録音年:1954年
ez的ジャンル:ハードバップ誕生の瞬間
気分は... :レディース&ジェントルマン!
どんな世界でもそうだが、人を育てるという作業は実に大変なものだ。
褒めるor叱る?教えるor気付かせる?強制するor放任する?
育てる側はいろいろ頭を悩ませますよね!
私見だが、人を育てるのが下手な人は“なぜ、できないのか?”を相手に問い詰めがちである。逆に人を育てるのが上手い人は“どうすればできるのか”を一緒に考えてあげる(決して教えるのではない)。両者の本質的な違いわかりますか?
ジャズ界の人材育成名人と言えば、僕はArt Blakey(1919-1990年)の名が真っ先に思い浮かぶ。Blakeyが率いたThe Jazz Messengersは、新人ジャズ・ミュージシャンの登竜門、育成の場として、ジャズ界に多大な貢献をしてきたように思える。
例えば、Jazz Messengers出身のトランペッターだけを考えても、Cliford Brown、Donald Byrd、Lee Morgan、Freddie Hubbard、Chuck Mangione 、Woody Show、Wynton Marsalis、Terence Blanchardといった豪華な名前が並ぶ。
Art Blakeyという人は、優れたミュージシャンであると同時に、グループ・リーダーとして若手ミュージシャンの才能を引き出す力に秀でていた人であり、特に晩年は若手ジャズ・ミュージシャンの成長を温かく見守る学校の校長先生ってカンジでしたよね。
実はArt Blakeyに関しては、そんなに聴いているわけではなく、CDも数えるほどしか持っていない。でも、本作『A Night at Birdland, Vol.1』(1954年)と『Moanin'』(1958年)の2枚は実に印象深い。
『Moanin'』が ファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こした人気盤であるとすれば、NYのライブハウス「バードランド」でのライブ録音『A Night at Birdland, Vol.1』はハードバップ誕生の瞬間を伝えてくれる歴史的なライブである。
僕も詳しいわけではないが、『A Night at Birdland, Vol.1』こそがハード・バップの演奏が収めれた最初のレコードらしいっす。とにかく、ライブの臨場感たっぷりにハードでホットな演奏を聴かせてくれマス。
メンバーは、Art Blakey(ds)、Cliford Brown(tp)、Lou Donaldson(as)、Horace Silver(p)、Curly Russel(b)の5人。この時点ではJazz Messengersは結成されておらず、Art Blakey Quintet名義の作品デス。
演奏がいいのは勿論のこと、司会のPee Wee MarquetteのMCがとってもイイ感じでライブの雰囲気を盛り上げてくれる。演奏ではPee Wee Marquetteが“トランペット・センセーション”と紹介しているブラウニーこと天才Cliford Brownに注目ってところでしょうか。
なおこのライブは本作の続編としてVol.2もあります。
全曲紹介しときやす。
「Spilt Kick」
Pee WeeのMCに続き、このオープニングの最初の音が鳴った瞬間が実にゾクゾクするね。実にリズミックで軽快なナンバー。
エモーショナルなDonaldsonのサックス、センセーショナルなブラウニーのトランペット、小躍りしそうなSilverのピアノ、ファンキーに炸裂するBlakeyのドラムとこの1曲だけでもワクワク気分ですな。
「Once in a While」
アルバムのハイライトとも呼べる、ブラウニーの独壇場といったロマンチックなバラード。まさに情感たっぷりに歌うトランペットにウットリっす。途中のワルツ調のSilverのピアノも実にオシャレだね!
「Quicksilver」
タイトルから察しがつくようにSilverの作品。まさにクイックなSilverのピアノを堪能できマス。Donaldsonとブラウニーも疾走感を煽ってくれます。
「A Night in Tunisia」
Dizzy Gillespieの名曲。Gillespieがこの曲を作っていた時、Blakeyはその現場に居合わせていたらしく、その関係でこの曲への思い入れが強いとBlakey自身が語り、演奏が開始されマス。その思い入れ通りBlakeyの熱いドラミングがイイ感じですな!
「Mayreh」
これもSilverの作品。「Quicksilver」同様にこの曲もスピード感が魅力っす。やっぱりブラウニーのトランペットがカッチョいいっす。
「Wee-Dot」
「Blues」
この2曲はCD化に際に追加されたボーナス・トラック2曲。「Wee-Dot」は、Vol.2のオープニング・ナンバーの別テイク。「Blues」はその名の通り、ブルージーなバラード。
本作の翌年にJazz Messengersが結成され、以後1990年にBlakeyが亡くなるまでの約35年間ジャズ界最高のリーダーシップを発揮し続けることになる。「Art Blakeyに学ぶ部下の個性の育み方」なんて本があったら読んでみたいよね!
のでVol.2も買ってしまいました。
昔ブレイキー嫌いでしたが、今は
ブレイキー平気です。
ありがとうございます。
Art Blakeyはプレイヤーとしての腕前と同時にバンド・リーダーとして優れた人という印象が強いです。