発表年:1999年
ez的ジャンル:デトロイト・テクノ系フューチャー・ジャズ/ブラック・ミュージック
気分は... :レブロン復調なるか?
今回はCarl CraigのユニットInnerzone Orchestraによる唯一のアルバム『Programmed』(1999年)です。デトロイト・テクノの新たな可能性を示した歴史的名盤として評価が高い1枚ですね。
Innerzone Orchestraはデトロイト・テクノを牽引するCarl Craigが、Francisco Mora(ds)、Craig Taborn(p)というジャズ・ミュージシャンと結成したユニットです。
Innerzone Orchestraの中心人物であるCarl Craigは1969年デトロイト生まれ。10代の時にデトロイト・テクノのオリジネーターDerrick Mayに見出され、頭角を現すようになります。その後はデトロイト・テクノ第二世代のリーダーとしてシーンを牽引し続けています。また、自身のレーベルPlanet E Communicationsを運営し、数多くの作品をシーンへ送り込んでいます。当ブログで紹介した作品で言えば、Moodymann『Silentintroduction』(1997年)もPlanet Eからのリリースです。
Moodymann『Silentintroduction』の記事でも書きましたが、デトロイト・テクノには決して明るくありません。Derrick May、Juan Atkins、Kevin Saundersonといったデトロイト・テクノのオリジネーターはスルー状態で、第二世代で言えば、Underground Resistance『Revolution For Change』(1992年)や今日紹介するInnerzone Orchestra『Programmed』(1999年)を持っているくらいです。
今日紹介するInnerzone Orchestra『Programmed』は、"デトロイト・テクノ"というよりも"フューチャー・ジャズ"や"ブラック・ミュージック"という言葉が相応しい1枚です。
The Stylistics、Warのカヴァーや70年代ブラック・ムーヴィーからインスパイアされた楽曲、70年代ジャズ・ファンクの影響を受けた楽曲、Hip-Hopテイストな楽曲などもあり、ハウス/テクノ、ジャズ、Hip-Hop、ソウルなど様々なブラック・ミュージックのエッセンスが1枚に凝縮されています。その意味では、アルバム全体にメリハリがあって全14曲を飽きることなく楽しめると思います。
また、『Programmed』というタイトルですが、プログラミング・サウンドと生演奏による即興的なサウンドを巧みに融合させているのも本作の特徴です。
多分、Nu Jazz/クロスオーヴァー系のサウンドが好きな人は聴くと一番ハマる作品という気がします。
久々に1枚通して聴きましたが、改めて歴史的名盤という評価に納得してしまいました。
全曲紹介しときやす。
「Wrong Number」
間違い電話に気付かない男が一方的にメッセージを吹き込むというアルバムのイントロ。
「Manufactured Memories」
トライバルでコズミックなフューチャー・ジャズ・ファンク。♪Miles (Davis),(Art) Blakey,(John) Coltrane・・・♪と偉大なジャズ・ジャイアントの名前が読み上げられます。
「The Beginning Of The End」
デトロイトのラッパーLacksi-Daisy-Calをフィーチャー。ミレニアム感(?)が漂う不穏な雰囲気が印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=LeCu3-2iYIU
「Programmed」
アブストラクトHip-Hopテイストな近未来的サウンドが印象的なタイトル曲。
「Eruption」
近未来のバイクのエンジン音といった雰囲気のサウンドと共にスタートします。全体的にはインプロ感たっぷりのフューチャー・ジャズといった仕上がりです。デトロイト・テクノとジャズの接点を実感できるところが好きです。
「Monsters」
ここではFrancisco MoraではなくGreg Tylerのドラムを大きくフィーチャー。近未来のブラック・ムーヴィー・サントラといった雰囲気がいいですね。
「Blakula」
1972年公開のブラック・ムーヴィー『Blakula』(音楽担当はGene Page)にインスパイアされて作られた曲。元の映画やサントラを知らないので、どのあたりがBlakulaなのか理解できませんが、バイオリンを大きくフィーチャーした美しくも切ないサウンドが印象的です。終盤になって高揚してくるのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=CkJEYslrKq0
「People Make The World Go Round」
The Stylisticsのカヴァー。オリジナルは『The Stylistics』(1971年)に収録されています。ここではPaul Randolphのヴォーカルをフィーチャーし、オリジナルの雰囲気を受け継いだカヴァーに仕上がっています。Alan Barnesのフルートがいいアクセントになっています。Hip-Hopファンは故J Dillaのリミックスでお聴きになった方も多いのでは?
Innerzone Orchestra「People Make The World Go Round (J88 Remix) 」
http://www.youtube.com/watch?v=9s6q49haFfo
「Architecture」
Richie Hawtinがプログラミングで参加。コズミック&スピリチュアルな雰囲気が漂います。
http://www.youtube.com/watch?v=cTjQ_RMBgZc
「Basic Math」
70年代ジャズ・ファンク/クロスオーヴァーからの影響を感じる1曲。本曲を聴いてデトロイト・テクノをイメージする人はいないでしょう。Craig Tabornのフェンダー・ローズの音色が妖しく響きます。
http://www.youtube.com/watch?v=l-w2G4C7Hpo
「Timing」
クロスオーヴァー感が心地好い1曲。当時の僕がイメージしていたフューチャー・ジャズって、こんな感じでした。
「Galaxy」
Warのカヴァー。Warのオリジナルは『Galaxy』(1977年)に収録されています。オリジナルはスペイシーなファンキー・チューンでしたが、ここではパーカッシヴ&コズミックなハウス・チューンとして聴かせてくれます。Craig Tabornの美しくも儚いピアノにグッときます。
「At Les」
1993年リリースの名曲をリメイク。Craig Tabornのピアノの美しい響きを生かしたスピリチュアルな仕上がりが感動的です。
「Bug In The Bass Bin」
ラストはデトロイト・テクノ経由のフューチャー・ジャズ感がよく出ています。Francisco Moraのドラミングが冴え渡ります。
http://www.youtube.com/watch?v=C6dhbpI3Gl8
僕が所有する国内盤CDにはボーナス・トラックとして「Architecture (10" Edit)」が収録されています。
「マイアミ・ヒート対ダラス・マーベリックス」のNBAファイルは両者2勝2敗の五分であり、今日の第5戦の勝者が大きなアドバンテージを得ることになりますね。接戦の連続で見応えのあるファイナルになっていますが、個人的にはヒートが取りこぼしている印象が強いですね。特にレブロンの調子が今一つなのが心配ですね。残り3戦での復調を期待しましょう!