発表年:2012年
ez的ジャンル:ソフトリー男性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :優しい歌声で癒してくれます!
今回は1stアルバム『Foreign Affair(邦題:コートにすみれを)』(2006年)が日本でも一部の音楽ファンの間で話題となった男性シンガーLincoln Brineyの最新2ndアルバム『Lincoln Briney's Party』です。
Lincoln Brineyは1964年カリフォルニア州ユーレカ生まれ。ステージ・シンガーあるいはスタジオ・シンガーとして長いキャリアを積んだ後、2006年にそれまでコツコツと録音してきた音源をまとめた1stアルバム『Foreign Affair(邦題:コートにすみれを)』をリリースし、Chet Baker、Michael Franksを彷彿させるソフトリー・ヴォーカルで一部の音楽ファンから高い支持を得ました。また、ミュージシャン以外にもインテリア関係や一流レストランでの勤務経験なども持つ、多彩な経歴の持ち主のようです。
前作『Foreign Affair』では、Sade、Ron Sexsmith、Antonio Carlos Jobim等の多彩なカヴァーを聴かせてくれましたが、本作『Lincoln Briney's Party』はスタンダード中心の選曲となっています。
アルバムはParty SideとChet Sideの二部構成になっています。
Party Sideは2011年8月18日に親しい友人を招いたホーム・パーティーでのセッションであり、Lincoln Briney(vo)、Marco De Carvalho(g)、Rick Leppanen(b)、Jeff Busch(per)、Craig Flory(sax、cl)という編成です。
Chet Sideは2010年10月27日にシアトルのジャズ・クラブTriple Doorで行われたChet Bakerのトリビュート・ライブに出演した時の音源です。こちらのメンバーは、Lincoln Briney(vo)、Thomas Marriott(tp)、Bill Anschell(p)、Evan Flory-Barnes(b)、Jose Martinez(ds)、Marco De Carvalho(g)という編成です。
前述のように、Chet Baker、Michael Franksあたりがお好きな方ならば気に入るであろう男性ジャズ・ヴォーカル作品です。個人的にはボッサ・アレンジの楽曲が多いのが嬉しいですね。
目新しさは特にありませんが、ソフトリーな大人の男性ヴォーカルには、抜群の癒し効果があります。基本はジャズ・ヴォーカルですが、ジャズ・ファン以外の人でもソフト&メロウ好きな人であれば十分楽しめる1枚だと思います。
GWに聴くのにピッタリな1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Do It The Hard Way」
ブロードウェイ・ミュージカル『Pal Joey』挿入歌のスタンダード(Lorenz Hart/Richard Rodgers作品)。当ブログではChet Bakerのカヴァーも紹介済みです。ここではMarco De Carvalhoのギターが涼しげに響く、ボサノヴァ・カヴァーで聴かせてくれます。Lincoln Brineyのソフトリー・ヴォーカルとボッサ・サウンドが実にマッチしています。
「You Fascinate Me So」
Cy Coleman/Carolyn Leigh作。Blossom Dearie等がカヴァーしています。ここでは穏やかな雰囲気で心が和むカヴァーで聴かせてくれます。
「Do It The Hard Way/You Fascinate Me So」
http://www.youtube.com/watch?v=vCFahmb6r48
「Old Folks」
1938年にDedette Lee Hill/Willard Robinsonによって作られたスタンダード。当ブログではMiles Davis、Kenny Dorhamのカヴァーを紹介済みです。ここではセンチメンタル・ムードたっぷりのバラードで聴かせてくれます。切ない雰囲気にグッときます。
「Any Place I Hang My Hat Is」
Johnny Mercer/Harold Arlen作のスタンダード。小粋なボサノヴァ・カヴァーで聴かせてくれます。クラリネットの音色がいい感じです。
「Raindrops Keep Fallin On My Head」
映画『明日に向って撃て!』の挿入歌としてお馴染みB.J.Thomasによる全米No.1ヒット「雨にぬれても」のカヴァー(Hal David/Burt Bacharach作)。当ブログではFree Design、Claude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's Sevenのカヴァーも紹介済みです。Marco De Carvalhoの美しいギターをバックにLincolnの優しい歌声で包んでくれる感動的な仕上がりです。
「In The Wee Small Hours」
Frank Sinatraでお馴染みのスタンダード(David Mann/Bob Hilliard作)。当ブログではGerry Mulligan、Ann Burtonのカヴァーを紹介済みです。寂しげな感情を上手く表現した切ないバラードです。
「The Party Is Over」
Party Sideのラストを飾るのは、1956年のミュージカル・コメディ『Bells Are Ringing』のために書かれた曲(Betty Comden/Adolph Green/Jule Styne作)です。Party Sideのラストに相応しい曲ですね。余韻に浸りながらParty Sideが幕を閉じます。
「Look For The Silver Lining」
本曲からがChet Side。B.G. DeSylva/Jerome Kern作のスタンダードです。Chetは『Chet Baker Sings』で取り上げています。観客も含めて演奏を楽しんでいる様子が伝わってきます。実に小粋な演奏に、天国のChet Bakerも微笑んでいるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=Pd1NjWWuWSg
「Alone Together」
1932年のミユージカル『Flying Colors』の挿入歌であったスタンダード(Arthur Schwartz/Howard Dietz作品)。当ブログではDinah Washington、Stanley Turrentine、Kenny Dorhamのカヴァーを紹介済みです。 Chetは『Chet』等で取り上げています。ここでは哀愁モードでブルーに歌い切ります。Bill Anschellのピアノもグッド!
「Little Girl Blue」
Lorenz Hart/Richard Rodgers作のスタンダード。ブロードウェイ・ミュージカル『Jumbo』の挿入歌です。当ブログではJanis Joplinのカヴァーを紹介済みです。 Chetは『Embraceable You』等で取り上げています。ここではBill Anschellの美しいピアノをバックに素敵なバラードで聴かせてくれます。
「I'll Remember You」
Elvis Presleyヴァージョン等でお馴染み、ハワイのSSW、Kui Leeの作品。Chetは本曲を取り上げていませんが、Chetの雰囲気にマッチした曲という意味合いかもしれません。ハワイアン・ボッサ・サウンドをバックにジェントル・ヴォーカルで観客を魅了します。
「The Thrill Is Gone」
Lew Brown/Ray Henderson作。Chetは『Chet Baker Sings』で取り上げています。Marco De Carvalhoのギターをバックにしたボッサ・テイストのカヴァーです。
「My Funny Valentine」
ラストはLorenz Hart作詞、Richard Rodgers作曲による超有名スタンダード。当ブログではMiles Davis、Bill Evans & Jim Hall、Larry Youngのカヴァーを紹介済みです。Chetは『Chet Baker Sings』で取り上げています。美しく感動的なバラードでアルバムを締め括ってくれます。
1st『Foreign Affair(邦題:コートにすみれを)』(2006年)もチェックを!
『Foreign Affair』(2006年)