2011年12月23日

Lee Morgan『Lee Morgan(The Last Sessions)』

天才Morganのラスト・アルバム!☆Lee Morgan『Lee Morgan(The Last Sessions)』
The Last Session
録音年:1971年
ez的ジャンル:天才ジャズ・トランペッター
気分は... :進化する天才Morganをもっと聴きたかった・・・

今回は天才ジャズ・トランペッターLee Morgan(1938-1972年)のラスト・アルバム『Lee Morgan(The Last Sessions)』です。

当ブログでこれまで紹介してきたLee Morgan作品は以下の5枚(録音順)。

 『Lee Morgan Vol.3』(1957年)
 『Candy』(1958年)
 『The Rumproller』(1965年)
 『Cornbread』(1965年)
 『Charisma』(1966年)

今回紹介する『Lee Morgan(The Last Sessions)』は1971年9月にレコーディングされました。そして、5ヶ月後の1972年2月18日、N.Y.のクラブSlugs'出演中に内妻Helen Moreに射殺され、その生涯を閉じます。享年34歳。

結果として、本作『Lee Morgan(The Last Sessions)』がMorganのラスト・オリジナル・アルバムになってしまいました。

レコーディングにはLee Morgan(tp、flh)以下、Grachan Moncur III(tb)、Bobbi Humphrey(fl)、Billy Harper(ts、afl)、Harold Mabern(p、el-p)、Reggie Workman(b、per)、Jymie Merritt(el-b)、Freddie Waits(ds)といったメンバーが参加しています。紅一点の存在で自身のリーダー作をレコーディングする直前のBobbi Humphreyの参加が新鮮です。

本作はエレクトリック・サウンド、スピリチュアル、黒人解放運動、民族音楽といったキーワードで説明できる、従来のスタイルに囚われない進化したニュー・スタイルのLee Morganを聴くことができます。それだけに進化の続きを聴くことができなかったのは残念ですね。

全体的に各プレイヤーのソロというよりも、演奏全体のコントロールに重点が置かれたアルバムです。楽曲についても全て参加メンバーのものであり、Morgan自身のオリジナルは1曲もありません。その意味でMorganは全体を統括する音楽ディレクターといった役割に徹したのかもしれませんね。

各プレイヤーの演奏の良し悪しが云々という聴き方ができず、全体の雰囲気や格好良さに惹かれる"永遠のジャズ初心者"である僕には、こうしたアルバムの方がフィットするのかもしれません。

従来スタイルのLee Morganがお好きな人は戸惑う作品かもしれませんが、先入観なしに聴けば1枚で様々なスタイルを楽しめる70年代初期のジャズの魅力が凝縮された1枚だと思います。

Norman Seeff撮影によるジャケがキマりすぎ!
最後まで抜群の格好良さですね!
天才Morganよ永遠なれ!

全曲紹介しときやす。

「Capra Black」
Billy Harper作。壮大なスケール感と黒人としての覚醒を感じるスピリチュアルな演奏が印象的なオープニング。スピリチュアル・ジャズ好きの人はハマる1曲だと思います。Morganも含めて全体の抑えたトーンの中でアヴァンギャルドな演奏も聴こえてくるのがいいですね。ニューソウルの動きとも連動した黒人としての自我の覚醒を感じます。作者であるHarper自身のリーダー作では『Capra Black』(1973年)で本曲を聴くことができます。
※YouTube音源は2分割されていました。
http://www.youtube.com/watch?v=3kIrYQ5Ic3w ※(Part 1)
http://www.youtube.com/watch?v=XZEKscACnlw ※(Part 2)

「In What Direction Are You Headed?」
Harold Mabern作。作者のMabernがここでは生ピアノではなくエレピを演奏しています。正統派ジャズ・ファンの中にはエレピがお気に召さない方もいるようですが、Pete RockによるBlue Note作品のミックス・アルバム『Diggin´On Blue』でもセレクトされるなど再評価もされています。個人的には70年代らしいクールネスに溢れた演奏が気に入っています。Bobbi Humphreyのフルートが涼しげです。エレクトリック・マイルスあたりと一緒に聴きたくなります。
http://www.youtube.com/watch?v=9M3kXccmsq0

「Angela」
Jymie Merritt作。タイトルは1970年代の黒人解放運動の象徴である女性運動家Angela Davisのことです。彼女は1970年にブラックパンサーとの関係を疑われ逮捕されますが、国際的な救援運動により1972年に無罪となっています。本曲はちょうど彼女の救援運動の真っ只中にレコーディングされたものです。ここでのMorganはフリューゲルホルンを吹いています。この曲でもMabernはエレピを演奏しています。全体的にモーダルな雰囲気で貫かれて格好良いです。
http://www.youtube.com/watch?v=v2A16UUbqvo

「Croquet Ballet」
Billy Harper作。本曲をアルバムのハイライトに推す人も多いのでは?作者Harper、主役のMorgan、期待の新星Humphreyと三様のソロにグッときます。アルバム・ジャケの雰囲気そのままに、オシャレなチョイ悪Morganらしい格好良さを満喫できます。Harper自身のリーダーでは『Black Saint』(1975年)で本曲を聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=oGFex6YNjyA

「Inner Passions Out」
Freddie Waits作。民族音楽全開のスピリチュアル・ジャズです。難解な雰囲気と長尺のせいで敬遠されがちな演奏ですが、エスニック&スピリチュアル好きの僕は結構楽しめます。
※YouTube音源は2分割されていました。
http://www.youtube.com/watch?v=kg8_5xeLwSE ※(Part 1)
http://www.youtube.com/watch?v=ET2rUVxuqcE ※(Part 2)

Lee Morgan作品の過去記事もご参照下さい。

『Lee Morgan Vol.3』(1957年)
リー・モーガン Vol.3

『Candy』(1958年)
Candy

『The Rumproller』(1965年)
ザ・ランプローラー+1

『Cornbread』(1965年)
Cornbread

『Charisma』(1966年)
Charisma
posted by ez at 01:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ホント、それまでの直球勝負!なカッコいいハードバッパーモーガンとは打って変わって、スピリチュアル全開ですよね(ただし未完成な趣きあり)。初めて聴いたときはかなり戸惑いましたが、やはり悲劇がなければこの方向に進んでいたんでしょうね。進化というかどんどんスケールの大きくなるモーガンを見たかった、いや聴きたかったです..。
Posted by kaz at 2011年12月26日 22:56
☆kazさん

ありがとうございます。

戸惑いと驚きが交錯する作品ですね。
ご指摘の通り、この路線のファースト・ステップとなる試行錯誤感もある作品なので、さらにこの路線を成熟させていくMorganが聴きたかったですね。

でも、このような余韻を残したまま散ってしまったのもMorganらしい生き様なのかもしれませんね。
Posted by ez at 2011年12月27日 23:30
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