発表年:2011年
ez的ジャンル:アルゼンチン・エクスペリメンタル・ポップ
気分は... :静かなる衝撃!
今回はアルゼンチン・エクスペリメンタル・ポップの歌姫Florencia Ruizの最新作『Luz De La Noche』です。
インパクトという点では、今年の新作の中で最も僕に衝撃を与えた1枚かもしれません。
近年、アルゼンチン音楽シーンへの注目は高まるばかりですね。
お隣のブラジルとは異なる独特の音世界を展開する新作が続々とリリースされており、CDショップでの売場の広がりを見ても勢いを感じます。
ただし、僕の嗜好としてはブラジルものをまず優先してしまうので、なかなかアルゼンチンものまで手が伸ばせないというのが実情です。CDショップで小まめに試聴はしていますが・・・
そんな中、CDショップで試聴し、"何だ!この作品は"という衝撃を受けて購入したのがFlorencia Ruiz『Luz De La Noche』です。
Florencia Ruizは1977年アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれの女性シンガー・ソングライター。
2000年に6曲入りデビュー・ミニ・アルバム『Centro』(2000年)をリリース。その後、『Cuerpo』(2003年)、『Correr』(2005年)、『Mayo』(2007年)といったフル・アルバムをリリースしています。それ以外にもリミックス盤『Fogon』(2006年)、Ariel Minimalとの共演盤『Ese Impulso Superiorshortcut』(2008年)といったアルバムもリリースしています。
アルゼンチン・エクスペリメンタル・ポップの歌姫として、日本でも注目が高く、2008年と今年5月にもプロモーションで来日しています。
さて、最新作となる『Luz De La Noche』はアルゼンチン・メキシコ・アメリカ・日本の共同制作であり、2年以上の歳月をかけて制作されたのだとか。
そんな気合いの入った作品だけあって、レコーディングには多彩なミュージシャンが参加しています。まず、Florencia自身が参加を熱望したのが、ブラジル人チェロ奏者Jaques Morelenbaumとウルグアイ人キーボード奏者Hugo Fattorusoの2人。
2人共、当ブログでも度々登場しているミュージシャンです。Jaques Morelenbaumの名は、Dadi、Celso Fonseca等の記事で彼の名前が見られます。ウルグアイのフュージョン・グループOPAのメンバーとしても知られているHugo Fattorusoの名は、Flora Purim、Airto Moreira、Toninho Hortaの記事で登場します。
それ以外にもJuan Quintero(g、vo)、会田桃子(violin)、Pablo Agri(violin)、Mono Hurtado(contrabass)、Juampi di Leone(fl)、Marcos Cabezaz(per)、Facundo Guevara(per)等のミュージシャンが参加しています。
Juan Quinteroは、当ブログでも紹介したAndres Beeuwsaertらと共に、アルゼンチン・ネオ・フォルクローレ・シーンの重要グループAca Seca Trioのメンバーとしても活動しています。
また、日本人、会田桃子さんは日本のタンゴ・ヴァイオリン最高峰なのだそうです。勉強不足で全く知りませんでした。
プロデュース&アレンジはCarlos Villavicencio。
まず惹かれるのがFlorenciaの透明感のある歌声です。Bjorkを初めて聴いた時と同じようなインパクトがありました。そして、ミニマルでエクスペリメンタルで美しいサウンドも素晴らしいの一言です。
また、Florenciaの書く歌詞も、諦めと希望という心の中で交錯する2つの思いが綴られ、さまざまな心情を重ね合わせながら聴くことができます。
数ヶ月前に紹介したTatiana Parra & Andres Beeuwsaert『Aqui』あたりにも共通する、純度の高い音楽という印象を強く受けます。
この静かなる衝撃作は、一人でも多くの人に聴いて欲しいですね。
全曲紹介しときやす。
「Alumbraremos」
邦題「私たちは輝くだろう」。Bjorkを連想させるFlorenciaのピュアな歌声と、雄大な音空間に惹き込まれてしまうオープニング。
http://www.youtube.com/watch?v=AFAX_M9Y6nM
「Estuve Asi」
邦題「私はこんな風だった」。僕が本作の購入を決めた一番のお気に入り曲。これぞアルゼンチン・エクスペリメンタル・ポップといった雰囲気の夢の音世界へ誘ってくれます。素晴らしい!
http://www.youtube.com/watch?v=cIiTR28tfJs
「No Esta」
邦題「そこにはいない」。エレピと弦楽器をバックに揺れ動く心模様を見事に歌い上げます。心が折れそうな時に聴くと、ホッと一息つけそうです。
http://www.youtube.com/watch?v=SRkE9DrPAjQ
「Por Ahi」
邦題「その辺に」。短い曲ですが、Florenciaの歌&ギターが傷ついた心を優しく包み込んでくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=3w9hTjF7SM0
「Hacia El Final」
邦題「終わりに向けて」。パーカッシヴな仕上がりが僕好み。会田桃子さんの美しいヴァイオリンにも魅了されます。
http://www.youtube.com/watch?v=ScJDJamDzbw
「iQue Pena!」
邦題「残念だ!」。1分半にも満たない曲ながらも実に知的な仕上がりに感心してしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=VX9WQQNDSXE
「Todo Dolor」
邦題「すべての痛み」。Florenciaが切望したJaques Morelenbaum、Hugo Fattorusoとの共演曲です。その意味では本作のハイライトの1つと言えるのでは?心の葛藤を歌うFlorenciaを、MorelenbaumのチェロとFattorusoのピアノが美しい音色で励ましてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=JuqPfcQriBg
「Nada De Vos」
邦題「あなたのことなど何も」。アルバムの中では一番ロック的で力強いサウンドを聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=vchrG-Q6NIA
「Invierno」
邦題「冬」。幻想的な雰囲気に包まれていく感じがいいですね!
「Una Condicion」
邦題「条件」。絶望からの呼びかけをロックなバッキングで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=ZkuDRKaRFu0
「Lo Perpetuo」
邦題「永遠なるもの」。命をテーマにした歌ですが、美しい前半と明るく開放的な後半のコントラストが印象的です。実に完成度の高いエクスペリメンタル・ポップに仕上がっていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=D0jZHCUXzLM
「Ninez」
邦題「子供時代」。子供のピュアで無邪気な様子がサウンドから伝わってきます。途中、子供時代の悪夢も登場します。アルゼンチン版「みんなのうた」といった趣です(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=7nauQIBCVzQ
「El Futuro, Flor」
邦題「未来よ、フロール」。ダイナミックなサウンドで未来を歌います。しかし、Florenciaの歌う未来は必ずも明るいものばかりではないようです。
「Luz De La Noche」
邦題「夜の光」。タイトル曲は静寂の夜をそのまま音にしたようです。今夜は全てを忘れて眠りたい・・・
http://www.youtube.com/watch?v=zjviOL3xleg
国内盤にはボーナス・トラックとして「Mio」(邦題「私のもの」)が追加収録されています。
『Cuerpo/Centro』 ※『Centro』と『Cuerpo』の2in1