発表年:1970年
ez的ジャンル:キュート系スウェディッシュ女性シンガー
気分は... :キュート・ヴォーカル七変化!
今回はスウェーデンの女性シンガーDoris(Doris Svensson)が1970年にリリースしたアルバム『Did You Give The World Some Love Today, Baby』です。
Doris Svenssonは1947年スウェーデン、ヨーテボリ生まれの女性ポップ・シンガー。1960年代前半からシンガーとして活動していたようです。詳しく調べていませんが、おそらく本国スウェーデン以外では殆ど知られていない存在だったのでは?
しかしながら、90年代に本作にも収録されている「You Never Come Closer」がヨーロッパのクラブシーンで注目され、日本でもフリーソウルのコンピで本作収録の「Beatmaker」が取り上げられました。こうした再評価の高まりにより、1996年に『Did You Give The World Some Love Today, Baby』のCD化が実現しました。
僕自身もフリーソウルのコンピ経由でDorisの存在を知り、本作を購入しました。しばらくはDorisというユニットだと勘違いしていましたが・・・
さて、『Did You Give The World Some Love Today, Baby』の内容ですが、アブストラクトな「You Never Come Closer」、グルーヴィーな「Beatmaker」という人気曲のイメージでアルバムを聴くと、ジャズ、ポップス、ロック、ソウル、トラディショナル等を取り入れた幅広い音楽性に驚かされます。
サイケ、グルーヴィー、グッドタイム・ミュージックなど様々なサウンドに柔軟に対応するDorisのヴォーカルも素晴らしいです。基本はキュートなハスキー・ヴォイスですが、楽曲スタイルに合わせてロリータ、ウィスパー、ソウルフル、スウィンギーなど七変化のヴォーカルを聴かせてくれます。
サウンド面では、ではアレンジを担当し、多くの楽曲を提供し、グルーヴィーなオルガンを聴かせてくれるBerndt Egerbladhの貢献が大きいようです。
CDはボーナス・トラック10曲が追加された全22曲構成です。
全曲(オリジナル12曲)紹介しときやす。
「Did You Give The World Some Love Today,Baby」
Norman L. Martin作。タイトルは正統派ポップスのようで聴き終わる頃にはラブ&ピースな気分になっています。Dorisのハスキー・ヴォーカルは意外にパンチがあります。
http://www.youtube.com/watch?v=NG05ZBxv8uY
「I Wish I Knew」
ジャズ・ピアニストBilly Taylorの作品。有名なのはNina Simoneヴァージョンあたりでしょうか。ここではBerndt Egerbladhのオルガンが冴え渡るグッドタイム・ミュージックな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=O3gl4VjfJLY
「Grey Rain Of Sweden」
Berndt Egerbladh/Pamela Gray作。アルバムの中でも最も美しい仕上がり。ここでのDorisはキュートな歌声で優しく語り掛けてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=PDhkzCfk0Pw
「Waiting At The Station」
Berndt Egerbladh/Francis Cowan作。トラディショナルな香りとグルーヴィー&サイケな格好良さが同居する面白い仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=DWsFj6ZoT64
「Don't」
Berndt Egerbladh作。ファンキーなホーン隊が盛り上げてくれるグルーヴィーなソウル/ジャズ・チューン。Dorisはパンチの効いたヴォーカルにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=wEmCS9wO4Cw
「Daisies」
Berndt Egerbladh/Pamela Gray作。チェンバロやフルートの入ったバロック調サウンドが印象的なポップ・バラード。切ない雰囲気は秋にピッタリです。
http://www.youtube.com/watch?v=JUeEtt4R8W0
「You Never Come Closer」
Berndt Egerbladh/Francis Cowan作。ヨーロッパでDoris再評価のきっかけとなった人気曲。サイケ&ダークなアブストラクト・チューンです。本作の再評価が高まった頃、リアルタイムではトリップ・ホップやBjorkが注目されていた時期であり、本曲のようなサウンドが注目されたのもわかる気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=4KH1WKK7aJo
MadlibがQuasimoto名義でリリースした「Closer」でサンプリングされています。
Quasimoto「Closer」
http://www.youtube.com/watch?v=KDDeNtlNTvg
「Whispering Pine」
The Bandのカヴァー(Richard Manuel/Robbie Robertson作)。なかなか味わい深い仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=OXAoSxFOtvg
「I'm Pushing You Out」
Berndt Egerbladh/Francis Cowan作。スウィンギー・サウンドとDorisのハスキー・ヴォーカルがマッチしています。
「Won't You Take Me To The Theatre」
Berndt Egerbladh/Francis Cowan作。ここでのDorisはブリっ子ロリータ・ヴォイスを貫きます(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=eZRSBbnWjpM
「Beatmaker」
Berndt Egerbladh/Francis Cowan作。海外での人気曲は「You Never Come Closer」ですが、日本では本曲が一番人気でしょうね。フリーソウルのコンピ『Free Soul Vibes』にも収録されています。オルガン、ベース、ドラム全て格好良いヒップなグルーヴィー・ジャズです。
http://www.youtube.com/watch?v=pa3G8rm0Lk8
「Bath」
ラストはHarry Nilsson作品のカヴァー。ジャジー・テイストの小粋なグッドタイム・ミュージックで締め括ってくれます。
CDには60年代のレコーディングの中から「Mama Didn't Lie」、「Benny Law」、「You Made A Fool Of Me」、「Wouldn't That Be Groovy」、「Don't Let It Rain」、 「One Fine Day」、「Flowers In The Morning」、「What A Lovely Day」、「Why Did You Go」、「Go Back To Daddy」 という10曲ものボーナス・トラックが収録されています。
ボーナス・トラックのうち、「Mama Didn't Lie」はCurtis Mayfield作品。Curtisに見出された女性ソウル・シンガーJan Bradleyがヒットさせています。「One Fine Day」はThe Chiffonsのヒットで知られるGerry Goffin/Carole King作品です。
「Mama Didn't Lie」、
http://www.youtube.com/watch?v=iU1AKFaQP68
「One Fine Day」
http://www.youtube.com/watch?v=QdfxbrXrK1k