2012年04月26日

The Roots『Phrenology』

新たなアプローチが目立つ意欲作☆The Roots『Phrenology』
Phrenology
発表年:2002年
ez的ジャンル:ナンバー・ワンHip-Hopバンド
気分は... :今の脳の地図は・・・

今回はナンバー・ワンHip-HopバンドThe Rootsが2002年にリリースした意欲作『Phrenology』です。

これまで当ブログで紹介したThe Roots作品は以下のとおりです。

 『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
 『Things Fall Apart』(1999年)
 『Game Theory』(2006年)
 『Rising Down』(2008年)
 『How I Got Over』(2010年)
 John Legend & The Roots『Wake Up!』(2010年)
 『Undun』(2011年)

近年はJohn Legend & The Roots『Wake Up!』Betty Wright & The Roots『Betty Wright: The Movie』あたりの流れで語られることが多いThe Rootsですが、彼らの本質に触れることができるのはやはり単独名義の作品だと思います。

本作のタイトルにある『Phrenology』とは、「骨相学(こっそうがく)」を意味します。骨相学は、脳は精神活動に対応する複数の器官の集合体であり、その器官・機能の差が頭蓋の大きさ・形状に現れるとするものです。まさに、ジャケに描かれているような脳の地図で各器官が示されます。

それを踏まえると、本作『Phrenology』は当時のグループのスピリッツを強く意識した作品と言えるでしょう。芸術性と社会性と商業性、この3つを同時達成した傑作『Things Fall Apart』(1999年)をリリースした後、グループはどのようにステップ・アップしていくのか、その方向を模索していましたが、その試行錯誤がかたちとなった作品が本作です。

本作にメンバーとしてクレジットされているのは、Tariq "Black Thought" Trotter(vo)、Ahmir "?uestlove "Thompson(ds)、 Leonard "Hub" Hubbard(b)、Kamal Gray(key)、Scratch(human beatbox)、Ben Kenney(g)の6名。

Malik B、Rahzelの名前はなく、Dice Rawはゲスト扱いで参加しています。それに代わり、ギタリストBen Kenneyが参加しています。また、James Poyserや後に正式メンバーとなるFrank "Frankie Knuckles" Walkerも参加しています。さらにScott Storchもプロデュースで参加しています。

本作ではロックへのアプローチを強めるなど、意図的に『Things Fall Apart』からの変化を強調しているのが印象的です。ロック・テイストの曲が目立ちますが、フリー・ジャズやラテン・フレイヴァーを取り入れたり、人力ドラムンベース調のリズムが飛び出したりと、さまざまな実験的アプローチを聴くことができます。

その意味では多少毛色の変わったThe Rootsと言えるかもしれません。

Nelly Furtado、Talib Kweli、Cody ChesnuTT、Musiq Soulchild、Tracey Moore(Jazzyfatnastees)、Jill Scott等がゲスト参加しています。

The RootsというバンドがもはやHip-Hopの枠では収まらなくなってきたことを感じさせる意欲作です。

全曲紹介しときやす。

「Phrentrow」
アルバムのプロローグ。前作『Things Fall Apart』のラストを飾っていたUrsula Ruckerのポエトリーリーディングをオープニングで聴くことができます。

「Rock You」
DJ Scratchプロデュース。本作の方向性を示唆するロックな仕上がり。Black Thoughtの叩きつけるようなラップとそれに呼応する?uestloveのドラムが印象的です。

「!!!!!!!」
ハードコア・パンクなインタールード!とてもThe Roots作品だとは思えないサウンドです。

「Sacrifice」
人気カナダ人女性シンガーNelly Furtadoをフィーチャー。ポルトガル系カナダ人であるNellyを迎えた曲らしく、甘く危険なセクシー・フレイヴァーを上手くThe Rootsサウンドに採り入れています。Kamal Grayプロデュース。

「Rolling With Heat」
Talib Kweliをフィーチャー。元メンバーのDice Rawも参加しています。?uestloveの乾いたブレイクが牽引するラガ調の仕上りですが印象的です。The Grand Wizzardsプロデュース。

「WAOK (AY) Roll Call」
Ursula Ruckerをフィーチャーしたインタールード。

「Thought @ Work」
個人的にはアルバムで一番のお気に入り。Kool G Rap & DJ Polo「Men At Work」にインスパイアされた曲のようです。「Men At Work」と同じくIncredible Bongo Band「Apache」をサンプリングしたトラックにのって、Black Thoughtが快調なフロウで飛ばしてくれます。滅茶苦茶カッチョ良いスリリングな仕上がりです。何故かAlicia Keysの名がゲストでクレジットされています。The Beatles「Hey Bulldog」、Fat Boys「Human Beat Box」ネタ。?uestloveプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=cBHF7XriPFI

「The Seed (2.0)」
アルバムからの2ndシングル。ジャマイカ系R&BシンガーCody ChesnuTTをフィーチャー。Codyのアルバム『The Headphone Masterpiece』(2002年)に収録されたヴァージョンと区別する意味でver2.0となっています。本作らしくギター・サウンドを前面に押し出したロック・サウンドが印象的です。今聴くと、「How I Got Over」あたりのプロトタイプのようにも聴こえます。哀愁モードのCody ChesnuTTのヴォーカルもサウンドによくマッチしています。?uestlove/Cody ChesnuTTプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=ojC0mg2hJCc

「Break You Off」
Musiq Soulchildをフィーチャー。アルバムからの1stシングル。ただし、アルバム・ヴァージョンは7分超の長尺です。Kamal Grayプロデュース。彼がプロデュースした「Sacrifice」と同じく、甘く危険なラテン・フレイヴァーが魅力の1曲。特にアルバム・ヴァージョンの後半はエレガントなチェロに人力ドラムンベース調のドラムが絡む展開が印象的です。Sting「Shape of my Heart」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=K_NvtAxmDEM

「Water」
10分超の大作。「the first movement」、「the abyss」、「the drowning」という三部構成になっています。The Flying Lizards「Her Story」ネタのリズムが印象的です。フリー・ジャズ系ギタリストのJames Blood Ulmerが参加しています。僕が洋楽を聴き始めた頃は革新的ギタリストとして、かなり注目の存在だった人です。そんなせいもあってかフリー・ジャズ系生音Hip-Hopといった雰囲気に仕上がっています。Tahir Jamal/Kelo Saunders/The Grand Wizzardsプロデュース。

「Quills」
全体的にはダークな仕上がりですが、JazzyfatnasteesのTracey Mooreが歌うSwing Out Sister「Breakout」のフレーズがいいアクセントになっています。Karreem Riggins/The Grand Wizzardsプロデュース。

「Pussy Galore」
JazzyfatnasteesのTracey Mooreのヴォーカルをフィーチャーした哀愁セクシー・チューン。Scott Storch/Zoukhan Beyプロデュース。Jungle Brothers「Because I Got It Like That」ネタ。

「Complexity」
Jill Scottをフィーチャー。爽快メロウなネオ・ソウル感がグッド!軽やかな気分になります。The Grand Wizzards/?uestlove/ Omar the Scholarプロデュース。

「Something In The Way Of Things (In Town)」
Amiri Barakaのポエトリー・リーディングをフィーチャーした演奏でアルバムは幕を閉じます。バックのクロスオーヴァーなジャジー・サウンドを聴き逃さないように!The Grand Wizzardsプロデュース。

アルバムには隠れトラックとして、Talib Kweliをフィーチャーした「Rhymes And Ammo/Thirsty」が収録されています。

The Rootsの過去記事もご参照下さい。

『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
Do You Want More?!!!??!

『Things Fall Apart』(1999年)
シングズ・フォール・アパート

『Game Theory』(2006年)
Game Theory

『Rising Down』(2008年)
Rising Down

『How I Got Over』(2010年)
How I Got Over

John Legend & The Roots『Wake Up!』(2010年)
Wake Up

Betty Wright & The Roots『Betty Wright: The Movie』(2011年)
Betty Wright: the Movie

『Undun』(2011年)
Undun
posted by ez at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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