録音年:1964年
ez的ジャンル:ザ・ボサノヴァ
気分は... :遅かったのなら許しておくれ
今回はジャズ・サックス奏者Paul Winterがブラジル人シンガー・ソングライターCarlos Lyraとレコーディングしたボサノヴァ作品『The Sound Of Ipanema』(1964年)です。
ミュージシャンの名前もジャケも"冬のボッサ・アルバム"という感じですよね(笑)
Paul Winterは1939年アメリカ、ペンシルベニア州生まれのアルト・サックス奏者。
大学時代にPaul Winter Sextetとして、インターカレッジ・ジャズ・フェスティバルで優勝したのを機にコロムビアと契約。その後、アメリカ合衆国国務省派遣の文化使節としてラテン・アメリカで大規模なツアーを回ります。ここでブラジル音楽の魅力に取り付かれたWinterは『Jazz Meets the Bossa Nova』(1962年)、『The Sound Of Ipanema』(1964年)、『Rio』(1964年)という3枚のボサノヴァ・アルバムを残しています。
60年代後半からはPaul Winter Consortを率い、ヒーリング・ミュージック路線のアルバムを数多く発表しています。
もう一人の主役Carlos Lyraについては、以前に『Sarava』(1970年)を紹介済みです。彼のプロフィールは、そちらの記事をご参照下さい。
Paul Winterについては、昔から名前はよく聞くけど、アルバムはあまり聴いたことがないアーティストでした。やはり、ヒーリング・ミュージックの印象が強いですね。
その意味では、『Jazz Meets the Bossa Nova』(1962年)、『The Sound Of Ipanema』(1964年)、『Rio』(1964年)というボサノヴァ三部作は、僕のイメージするPaul Winterとは異なるアルバムかもしれません。
1962年のブラジル公演で刺激を受けたWinterは、まずは自らのセクステットで『Jazz Meets the Bossa Nova』(1962年)をレコーディングします。そして、1964年にリオを訪れてレコーディングしたのが本作『The Sound Of Ipanema』です。さらにLuiz Bonfa、Roberto Menescal、Luiz Ecaらと共演した『Rio』をレコーディングしました。
今日紹介する『The Sound Of Ipanema』(1964年)は、ボサノヴァの発展に貢献したミュージシャンの一人Carlos Lyraとの共演作です。全曲Lyra作品で占められ、しかもLyra自身のヴォーカルで聴くことができるという点で、Paul Winterには申し訳ありませんが、Carlos Lyraのアルバムという印象が強いですね。
レコーディングには、Paul Winter(as)、Carlos Lyra(g、vo)、Sergio Mendes(p)、Sebastiao Neto(b)、Milton Banana(ds)というメンバーが参加しています。
Sergio Mendes(p)、Sebastiao Neto(b)、Milton Banana(ds)という名うてのミュージシャン3名の素晴らしいバッキングも聴きものです。
ボサノヴァという音楽の魅力がぎっしり凝縮された1枚だと思います。
その意味では、ボサノヴァ入門アルバムとして最適な1枚なのでは?
『Getz/Gilberto』なんかよりも、はるかにボサノヴァを堪能できるはずです。。
全曲紹介しときやす。
「Voce E Eu (You And I)」
このロマンティックなオープニングが僕の一番のお気に入り。Sergio Mendesのピアノの響きとCarlos Lyraの優しい歌声のマッチングがサイコーです!
http://www.youtube.com/watch?v=jMW6HmQUfpk
「Se E Tarde Me Perdoa (Forgive Me If I'm Late)」
Paul Winterのサックスに先導され、Carlos Lyraが寂しげなヴォーカルで魅了します。ポルトガル語の語感の響きが実にいい感じです。
「Maria Ninguem (Maria Nobody)」
Joao Gilbertoもレコーディングした名曲。僕の場合、どうしても♪マリア人間♪という日本語感覚で聴いてしまうのですが(笑)
「De Quem Ama (For Whom Love)」
Paul Winterのソフトなサックスがボッサ・リズムと実にマッチしています。Carlos Lyraの繊細なヴォーカルもサイコー!
「Quem Quiser Encontrar O Amor (Whoever Wants To Find Love)」
映画『Couro de Gato』(1961年)のためにCarlos Lyraが書いた楽曲。哀愁モードの歌詞&メロディが印象的です。Winterのサックスも哀愁モードを盛り上げます。
「Aruanda」
以前にWanda Sa(Wanda De Sah)やAstrud Gilbertoのカヴァーを紹介している楽曲です。女性ヴォーカル・ヴァージョンで聴き慣れているため、作者Lyraによる男性ヴォーカル・ヴァージョンが新鮮に聴こえます。
「Coisa Mais Linda (The Most Beautiful Thing)」
ロマンティックな歌詞とメロディに魅了される名曲です。Lyraの甘ぁ〜いヴォーカルにもウットリです。
「O Morro (The Hill)」
映画『Gimba, Presidente dos Valentes』(1963年)挿入歌。哀愁モードのWinterのサックスにグッときます。
「Mas Tambem Quem Mandou (What Made Me Do It)」
当ブログではWanda Sa(Wanda De Sah)のカヴァーを紹介している楽曲。ロマンティックな雰囲気がサイコーです!一体何が僕を変えてしまったのか?
「Tem Do De Mim (Don't Make Me Love)」
エレガントな雰囲気の中にも男の哀愁が漂います。
「Lobo Bobo (The Big Bad Wolf)」
ラストは小気味良いテンポの「赤ずきんちゃん」ソングで締め括ってくれます。
『Jazz Meets the Bossa Nova』(1962年)、『Rio』(1964年)の2枚もセットでどうぞ!
『Jazz Meets the Bossa Nova』(1962年)
『Rio』(1964年)
ご興味のある方は、他のPaul Winter作品もチェックを!
『Icarus』(1972年)
『Common Ground』(1978年)
Paul Winter with Paul Halley『Whales Alive』(1987年)
Paul Winter with Oscar Castro-Neves『Brazilian Days』(1998年)