
発表年:1970年
ez的ジャンル:UKアシッド・フォーク
気分は... :それほど暗くありません!
今回はカルト的な人気を誇るイギリス人シンガーソングライターNick Drakeの2ndアルバム『Bryter Layter』(1970年)です。
Nick Drake(1948-1974年)はビルマ(現ミャンマー)で生まれ、幼少時にイギリスへ戻ってきました。ケンブリッジ大学フィッツウィリアム・カレッジ在学中にFairport ConventionのAshley Hutchingsに見出され、1969年に1stアルバム『Five Leaves Left』でデビュー。その後、音楽に専念するためケンブリッジ大学を退学し、ロンドンに移住します。
そして、1970年に2ndアルバム『Bryter Layter』をリリースしますが、評論家から高い評価を得たもののセールス的には振るわず、失意のまま地元ウォリックシャー州へ引き返すことになります。
その後うつ病に苦しみながらも、1972年に3rdアルバム『Pink Moon』をリリースします。しかし、1974年11月25日、自宅で抗うつ薬の過剰服用のため死去。享年26歳でした。
1980年代以降、彼の評価は高まり、多くのミュージシャンや音楽ファンからカルト的人気を得ています。
彼が生前に残した『Five Leaves Left』、『Bryter Layter』、『Pink Moon』という3枚のアルバムは、今聴いても独特の魅力に惹かれます。
その中でも僕の感覚に最もフィットするのが本作『Bryter Layter』です。Nick Drake本人がそれを望んでいたのかは別として、サウンドがカラフルで幅広い音楽性を楽しめる作品です。『Pink Moon』が好きな人は、そのカラフルなサウンドが余計なのかもしれませんが・・・
前作『Five Leaves Left』に続きJoe Boydがプロデュース、John Woodがエンジニア、Robert Kirbyがホーン&ストリングス・アレンジを担当しています。
レコーディングには、Fairport ConventionのDave Pegg(b)、Dave Mattacks(ds)、Richard Thompson(g)、ManassasのPaul Harris(p)、The Velvet UndergroundのJohn Cale(viola、harpsichord、celesta、p、org)、その他にChris McGregor(p)、Ray Warleigh(as、fl)、Lyn Dobson(fl)、Mike Kowalski(ds)、P. P. Arnold(back vo)、Doris Troy(back vo)等が参加しています。
何となく、「Nick Drake=暗い」みたいなイメージの方もいるかもしれませんが、サウンド・センスの良さを堪能できる小粋なアルバムだと思います。
「At the Chime of a City Clock」、「Hazey Jane I」、「Poor Boy」、「Northern Sky」等名曲がズラリと並びます。
ジャケの暗さに惑わされないで下さい!
全曲紹介しときやす。
「Introduction」
美しいイントロダクション。Robert Kirbyのストリングス・アレンジが冴え渡ります。
http://www.youtube.com/watch?v=AFAqPn0jgEc
「Hazey Jane II」
Dave Pegg(b)、Dave Mattacks(ds)、Richard Thompson(g)というFairport Convention勢が活躍するDrakeらしからぬ軽快な1曲。ホーン隊も盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=qSZ9oX0rLgg
「At the Chime of a City Clock」
Drakeらしい憂いを帯びたピュア・ワールドを堪能できる1曲。名曲だと思います。Ray Warleighのジャジーなサックスもいい感じ。High Llamasもカヴァーしていましたね。
http://www.youtube.com/watch?v=Y4Va1xJUjC0
High Llamas「At the Chime of a City Clock」
http://www.youtube.com/watch?v=BZgH_0IL5Jc
「One of These Things First」
DrakeのギターとPaul Harrisのピアノによる美しい調べと淡々としたDrakeのヴォーカルがマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=QSlh8u8Nrig
「Hazey Jane I」
「Hazey Jane」のパートI。軽快なパートIIに対して、こちらは美しくメロディアスな展開です。個人的にはパートIの儚い美しさに惹かれます。
http://www.youtube.com/watch?v=ze5Bktb2jiQ
「Bryter Layter」
Lyn Dobsonの幻想的なフルートに先導されるタイトル曲。夢の中でのピクニックといった雰囲気がいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=KPCGSrPvkYw
「Fly」
John Caleのヴィオラとハープシコードが印象的です。「Bryter Layter」からの流れが実にいいですね。この美しさは本作ならでの魅力です。
http://www.youtube.com/watch?v=_ShXHW_FrlM
「Poor Boy」
個人的には本作のハイライト。80年代ネオ・アコあたりと一緒に聴いても全く違和感がありません。P. P. Arnold、Doris Troyらのソウルフルなバック・コーラスとRay Warleighのジャジーなサックスもサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=KzFN-ngn7WQ
「Northern Sky」
この曲も名曲ですね。木漏れ日のような柔らかく包み込んでくれる1曲。聴いているだけで心が澄み切ってきます。本曲にもJohn Caleが参加しています。The Dream Academyの1985年の大ヒット曲「Life in a Northern Town」は本曲からインスパイアされたものでした。
http://www.youtube.com/watch?v=vtyLL_BE-oo
The Dream Academy「Life in a Northern Town」
http://www.youtube.com/watch?v=TzTNUMiMIsU
「Sunday」
ラストはRay Warleighのフルートが少し悲しげに響くインストで幕を閉じます。
http://www.youtube.com/watch?v=dma_9fVeh8Y
デビュー・アルバム『Five Leaves Left』(1969年)、3rd『Pink Moon』(1972年)もセットでどうぞ!
『Five Leaves Left』(1969年)

『Pink Moon』(1972年)
