発表年:1999年
ez的ジャンル:The Ummah系Hip-Hop
気分は... :最強タッグ作品も当時は賛否両論!
今回はA Tribe Called Quest(ATCQ)の中心人物Q-Tipの1stソロ『Amplified』(1999年)です。
これまで当ブログで紹介したATCQおよびQ-Tip作品は以下のとおりです。
『The Renaissance』(2008年)
『Kamaal The Abstract』(2009年)
A Tribe Called Quest『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』(1990年)
A Tribe Called Quest『The Low End Theory』(1991年)
A Tribe Called Quest『Midnight Marauders』(1993年)
A Tribe Called Quest『Beats Rhymes & Life』(1996年)
アルバム『The Love Movement』(1998年)を最後にATCQでの活動にピリオドを打ったQ-Tipが、The Ummahの盟友である故Jay Dee(J Dilla)とタッグを組んで制作した1stソロが『Amplified』です。
昨年秋にLittle Brother、The Foreign Exchangeでお馴染みの男性ラッパー/シンガーPhonteの初ソロ・アルバム『Charity Starts At Home』(2011年)を紹介しましたが、同作のリリースに際してPhonte本人が盟友9th Wonderとの共同作業を、『Amplified』におけるQ-TipとJ Dillaの関係になぞっていました。
このように優れたHip-Hopアーティストの共同作業の代表例として挙げられる本作ですが、当時は後期ATCQのアルバムやJ Dillaの才能が全面的に支持されていた訳ではなく、賛否両論のあったアルバムでした。ATCQファンは初期作品のような感触の音を求めがちだったのかもしれませんね。
当時の僕はJ Dillaの存在の大きさについては正しく認識できていませんでしたが、ATCQ大好き、Q-Tip大好きだったので無条件に本作を受け入れていた気がします。
改めて聴いてみると、シンプルかつ無機質なビートがQ-Tipのフロウを際立たせているのが印象的ですね。そして、Q-TipやJ Dillaがネクスト・レベルのHip-Hopを模索している姿勢を確認できます。
全12曲のうち、2曲のみDJ Scratchがプロデュースしています。
Q-Tipファンは勿論のこと、J Dillaファンも必聴のアルバムです。
久々に聴き直して惚れ直してしまいました。
全曲紹介しときやす。
「Wait Up」
無機質な電子音とファンキーなピアノ・ループが絡むオープニング。シンプルなトラックがQ-Tipのライムを引き立てます。
http://www.youtube.com/watch?v=x4Z-PUOoHAg
「Higher」
淡々としたリズムのループを繰り返し聞いていると、知らぬ間にユルい高揚感が・・・。Roy Haynes「Wonderin'」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=G1ENnGJmql4
「Breathe And Stop」
シングルにもなった人気曲。定番ドラム・ブレイクKool & The Gang 「N.T.」ネタのビートにEmmett Chapman「Gypsy」ネタの上ものが絡み、Urszula Dudziak「By Myself」の声ネタがアクセントをつけるプログレッシヴなトラックが秀逸です。
http://www.youtube.com/watch?v=n8omE8XPeYE
「Moving With U」
本作らしい無機質かつレトロ感のある電子音が支配する音空間をQ-Tipのシンギング・ラップが駆け抜けます。
http://www.youtube.com/watch?v=ziBZfy4yrrM
「Let's Ride」
この曲も人気ですね。Joe Pass「Giant Steps」ネタのギター・ループが心地好い1曲。定番ブレイクThe Vibrettes「The Humpty Dump」やESG「UFO」ネタもサンプリングされています。Q-Tipのフロウも含めて、アルバムで一番ATCQっぽい雰囲気の曲かもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=O459U_VtDK0
「Things U Do」
浮遊するジャジーなグルーヴ感はQ-TipやJay Deeも属していたSoulquarians絡みの諸作とリンクしてきますね。
http://www.youtube.com/watch?v=txr6LNbkPiQ
「All In」
小刻みなスクラッチがいい感じ!The Cannonball Adderley Quintet「Leo: Rosebud」ネタのループが激シブです。Meda Leacockの女性ヴォーカルがアクセントをつけてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=AVNU8p3nsmg
「Go Hard」
Mandre「M3000 (Opus VI)」ネタのスペイシー・サウンドをサンプリング。レトロなゲーム音を思わせる無機質なピコピコ・ビートをバックにQ-Tipのフロウとセクシー女性コーラスが浮遊します。
http://www.youtube.com/watch?v=jN9nf_SB3Nk
「Do It」
DJ Scratchプロデュース1曲目。Kali「La Biguine Des Enfants Du Bon Dieu」をサンプリングしたトラックに、Jessica Riveraの女性ヴォーカルが絡むカリビアン・フレイヴァーな仕上がり。The Ummahコンビのプロデュース作とはかなり趣を異にします。僕の場合、ワールド・ミュージック・ブームの際、Kaliを愛聴していましたが、まさかHip-Hopトラックにサンプリングされるとは意外ですね・・・
http://www.youtube.com/watch?v=ocT_i5zjstU
「Vivrant Thing」
アルバムからのシングル・ヒット。やはり本曲がアルバムで一番キャッチーかつシングル向きですね。Love Unlimited Orchestra「I Wanna Stay」をサンプリングしたトラックが格好良すぎです。PVもいろいろな意味で実にヒップです(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=dl6aECuKsdU
「N.T.」
DJ Scratchプロデュース2曲目。Busta Rhymesをフィーチャー。Mike DiNapoli「Theme From A Night Of Love」をサンプリング。軽やかなジャジー・トラックがQ-Tipのフロウにマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=TQuxPS1yzFs
「End Of Time」
ラストはUSメタル・バンドKornをフィーチャー。異色のコラボですが、どうせならばもっとパンチを効かせても良かった気もします。
http://www.youtube.com/watch?v=4kwg2eGNHBM
さらに「End Of Time」に続き、隠れトラック「Do It, See It, Be It」が収録されています。
本作を経て、Q-Tipは2001年に衝撃作『Kamaal The Abstract』を制作しますが、正規リリースされることなく2009年までお蔵入りすることになってしまいます。
Q-Tip作品やATCQ作品の過去記事をご参照下さい。
『The Renaissance』(2008年)
『Kamaal The Abstract』(2009年)
A Tribe Called Quest『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』(1990年)
A Tribe Called Quest『The Low End Theory』(1991年)
A Tribe Called Quest『Midnight Marauders』(1993年)
A Tribe Called Quest『Beats Rhymes & Life』(1996年)