発表年:1980年
ez的ジャンル:2トーン系スカ調ミクスチャー・サウンド
気分は... :もうウンザリだ!
今日は最近の僕の音楽嗜好から少し外れた変化球の作品が聴きたい気分です。
思い切りForeignerあたりの産業ロックにしようとも思ったのですが(3rd『Head Games』までのForeignerは結構好きだったりします)、多分当ブログの読者層の方々からどん引きされそうなので止めました(笑)
代わりにセレクトしたのは、The Specialsの2ndにしてラスト・アルバム『More Specials』(1980年)です。
これまで当ブログで紹介したThe Specials関連作品は以下の3枚。
The Specials『Specials』(1979年)
Fun Boy Three『Waiting』(1983年)
Special AKA『In The Studio』(1984年)
2Toneレーベルを立ち上げ、パンク直後のイギリスに一大スカ・ブームを巻き起こしたThe Specialsでしたが、方向性の違いなどからメンバー間の関係に亀裂が生じ、1981年にUKチャートNo.1となったラスト・シングル「Ghost Town」を置き土産にグループは解散してしまいます。
2ndアルバムと同時にラスト・アルバムとなった本作『More Specials』を聴けば、こうしたグループの状況を何となく想像することができます。
『Specials』(1979年)にあったスカ/パンクのテイストはかなり後退し、スカを基調に、レゲエ/ダブ、ロック、ソウル、ファンク、ラテン、エスニック、ラウンジ、映画音楽等のエッセンスを取り入れた独自の音世界が構築されています。一方で、後のFun Boy Threeに通じる変テコなポップ感覚も同居するあたりがSpecialsらしいのかもしれません。
おそらくサウンド面のイニシアティブを握っていたのがJerry Dammersであり、Terry Hallらはその方向に不満だったのでしょうね。
レコーディングには、Jerry Dammers(org)、Terry Hall(vo)、Neville Staple(vo)、Lynval Golding(g)、Roddy Radiation(Roddy Byers)(g)、Sir Horace Gentleman(b)、John Bradbury(ds)といったメンバー以外に、伝説のジャマイカ人トロンボーン奏者Rico Rodriguez、The BodysnatchersやThe Swinging Catsといった2Toneレーベル所属アーティスト、Specialsと並ぶスカ・ブームの立役者Madnessのメンバー、さらには後に大ブレイクするガールズ・ロックバンドThe Go-Go'sのメンバーも参加しています。
今回、久々に聴き返して「このアルバムって、こんなに面白かったっけ?」という新発見や再認識がたくさんありました。
スカ/パンクを期待して聴くと拍子抜けするアルバムかもしれません。むしろ、本作の持つミクスチャー感覚やエスニック/ラウンジ・ムードはサバービア系がお好きな人あたりが聴くと楽しめると思います。僕の新発見や再認識もそうした聴き方をしたからかもしれません。
その意味で先入観なしに聴くと、より楽しめる1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Enjoy Yourself (It's Later Than You Think) 」
決して明るい内容ばかりではないアルバムのオープニングに、多くの歌手がカヴァーしているスタンダード曲(Herb Magidson/Carl Sigman)を配するあたりが興味深いですね。スカにニューリンズと汎カリブ的なエッセンスが加わったエンジョイ・モードの仕上がりです。
「Man At C & A」
Jerry Dammers/Terry Hall作。核戦争の脅威へ警鐘を鳴らした曲。重くダビーなレゲエ・サウンドは、Tricky「Nothing's Clear」の元ネタにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=Ul_Ahhuto98
「Hey, Little Rich Girl」
邦題「悲しきディスコ・レイディ」。Roddy Radiation作。オールディーズ・テイストのポップな仕上がりですが、お金持ちの令嬢の転落人生を歌った悲しい歌詞です・・・。MadnessのKix Thompsonがサックスで盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=0wmDDi_rSFA
「Do Nothing」
アルバムからの2ndシングルとして、UKシングル・チャート第4位となったヒット曲(Lynval Golding作)。藤原ヒロシ選曲のコンピ『Hiroshi's Kick Back (Private Mix)Vol.1 』収録曲としてご存知の方もいるのでは?労働者階級の人生の悲哀を歌ったルーツ・レゲエ調の仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=x-fEr0kv-E4
「Pearl's Cafe」
Jerry Dammers作。当時Bodysnatchersのメンバーであり、後にSpecial AKAに参加する女性ヴォーカリストRhoda Dakarがバック・コーラスで参加しています。タイトル通りカフェ・ミュージックとして聴くと、こういうのも変化球としてなかなか面白いのではと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=WEx_ByPS9xQ
「Sock It To 'Em J.B.」
Rex Garvin & The Mighty Craversによる1966年のファンク・チューンをカヴァー(Clayton Dunn作)。JBということで、SpecialsのJBであるJohn Bradburyがプロデュースしているのが面白いですね。2トーン調ファンク・サウンドがかなり格好良いです。The Swinging CatsのPaul Heskattがサックスで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=0LFHFeJ0XaI
「Rex Garvin & The Mighty Cravers「Sock It To 'Em J.B.」
http://www.youtube.com/watch?v=nISSAZ-E62o
「Stereotypes/Stereotypes Pt. 2」
Jerry Dammers/Neville Staple作。「Stereotypes」はアルバムからの1stシングルとしてUKシングル・チャート第6位のヒットとなりました。リズムボックスとマカロニ・ウエスタン風の哀愁サウンドのミックスが今聴くとかなり面白いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=KQ4lvUJ39fE
「Holiday Fortnight」
邦題「2週間の休養」。Roddy Radiation作。メキシコ+カリブといった雰囲気のサウンドが印象的なインスト・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=c6FVeqlPQCY
「I Can't Stand It」
邦題「もうウンザリだ!」。Terry HallとRhoda Dakarのデュエット曲(Jerry Dammers作)。今聴くと一番面白いかも?ニューウェイヴ的なリズムボックスに、スウィンギング・ロンドン風のグルーヴィーなオルガンやエキゾチック・サウンドが絡み、そこにTerry HallとRhoda Dakarによるポップな歌声がのっかる摩訶不思議な魅力も持った1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=t6Id5k_fCDw
「International Jet Set」
スカ+ニューウェイヴ+エキゾチック・サウンドといった雰囲気の独特の音世界が展開されます。「I Can't Stand It」同様に摩訶不思議な魅力があります。
http://www.youtube.com/watch?v=FvJpbGhZbXI
「Enjoy Yourself (Reprise) 」
ラストはNHK"みんなのうた"のようなのどかな合唱でアルバムは幕を閉じます。多分、一緒に合唱しているのはThe Go-Go'sだと思います。
The Specials関連の過去記事もご参照下さい。
The Specials『Specials』(1979年)
Fun Boy Three『Waiting』(1983年)
Special AKA『In The Studio』(1984年)