発表年:2011年
ez的ジャンル:マエストロ系クラブジャズ
気分は... :愛が欲しい!
今回はクラブジャズのマエストロNicola Conteの最新作『Love & Revolution』です。いやぁ、期待を裏切らない充実の内容です。さすがマエストロ!
イタリアを代表するクラブジャズ・プロデューサー/アーティストNicola Conteの紹介は、『Rituals』(2008年)、『Other Directions』(2004年)に続き3回目となります。
『Rituals』(2008年)以来、約2年半ぶりとなる新作です。タイトルの通り、"愛と変革"がアルバムのテーマになっています。ジャケにも60年代テイストのラブ&ピース感が漂っています。
レコーディングにはNicola Conte(g)以下、High FiveのFabrizio Bosso(tp)、LTCのPietro Lussu(p)をはじめ、フィンランドの人気グループThe Five Corners QuintetのメンバーTeppo Makynen(ds)、Timo Lassy(bs、fl)、"Chet Bakerの再来"ととして人気のドイツ人トランペット奏者Till Bronner、"The Five Corners Quintetに対するスウェーデンからの回答"と呼ばれるThe Quiet Nights OrchestraのメンバーPeter Fredriksson(tb)、Smell Trioのメンバー Paolo Benedettini(b)といったメンバーが名を連ねます。
それ以外にもMichael Pinto(vibe)、Logan Richardson(as)、Magnum Lindgren(ts、fl)、Tim Warfield(ts)、Gaetano Partipilo(as、fl)、Nicolas Folmer(tp)、Flavio Boltro(tp)、Pierpaolo Bisogno(congas、per)、Andrea Santoro(electronics)、Moufadhel Adhoum(luth)、Bert Cornelis(sitar)が参加しています。
特にスウェーデン人サックス奏者Magnum Lindgrenはアレンジも担当しており、本作への貢献は大です。
ヴォーカル陣も多彩です。Jose James、Alice Ricciardiという前作からのメンバーに加え、Harcsa Veronika、Nailah Porter、Melanie Charles、Gregory Porter、Ghalia Benali、Bridgette Amofahが新たに参加しています。ハンガリー人女性ヴォーカリストHarcsa Veronika(クレジットにはVeronika Harcsaと表記)については、昨年彼女が参加しているTrip Hop/Nu-JazzユニットBin-Jipのアルバムを当ブログで紹介しています。
こうした多彩なヴォーカル陣からも想像できるように、前作『Rituals』同様、全17曲(ボーナス・トラック含む)のち、14曲がヴォーカル入りという歌モノ重視の内容になっています。
あとはカヴァー曲が多いのが目立ちますね。新たな歌詞をつけたリメイク曲も含めて、全17曲中9曲がカヴァー曲です。
そんなカヴァー曲も含めて、ソウル。テイストの演奏やスピリチュアルでブラックジャズ的な演奏が目立ちます。アルバム・タイトルも含めて、音楽と社会の関わりや、音楽が秘めたパワーといったものを意識した作品に仕上がっていると思います。
どうしても「Nicola Conte=オシャレな音楽」という印象が強いですが、もっと内面的なものに迫るスピリチュアルなNicola Conteワールドに出会える1枚になっています。
マエストロが示した愛と変革のクラブジャズを満喫しましょう!
全曲紹介しときやす。
「Do You Feel Like I Feel」
Nicola Conte作。Gregory Porterのヴォーカルをフィーチャー。ソウルフルかつスウィンギーな雰囲気が大人のクラブジャズといった感じでグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=UGIo-_G62w4
「Love From The Sun」
Roy Ayers、Norman Connors feat. Dee Dee Bridgewaterのヴァージョンでお馴染みの曲をカヴァー(Carl Clay/Wayne Garfield作)。ここではJose JamesとNailah Porterのヴォーカルをフィーチャーし、クラブジャズらしい疾走感とNicola Conte作品らしい小粋なセンスを堪能できるグッド・カヴァーに仕上がっています。
「Here」
ブラジリアン・ヴォーカル好きにはお馴染み、奇跡の男女デュオDave Mackay & Vicky Hamiltonをカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Dave Mackay & Vicky Hamilton』(1969年)に収録されています。オリジナルの美しくロマンティックなボッサ・バラードも大好きですが、ここではJose Jamesのヴォーカルをフィーチャーし、落ち着きのあるエレガントなジャジー・チューンに仕上げています。Till Bronnerのトランペット・ソロもキマっています。
「Black Spirits」
Nicola Conte作。Nailah Porterのヴォーカルをフィーチャー。Gilles Petersonのイチオシの新進女性シンガーNailah Porterの地を這うようなヴォーカルとマッチした、スピリチュアルなブラック・ジャズ・チューンに仕上がっています。本作のアフロ・ジャズ/スピリチュアル・ジャズのテイストがよく反映された演奏だと思います。
「Mystery of You」
Nicola Conte作。Melanie Charlesのヴォーカルをフィーチャー。Nicola Conteに"Sarah Vaughanをイメージさせる"と形容させたMelanieのヴォーカルを満喫できるミディアム・スロウのバラードです。気だるい哀愁ムードがいい感じ!
「Shiva」
Nicola Conte作。Melanie Charlesのヴォーカルをフィーチャー。ノスタルジックかつミステリアスな雰囲気に惹かれてしまいます。迷宮をさまよっている気分になります?
「Ghana」
Jackie McLean作「Appointment In Ghana」にNicola Conteが新たな歌詞を加えたもの。Gregory Porterのヴォーカルをフィーチャーし、いかにもアフロ・ジャズなタイトルですが、ここではクラブジャズらしいクールな演奏で酔わせてくれます。Pietro Lussu(p)とFabrizio Bosso(tp)が伊達男の国らしい小粋なソロを披露すると、それに負けじとTeppo Makynenが超格好よいドラム・ソロで応酬します。
「Quiet Dawn」
当ブログでも紹介したArchie Shepp『Attica Blues』のヴァージョンでお馴染みのCal Massey作品をカヴァー。ここではMelanie Charlesのヴォーカルをフィーチャーし、エレガントかつ妖艶な「Quiet Dawn」を聴かせてくれます。
「Scarborough Fair」
お馴染みSimon & Garfunkelの名曲をカヴァー。Alice Ricciardiのヴォーカルをフィーチャー。正直S&Gのオリジナルは苦手なのですが、ここではBert Cornelisのシタールも入ったサイケでミステリアスなワルツ調カヴァーに仕上がっています。Alice Ricciardiのクールなヴォーカルもグッド!前作にも参加していたイタリア人女性シンガーAlice Ricciardiはソロ・アルバムも本作で紹介しようと思っていたところです。
「Love and Revolution」
Nicola Conte作。Melanie Charlesのヴォーカルをフィーチャー。タイトル曲はパンチの効いたMelanie Charlesのソウルフル・ヴォーカルにグッときます。確信犯的ノスタルジック・ムードが心憎いですな。Magnus Lindgrenの涼しげなフルートもグッド!
「Bantu」
Nicola Conte/Andrea Santoro作。ここで初めてのインスト曲。Andrea Santoroがプログラミングで参加したハウス・チューンです。この曲のみアルバムの中で浮いていますが、個人的にはこの手の曲があと1、2曲あってもいい位です。
「All Praises to Allah」
Bubbha Thomas率いるLightmen Plus Oneのヴァージョンでお馴染み、Ed Rose作のスピリチュアル・ジャズ・チューンをカヴァー。Nailah Porterのヴォーカルをフィーチャーし、なかなか緊張感のあるブラック・ジャズ・チューンに仕上がっています。Magnus Lindgren、Logan Richardson、Timo Lassy、Nicolas Folmer、Gaetano Partipilo、Peter Fredrikssonのホーン隊が素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。
「Ra in Egypt」
エジプトの民謡をモチーフにした楽曲。妖しげなエスニック・ムードの漂うインスト・チューン。
「Temple of Far East」
Mal Waldronの名曲「Quiet Temple(All Alone)」をベースに、Nicola Conteが新たな歌詞を加えたものです。Jose Jamesのヴォーカルをフィーチャーした哀愁バラードに仕上がっています。
「I'm The Air」
Nicola Conte作。Veronika Harcsaのヴォーカルをフィーチャー。Veronika Harcsaのキュートなヴォーカルが引き立つ感動的なバラードに仕上がっています。
ここからは国内盤のボーナス・トラック2曲です。
「Freedom Day」
Max Roach『We Insist!』(1960年)の演奏でお馴染みのMax Roach/Oscar Brown Jr.作品をカヴァー。ここではNailah Porterのヴォーカルをフィーチャーしています。 個人的にはアルバムで一番でお気に入り曲です。Nailah Porterのブルージー・ヴォーカルと呼応したスリリングな演奏にグッときます。Tim Warfield、Fabrizio Bossoも快調なソロを聴かせてくれます。
「The Black Apostoles」
Horace Tapscott作。ホーン隊のエキサイティングな演奏を満喫できるインストでアルバムは幕を閉じます。
全17曲はコメントするのが大変です(笑)
未聴の方はNicola Conteの他作品もチェックを!
『Jet Sounds』(2000年)
『Bossa Per Due』(2001年)
『Jet Sounds Revisited』(2001年)
『Other Directions』(2004年)
『Rituals』(2008年)