発表年:1975年
ez的ジャンル:天使の歌声系女性ソウル
気分は... :楽園は何処に・・・
今回は5オクターブの声域を持つ「天使の歌声」で人々を魅了したMinnie Ripertonが1975年にリリースしたアルバム『Adventures In Paradise(邦題:ミニーの楽園)』です。
Minnie Riperton(1947-1979年)はシカゴ生まれの女性ソウル・シンガー。
1961年にコーラス・グループThe Gemsへ加入し、1963年から1966年の間に7枚のシングルをリリースしています。The Gemsを脱退したMinnieは、1966年にAndrea Davisの名でソロ・デビューしますが不発に終わります。
その後、サイケデリック・ソウル・グループRotary Connectionにリード・ヴォーカルとして加入し、6枚のアルバムのレコーディングに参加しました。Rotary Connectionには、Sidney Barnes、Phil Upchurch等が参加し、Charles Stepneyがプロデュース&アレンジを手掛けていました。また、Rotary Connection時代にプロデューサーのRichard Rudolphと結婚しました。
Rotary Connection解散後、ソロ活動を再開し、Charles StepneyプロデュースでMinnie Riperton名義での1stアルバム『Come to My Garden』をレコーディングします。
1971年、シカゴからフロリダへ移住したMinnieに大きな転機が訪れます。Stevie Wonderとの出会いです。Rotary Connectionの作品を通じてMinnieのファンであったStevieは、彼女をバック・コーラス・グループWonderloveのメンバーに迎えます。
1973年にEpicとソロ契約を結ぶことに成功したMinnieは、1974年にStevieも楽曲提供&演奏&プロデュースで参加したアルバム『Perfect Angel』をリリースします。同アルバムからシングル・カットされた「Lovin' You」が全米チャートNo.1の大ヒットとなり、一躍Minnie Ripertonは注目の女性シンガーとなりました。
しかし、Minnieに不運が襲います。1976年に入り、悪性の腫瘍が胸部に発見され、Minnieは病魔と闘いながらのアーティスト活動を余儀なくされます。その間にアルバム『Adventures in Paradise』(1975年)、『Stay in Love』(1977年)をリリースしました。しかし、『Stay in Love』を最後にEpicとの契約を解消しました。
手術で一度は病魔を追い払ったかに思えましたが、1978年に癌の転移が発見されます。Minnieに残された時間は僅かでした。
1979年4月には移籍第一弾アルバム『Minnie』をリリースしますが、7月12日に永眠します(享年31歳)。前日にStevie Wonderが見舞いに訪れたばかりでした。
1980年に最後のオリジナル・アルバム『Love Lives Forever』がリリースされています。
どうしても「Lovin' You」のイメージが強い人ですが、それに囚われすぎると本当のMinnie Ripertonの姿が見えてこないかもしれませんね。僕の中でそんな思いが強いせいか、『Perfect Angel』をCD棚から手にする機会は意外に少ないです。
その代わりCD棚から手にする機会が多いMinnie Riperton作品が、今日紹介する『Adventures in Paradise』(1975年)です。
プロデュースはMinnie Riperton自身と夫Richard Rudolph、そしてCrusaders作品等を手掛けたStewart Levineの3人が務めています。
レコーディングにはJoe Sample、Larry Carlton(g)、Dean Parks(g)、Ed Brown(b)、Jim Gordon(ds、per)、Jim Horn(sax)、Tom Scot(sax)、Dorothy Ashby(harp)等が参加しています。Larry Carltonはアレンジとコンダクターも務めています。
Stewart Levineをプロデューサーに起用し、Joe Sample、Larry CarltonといったCrusadersメンバーが参加していることからもわかるように、本作ではフュージョン・テイストのソウルを志向しています。きっと、Minnieの天使の歌声とメロウなフュージョン・サウンドの組み合わせが僕の嗜好にマッチしているのだと思います。
ソングライティングにはMinnie Riperton/Richard Rudolphの夫婦作が基本ですが、3曲でLeon Wareが、1曲でJoe Sampleが作者にクレジットされています。特にLeon Wareが関与した3曲は要チェックです!
「Lovin' You」のようなヒット曲はありませんが、「Inside My Love」をはじめ、素敵なメロウ・チューンが揃っています。また、「Inside My Love」、「Baby, This Love I Have」等サンプリング・ソースの定番曲も多数収録されています。
フュージョン・サウンドをバックにした天使の歌声を満喫しましょう!
全曲紹介しときやす。
「Baby, This Love I Have」
Minnie Riperton/Leon Ware/Richard Rudolph作。Leon Ware関与の1曲目。Minnieの天使の歌声と、Leon Wareらしいメロウネスと、フュージョン・テイストのサウンドがマッチしたメロウ・ソウルに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=glteDQ_oCpQ
本曲はサンプリング・ソースとしてもお馴染みですね。A Tribe Called Quest「Check The Rhime」、Black Star「K. O. S. (Determination) 」、Common「I Want You」 という当ブログで紹介済みの曲をはじめ、Pete Rock「Play Dis Only At Night」、Soul For Real「Candy Rain」、Xzibit「Rimz & Tires」、
Alfonzo Hunter「Blacka Da Berry」等のサンプリング・ソースになっています。
A Tribe Called Quest「Check The Rhime」
http://www.youtube.com/watch?v=6thhevsenOE
Black Star「K. O. S. (Determination) 」
http://www.youtube.com/watch?v=-SA7sD4A25c
Common「I Want You」
http://www.youtube.com/watch?v=QRfTS8bd05o
Pete Rock「Play Dis Only At Night」
http://www.youtube.com/watch?v=739sGJ7w3MI
Soul For Real「Candy Rain」
http://www.youtube.com/watch?v=Cx0xzO73Amo
「Feelin' That Your Feelin's Right」
Minnie Riperton/Leon Ware/Richard Rudolph作。Leon Ware関与の2曲目。ソウル・ファン以上にフュージョン・ファンがグッときそうなロマンティック・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=G57ovfzZy-4
「When It Comes Down to It」
Minnie Riperton/Richard Rudolph作。ファンキー・テイストの仕上がり。ここでのMinnieは雰囲気たっぷりにソウルフルなテイストで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=6wMPEetKP4U
「Minnie's Lament」
Minnie Riperton/Richard Rudolph作。ミステリアスな雰囲気の中で憂いを帯びたMinnieのヴォーカルが切なく響きます・・・。Xzibit「Eyes May Shine」のサンプリング・ソースにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=0Og9UZUQy-U
「Love and Its Glory」
Minnie Riperton/Ed Brown/Richard Rudolph作。Dorothy Ashbyのハープが印象的です。楽園モードのリラックス感がいい感じ。
http://www.youtube.com/watch?v=sss95IO_8us
「Adventures in Paradise」
Minnie Riperton/Joe Sample/Richard Rudolph作。タイトル曲はJoe Sampleが曲作り参加しています。ファンキーな味わいがグッド!シングルにもなりました。Eminem「Any Man」、Rasco「Back on the scene」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=ViYcOsdL8ao
「Inside My Love」
Minnie Riperton/Leon Ware/Richard Rudolph作。Leon Ware関与の3曲目。本作のハイライト曲と呼べる憂いを帯びたメロウ・チューン。アルバムからの1stシングルにもなりました。Leon Ware自身のヴァージョン「Inside Your Love」は、当ブログで紹介した『Inside Is Love』(1979年)に収録されています。個人的にはLeon Wareヴァージョンよりも、Minnieヴァージョンの方が好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=ZiGKumYBLLE
本曲はサンプリング・ソースとしても定番ですね。A Tribe Called Quest「Lyrics to Go」、Kenny Dope「Get On Down」、Intelligent Hoodlum「Street Life」、2Pac「Me Against The World」、Sounds of Blackness「Everything is Gonna Be Alright」 、Busta Rhymes「You Can't Hold The Torch」、J88 (Slum Village)「The Look of Love」Lightheaded「Suprise Cypher 2」をはじめ数多くの楽曲のサンプリング・ソースになっています。
A Tribe Called Quest「Lyrics to Go」
http://www.youtube.com/watch?v=onGtPe4XCtU
Kenny Dope「Get On Down」
http://www.youtube.com/watch?v=GWE5v3mwg_s
Lightheaded「Suprise Cypher 2」
http://www.youtube.com/watch?v=gkdFi1LJuf0
「Alone in Brewster Bay」
Minnie Riperton/Richard Rudolph作。実はアルバムで一番好きな曲。アコースティック・ギターの音色とストリングスがMinnieの歌声が一体化して切なく美しい音世界へと誘ってくれます。一人で物思いに耽りたい時にはピッタリです!
http://www.youtube.com/watch?v=pOUOBSYwbUI
The Pharcyde「Feeling Freaky」、Buddha Brand「ブッダの休日」のサンプリング・ソースにもなっています。
The Pharcyde「Feeling Freaky」
http://www.youtube.com/watch?v=_aW_wtLpMFQ
Buddha Brand「ブッダの休日」
http://www.youtube.com/watch?v=F-Dy2wgrDME
「Simple Things」
Minnie Riperton/Richard Rudolph作。アルバムからの2ndシングル。この曲も僕のお気に入り。Minnieのキュートな魅力が詰まったメロウ・チューン。Linda Lewisあたりと一緒に聴きたくなる1曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=9T42s_DR_4Y
「Don't Let Anyone Bring You Down」
Minnie Riperton/Richard Rudolph作。ラストは感動的なバラードで締め括ってくれます。Minnieらしい高音ヴォーカルも堪能できます。
Minnie Ripertonの他作品もどうぞ!
『Come to My Garden』(1970年)
『Perfect Angel』(1974年)
『Stay in Love』(1977年) ※ジャケは『Minnie』との2in1CD
『Minnie』(1979年)
『Love Lives Forever』(1980年)
ところで私は『Perfect Angel』がデビュー作と信じきっていた(シャケ写のせいで)ので、昨年『Come to My Garden』を聴いたときはぶっ飛びましたですよ。
ありがとうございます。
本作はMinnieの歌声とメロウ・サウンドの組み合わせがいいですよね。
『Come to My Garden』は後年になった再評価が高まった1枚ですね。