今回はLes McCann『Much Les』(1969年)です。
Les McCannは1935年ケンタッキー州レキシントン生まれのジャズ/ソウル・ピアニスト&ヴォーカリスト。
1960年代初めから勢力的にレコーディングを行い、Atlanticへ移籍した1960年代後半からはソウル色を強め、Eugene Mcdaniels作の「Compared to What」をヒットさせ、Roberta Flackを見出すなどニュー・ソウルの誕生に大きく貢献しました。
ジャズとソウルを股に掛けた彼の音楽は現在でもサンプリングソースやクラブシーンで人気です。
ジャズ・ピアニストでありながら"ニュー・ソウルの父"と呼ばれるあたりに、彼の音楽性を窺うことができますね。
そう言えば、昨年リリースされたJohn Legend & The Rootsによるニュー・ソウル・カヴァー集『Wake Up!』でも「Compared to What」がカヴァーされていましたね。
60年代から数多くのアルバムを残しているMcCannですが、人気があるのは60年代後半から70年代半ばあたりの作品だと思います。具体的には、『Bucket of Grease』(1967年)、Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(1969年)、『Much Les』(1969年)、『Comment』(1970年)、Les McCann & Eddie Harris『Second Movement』(1971年)、『Invitation To Openness』(1971年)、『Talk To The People』(1972年)、『Live At Montreux』(1973年)、『Another Beginning』(1974年)、『Layers』(1974年)、『Hustle To Survive』(1975年)といったところでしょうか。
今日紹介する『Much Les』(1969年)は、Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(1969年)、『Comment』(1970年)あたりと並び、ニューソウルへと向かっていく時期の作品です。
Les McCann(p)、Leroy Vinnegar(b)、Donald Dean(ds)という基本メンバーに、曲によってWillie Bobo (timbales)、Victor Pantoja(conga)およびストリングスが加わり、レコーディングが行われました。
全体的にはソウルフルなジャズ作品という印象であり、70年代作品のように思い切りソウルしている訳ではありません。ヴォーカル曲も1曲のみです。それでもソウルフルなジャズを存分に堪能できる充実の1枚だと思います。特にストリングスを配した演奏がかなりグッときます。
「Benjamin」、「Roberta」はサンプリングソースにも使われています。
全曲紹介しときやす。
「Doin' That Thing」
オープニングはLeroy Vinnegar作。McCann、Vinnegar、Deanのピアノ・トリオに、Willie Bobo、Victor Pantojaのパーカッション、さらにストリングスが加わっています。軽快でリズム感のある演奏に雄大なストリングスが見事に融合した素晴らしい演奏です。
「With These Hands」
Abner Silver/Benny Davis作のスタンダードをMcCannのヴォーカル入りでカヴァー。スタンダードらしいロマンティックなバラードに仕上がっています。本作唯一のヴォーカル曲ですが、McCannのヴォーカルは例のソウルフルなダミ声ではなく、かなりスマートです(笑)
「Burnin' Coal」
Les McCann作。ハンドクラップが始まるゴキゲンなファンキー・チューン。ソウル・ジャズ好きの人には間違いない演奏です。
「Benjamin」
Les McCann作。哀愁モードのピアノ・ジャズ。ストリングスが哀愁ムードを高めてくれます。Mobb Deep「Right Back At You」、Ak Skills「East Ta West」のサンプリングソースにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=iEdct1Ah4pA
Mobb Deep「Right Back At You」
http://www.youtube.com/watch?v=GjyZi2jYa8k
「Love For Sale」
Cole Porterの名曲カヴァー。当ブログではJorge Dalto、Gene Harris、Dexter Gordon、Anita O'Dayのカヴァーを紹介済みです。本ヴァージョンでは、かなりノリの良い軽快な演奏を聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=yWmr73V6Yw4
「Roberta」
Les McCann作。ひたすら美しい演奏に感動する1曲。きちんと調べた訳ではありませんが、タイトルはRoberta Flackに因んだものだと思います。クレジットにも"Sweet Inspiration:Roberta Flack"と表記してあります。本曲はAfu-Ra「Whirlwind Thru Cities」、E Bros「Funky Piano」、I-Power「Play Da Back 96」のサンプリング・ネタになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=pU35VakerlY
Afu-Ra「Whirlwind Thru Cities」
http://www.youtube.com/watch?v=7tNNhQMQv5w
E Bros「Funky Piano」
http://www.youtube.com/watch?v=QaOzNtiTLwM
I-Power「Play Da Back 96」
http://www.youtube.com/watch?v=YMxyNzgVN7E
興味がある方は他のLes McCann作品もチェックしてみて下さい。
『Bucket O' Grease』(1967年)
Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(1969年)
『Comment』(1970年)
Les McCann & Eddie Harris『Second Movement』(1971年)
『Invitation To Openness』(1971年)
『Talk To The People』(1972年)
『Another Beginning』(1974年)
『Layers』(1974年)
『Hustle To Survive』(1975年)