発表年:1982年
ez的ジャンル:トーキング・ブルース系アコースティック・ロック
気分は... :不条理なのも人生の1ページ..
一昨日たまたまTVで映画『Kalifornia』(1993年)を観た。Brad Pitt、Juliette Lewis、David Duchovny(X Filesのモルダー捜査官)らが出演しているバイオレンス映画だ。
連統殺人を研究している作家ブライアン(David Duchovny)が恋人と憧れの地″カリフォルニア″に向かうが、その旅の同乗者として本物の殺人犯アーリー(Brad Pitt)を乗せて旅立ったがために...といったストーリーの映画だ。原題が『California』ではなく、『Kalifornia』となっているのはKの頭文字にKillerの意味をかけたものだ。
僕がこの作品を初めて観たのは、約10年前にレンタル・ビデオで借りた時だったかなぁ。暗く、狂気に満ちた映画であり、観終わった後にブルーになった記憶がある。しかし、それ以降もTVで『Kalifornia』がやっていると何となく観てしまっている。
昨日も、映画を観ながら、殺人を繰り返す狂気の殺人犯に、理由もなく、突如命を絶たれてしまう人々...それぞれの人生を考えると、やるせない気分になっていた。そんな時、頭の中でふと『Kalifornia』と今日紹介する“Boss”ことBruce Springsteenの『Nebraska』(1982年)がリンクしてきた。
Bruce Springsteen『Nebraska』(1982年)は、以前に紹介した僕が最も好きなBossの作品『The River』(1980年)と最も有名なBossの作品『Born In The USA』(1984年)の間に挟まれた、最も地味なBossの作品かもしれない。
この作品が地味な理由は、1つは、Bossとは切っても切れない間柄のバックバンドE Street Bandが一切関与せず、Boss一人がアコースティック・ギター、ハーモニカのみで録音しているため、シャープでスリリングなロック・サウンドがない点が挙げられる。そしてもう1つは、本作に収められた曲の歌詞に登場する主人公は、すべて不幸な境遇から人生を踏み外し、悲惨な最期を遂げた人々であり、アルバム全体を暗く澱んだ雰囲気が支配している点である。
『The River』のエントリーの時に書いたが、高校生の頃まではかなり熱心なBossファンだった。そんな僕でも、リアルタイムで本作『Nebraska』を聴いた時には、この地味で暗い雰囲気にかなり戸惑いを感じたものだ。なので、当時はBossのLPコレクションの中で、最も聴く頻度の少ないアルバムだったと思う。
それがCD時代になり、BossのLPコレクションをCDで買い直してからは、『Nebraska』をよく聴くようになった。多分、『The River』、『Greetings From Asbury Park Nj』(1973年)の次ぐらいの頻度で聴いていると思う。ちなみに、前にも書いたが『Born In The USA』(1984年)以降の作品はCDで買い直していない。僕にとってのBossはデビュー作『Greetings From Asbury Park Nj』から本作『Nebraska』までなのだと思う。
僕もある程度の年齢になり、人生には不条理なことも多く、すべてが思い通りに進むわけでもないことを痛感している。そんな心境の中で聴く『Nebraska』には、単に悲惨な主人公の物語だけでは片付けられない、深い何かを感じずにはいられない。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Nebraska」
まさに映画『Kalifornia』とリンクするへヴィーな歌詞のタイトル曲。殺人を重ねた無法者が、死刑執行を前に発した“この世には理由なくただ卑劣な行為ってのがあるのさ”という衝撃の言葉で曲は締めくくられる。
「Atlantic City」
アコースティックながらも、Bossのロック魂が伝わってくる曲。ヤバい仕事を引き受け、自らの悲惨な運命を予感しつつも、彼女との幸せな人生に思いをはせる切ない曲。♪すべてのものは死ぬ♪しかし多分死んだものはすべていつか甦る♪と自分に言い聞かせる主人公の姿が深く心に刻まれる。
「Johnny 99」
工場が潰れ、職探しがうまくいかず無法者となり、懲役98年プラス1年となったジョニー・ラルフの物語。自分がこんな状況に追い込まれたら、どうするのだろうか?
「Highway Patrolman」
ハイウェイ・パトロールの警官ジョーとトラブル・メイカーの弟フランキーの物語。トラブル続きのフランキーに対して、家族として背を向けられない兄ジョーの複雑な心情が語られる。
「State Trooper」
Bossらしいカッチョ良さに溢れた1曲。人生にどん詰まった男の悲痛な叫びを歌った1曲。
「Used Cars」
中古車しか購入できない家族の姿を通じて、労働者階級の人々の暮らし、境遇を見事に描かれたBossのストーリー・テラーとしての本領発揮の作品。
「Reason to Believe」
♪辛い1日が終わり、まだ人は信じる理由を見出そうとする♪という歌詞が、ズシリと響く歌。でも、信じる人や信じるものが見出せない人生なんて虚しいよね。僕もきっと人に裏切られても、なお人を信じていたいと思うんだけど...甘いかなぁ???
今日は久々朝までコースで遊んでしまった...オレはまじめオヤGなのにっ!これも人生の不条理???
この地味な作品を何故持っているのか
不思議です。
ありがとうございます。
地味で暗いすが、Springsteen好きには不可欠な1枚だと思います。
酒を飲みながら聴くとサイコーですよ(笑)