2006年10月16日

Miles Davis『In A Silent Way』

記念すべき400回目のエントリーは、Milesの静かなる衝撃作☆Miles Davis『In A Silent Way』
In a Silent Way (Dlx)
発表年:1969年
ez的ジャンル:静寂のエレクトリック・マイルス
気分は... :400回目になりまシタ...

本エントリーで400回目のエントリーとなりマス。
別にこれまでと何ら変わるところはありませんが、次は500回目指して頑張りマス。

200回目のエントリーがStevie Wonder『Songs In The Key Of Life』、300回目がThe Salsoul Orchestra『Sound Of Salsoul〜The Best Of The Salsoul Orchestra』と、区切りのエントリーは特に思い入れの強い作品を紹介してきた。

で、400回目は何にしようと考えた時、悩むことなくこのアルバムが思い浮かんだ。

Miles Davis『In A Silent Way』

マイ・コレクションの中で、最も多くCDを持っているアーティストMiles Davis

ジャズ界の帝王Miles Davisについては、これまでも『On The Corner』(1972年)、『Milestones』(1958年)、『Miles Ahead』(1957年)といった作品を紹介してきました。

そんな僕のMilesコレクションの中で最もお気に入りの作品が、実は本作『In A Silent Way』(1969年)っす。

『In A Silent Way』は、エレクトリック・マイルス時代の最初に実った大きな果実である。フュージョン時代の幕開けを作り、賛否両論を巻き起こしながらも、Milesのキャリア最大の大ヒットとなった『Bitches Brew』(1969年)と並び、ジャズの流れを大きく変えた作品だと思いマス。『Bitches Brew』がエレクトリック・マイルス時代の“動”の問題作だとすれば、本作『In A Silent Way』は“静”の衝撃作というカンジがする。

『Miles In The Sky』(1968年)でHerbie Hancockがエレピをプレイし、エレクトリック楽器を導入したエレクトリック・マイルス時代に突入した。結果として、Herbie Hancock(p)、Wayne Shorter(ts)、Ron Carter(b)、Tony Williams(ds)という第2期クインテットは終焉を迎えた。

そうした中で、新たにChick Corea(el-p)、Dave Holland(b)を迎え録音した『Filles De Kilimanjaro』(1968年)に続き、『In A Silent Way』が発表された。

メンバーは、Miles Davis(tp)、Wayne Shorter(ss)、John McLaughlin(g)、Herbie Hancock(el-p)、Chick Corea(el-p)、Joe Zawinul(el-p、org)、Dave Holland(b)、Tony Williams(ds)。

やはり目立つのは、Herbie Hancock、Chick Corea、Joe Zawinulという今考えると超豪華メンバーによる異色のキーボード・セクションだよね。あとはギターのJohn McLaughlinの加入。このメンバー構成を見ただけでもMilesがやりたかった音楽が推察できるかもしれないね。

いわゆるエレクトリック・マイルス時代というのは、単にエレクトリック楽器を導入したジャズというだけではない。その本質は、ジャズとファンク、ロックとの融合にあったように思う。当時、Milesがよく聴いていたのは、James Brown、Sly & The Family StoneJimi Hendrixなどであり、SantanaのCarlos Santanaなどとの親交も深めていたそうだ。

人々を熱狂させるJBやSlyのファンク・ビートの登場や、JimiやSantanaのようなロックの枠組みを超えたサウンドを追求するロック・ギタリストたちとの交流が、Milesの音楽魂を大いに刺激し、自ずとジャズとファンク、ロックとの融合へと向わせ、必然的にエレクトリック楽器が導入されたのであろう。また、こうしたジャズとファンク、ロックの融合は、当時ジャズ・リスナーに比べて圧倒的に多かったロック・リスナーたちへのアプローチという意味もあったようだ。

また、こうしたジャズとファンク、ロックの融合アプローチの中で、ロックの世界では当たり前であった、レコーディング後の編集やオーヴァーダビングを駆使するようになったのも、大きな変化かもしれないね。

『In A Silent Way』を聴くと、それまでのJazzとはかなり趣きの異なった作品であることに驚かされる。演奏者主体のジャズではなく、全体の音空間が主体のジャズになっている点だ。このあたりは、演奏技術に明るくない僕のような永遠のジャズ初心者にとっては、むしろ単純にカッチョ良さやノリをカンジやすく、感覚的に受け入れやすいのかもしれない。

AB面各1曲の計2曲のみのアルバムだが、聴くたびに、静寂の中に新たな神秘を発見できるアルバムだと思いマス。

全曲紹介しときヤス。

「Shhh/Peaceful」
僕はこの曲を聴きながら、部屋で何もせずにボーッと過すの大好きだ。Tony Williamsがリズム・マシーンのように刻み続けるループ状のハイアットを聴いているだけで、本作が持つ独特の静寂の音空間に放り出されたカンジがする。そうした中で、Milesのトランペットに、Shorterのソプラノ・サックス、Hancock、Corea、Zawinulによるキーボード・セクション、McLaughlinのギターがモザイクのように絡み合う。

各パートがシンプルな分だけ、ゆっくりとクールにその音空間が表情を変えていく様は実に幻想的で面白いよね。

「In A Silent Way/It's About That Time」
「In a Silent Way」と「It's About That Time」の2曲からなり、「In a Silent Way」で始まり、「It's About That Time」へと移り、再び「In a Silent Way」が登場します。

「In a Silent Way」は神秘的なサウンドが印象的だよね。「Shhh/Peaceful」が夜の静寂とすれば、「In a Silent Way」は朝の静寂ってカンジがするね。大地の目覚めのような音世界だね。

「It's About That Time」は、ジャズ・ファンク、ロックの融合という表現が最もわかりやすいナンバー。ステージでもよく演奏されていたレパートリーでシタ。静かなるグルーヴがだんだん盛り上がり、高揚してくるカンジがサイコーですな。

僕が持っている国内盤のライナーノーツに、僕が人生で最も影響を受けたアーティストJackson Browneが、無人島に持っていきたい5枚のアルバムの1枚に本作を挙げていたと書いてあり、とても嬉しかったなぁ。

悩めるロック・ミュージシャンJackson Browneと突っ走るジャズ・ミュージシャンMiles Davisなんて全然結び付かないのにねぇ。
このあたりがMilesという宇宙のデカさなんだろうね。
posted by ez at 00:18| Comment(7) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このアルバム、他のアルバムと比べても賛否両論(というか酷評が多かった?)だったみたいですね。「こんなのJAZZじゃない!」とか。。。
同じく問題作の「オン・ザ・コーナー」同様、現在では好きなアルバムとして挙げる人が結構いるのがやっぱりマイルスの凄いところなのでしょうか。しかもジャズ畑でなくロックやヒップホップ関連でですもんね。「こんなのJAZZじゃない!」っていう論評にマイルスは「JAZZじゃないもんねー!!」とほくそ笑んでいたのかもしれませんね^^
Posted by スペース・カウボーイ at 2006年10月16日 20:06
60年代末から70年代までの電気のマイルスに関しては、嫌いな作品は全く無いのですが、残念ながら、このアルバムからは今のトコロ「来た〜!!!」を感じた事がないのです。コノ点に関して、間違っているのはワタシの感性だという事は100%確かなので、「来る」まで定期的に聴き続ける所存にご座居マス。
Posted by bugalu at 2006年10月16日 21:59
☆スペース・カウボーイさん

ありがとうございます。

確かに、エレクトリック・マイルス時代以降の作品は、Jazzというよりもブラック・ミュージックってカンジですからね。Jazzしか聴かないリスナーの方からは、なかなか支持を得るのは難しかったのかもしれませんね。さらに『In A Silent Way』なんかはミニマル・ミュージックのような側面すらありますからね。

きっと晩年のHip-Hopへのアプローチあたりも、Hip-Hopサイドから再評価されることはあっても、Jazzサイドから評価されることはあまり期待できないのかなぁと思います。


☆bugaluさん

ありがとうございます。

編集とオーヴァーダビングを駆使したエレクトリック・マイルス時代の作品って、僕のような楽器ができず、Jazz本来の演奏の醍醐味を味わうことができない人間の方がハマりやすいのかもしれませんね。この時代の作品の延々と反復するビートを聴ききながら、徐々に気持ちが高揚してくるカンジが好きなのかもしれません。
Posted by ez at 2006年10月17日 00:54
今年、音楽を聴いている時間の3割は、エレクトリック・マイルスです。特に69年〜70年が好きで、この時期では『Bitches Brew』、『Live-Evil』、『At Fillmore』、『1969 Miles』、『Swedish Devil』等々、愛聴盤を挙げるとキリが無いのですが、どうも、このアルバムだけが、まだ分からんのです。凄さは分かるので、ワタシの生理が『In A Silent Way』への理解力を身につけるまで、しばし精進です。
Posted by bugalu at 2006年10月17日 07:25
☆bugalu

ありがとうございます。

先ほど、bugaluさんのブログのMiles関連のエントリーを拝見しました。
かなりエレクトリック・マイルスがbugaluさん的に来てるんですね!
前回のコメントでは僕が勘違いしてました。申し訳ありませんでしたm(_ _)m
『In A Silent Way』だけは、まだ来てないという意味だったんですね。

確かに、エレクトリック時代の作品の中で『In A Silent Way』は、
独特のムードを持った作品かもしれませんね。
個人的には、静寂の中で、じんわり表情が変化していくカンジが好きですね。

また、bugaluさんのブログをじっくり拝見して、勉強させて頂きます♪
Posted by ez at 2006年10月17日 23:56
いつものトニーらしくないタイコに
新鮮と言うか驚きでした。
名盤と思いますが、発売された当時の
ジャズファンは冷淡でした。
マイルスファンもサイレントでした。
Posted by あばちゃん at 2010年06月13日 21:13
☆あばちゃんさん

ありがとうございます。

ジャズとファンク、ロックとの融合を試みていたこの時期のMilesにとって、保守的なジャズファンに受け入れられるようでは、逆に失敗だったのでは(笑)
Posted by ez at 2010年06月14日 01:46
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