発表年:1983年
ez的ジャンル:屈折系UKポップ/ロック
気分は... :“ゆうこりん”なアルバム(意味不明?)
XTCは『Oranges & Lemons』(1989年)に続き、2回目の登場になりマス。
『Oranges & Lemons』のエントリーにも書いたけど、80年代から90年代前半にかけてPaul Weller(Style Council含む)、XTC、Elvis Costelloの3アーティストは新アルバムが出れば、試聴もせずに購入するお気に入りUKロック・ベスト3だった。
そんな訳で、ひねくれポップ/ロックの代表格XTCの作品は、キホン的にどれもOKなんだけど、今の季節に一番聴きたいアルバムということで、『Mummer』(1983年)をセレクト。
この作品はXTCの作品の中でも、最も地味で売れなかったアルバムの1枚かもしれない。でも、発売当時から、このフォーキーで田園ポップの雰囲気が漂うアルバムをとても気に入っていた。
グループ的には、リーダーのAndy Partridgeが心身症を患い、1982年11月にライブ活動休止を宣言する。そして、レコーディングに専念したXTCが最初に制作に取り掛かった作品が本作『Mummer』である。
しかし、レコーディング途中にドラムのTerry Chambersが脱退しまう。Andy Partridge(g、vo)、Dave Gregory(g)、Colin Moulding(b、vo)の3人となってしまったグループは急遽セッション・ドラマーとしてPeter Phippsを迎え、制作を続けた。
Andy Partridgeの心身症、Terry Chambersの脱退という危機的状況下で奮起したのがColin Mouldingである。これまでもアクの強い毒気のある曲を書くAndyに対して、メロディアスでポップな作品を数多く提供してきたColinだが、『Mummer』ではそんなColinの個性が色濃く反映されている。『Mummer』が他のXTCのアルバムよりもソフトでマイルドな印象を受けるのは、そのためだ。
XTCならではの、ひねくれ具合は少ないけど、秋の夜長に聴くには、このフォーキーでマイルドな味わいは捨てがたいですな!
Colin色の強い“ゆうこりん”なアルバム(意味不明?)を堪能アレ!
オススメ曲を紹介しときやす。
「Beating of Hearts」
英国ポップと中近東のアラビアン・テイストが合体したXTCらしいヒネリの効いたオープニング。『Oranges & Lemons』のオープニング・ナンバー「Garden Of Earthly Delights」 に通じるものがあるね。オリエンタルな幕開けがAndyの嗜好なのだろうか?
「Wonderland」
シングルにもなったColinの名曲。南国の情緒に満ちたのんびりムードの曲という印象が一般的だと思うけど、僕はこの曲を聴くと、いつも秋の夜長の虫たちが奏でるメロディを想像してしまう。
「Love on a Farmboy's Wages」
Andy作の牧歌的なフォーキー・チューン。Andy自身はこのアルバムをあまり気に入っていないようだが、しっかり、こんなステキな曲を提供していマス。
「Deliver Us from the Elements」
Colinによるミステリアスなナンバー。不気味でサイケだけどマイルドなカンジがColinらしいよね。
「Ladybird」
実はアルバムで一番好きなのがAndy作のこの曲。英国らしい曇り空ポップってカンジだよね。XTCに後期Beatlesのような英国ポップの玉手箱を期待する人は気に入る曲だと思いマス。
「In Loving Memory of a Name」
Colinの作品の中ではこの曲が一番のお気に入り。客観的に見れば完成度はダントツの曲かもね?ColinがColin星人パワーを発揮しまくっているストレンジでミラクルな英国ポップらしい1曲。
「Funk Pop a Roll」
アルバムのラストは、これぞAndy Partridge節ってカンジの弾けたポップでロックな1曲。溜まりに溜まったフラストレーションを一気に吐き出しているカンジで好きだなぁ。
また、CD化に際して追加されたボーナス・トラック6曲(全てAndyの作品)も個人的にはお気に入りっす。
次回XTCを紹介する時は、プロデューサーのTodd RundgrenとAndy Partridgeの衝突が生んだ傑作『Skylarking』(1986年)かなぁ?