録音年:1966年
ez的ジャンル:異才ギタリスト系サイケ・ラテン・ジャズ
気分は... :妖しいラテン・ジャズ・・・
今回はハンガリー出身のジャズ・ギタリストGabor Szaboによるサイケ・ラテン・ジャズ作品『Spellbinder』(1966年)です。
60年代後半にはGary McFarlandと共にSkyeレコードを立ち上げたとでも知られる異才ギタリストGabor Szaboの紹介は、『Jazz Raga』(1966年)に続き2回目となります。
Impulse!からリリースされた『Spellbinder』(1966年)は、『Gypsy '66』(1966年)に続く、2枚目のリーダー作となる作品です。
前回紹介した『Jazz Raga』(1966年)は、シタールを前面にフィーチャーしたサイケ/ラーガ・ジャズ作品でしたが、本作ではサイケ風味のラテン・ジャズ作品に仕上がっています。
レコーディング・メンバーは、Gabor Szabo(g)、Ron Carter(b)、Chico Hamilton(ds)、Willie Bobo(per)、Victor Pantoj(per)という編成です。
Chico Hamiltonは当時のSzaboの雇い主、Hamiltonのバンドにかつて在籍していたRon Carterは当時Miles Davisの第二期黄金クインテットのメンバーでした。Willie Boboは人気パーカッション奏者の地位を確立しつつある時期でした。。Azteca、Maloでも演奏していたVictor Pantojは当時Willie Boboのバンドのメンバーでした。
特に、Willie Bobo、Victor Pantojの2人が叩き出すパーカッションが本作におけるラテン・テイストを決定付けています。そこに妖しげなSzaboのギターが加わると、摩訶不思議なサイケ・ラテン・ジャズ・ワールドが展開されます。
タイトル曲「Spellbinder」やSantanaのカヴァーで知られる「Gypsy Queen」の2曲がハイライトですが、アルバム全編を通じて、Szaboらしい妖しい雰囲気のラテン・ジャズを満喫できます。
全曲紹介しときやす。
「Spellbinder」
Gabor Szabo作。本作のハイライト。DJにも大人気のクラブジャズ・クラシックです。Hamilton、Boboらの強力なリズム隊がSzaboのギターに妖しく輝かせます。この王道から外れた妖しさこそがSzabo作品の魅力ですね。パーカッシヴ・サウンド大好きな僕にジャスト・フィットのグルーヴィー・ジャズです。
http://www.youtube.com/watch?v=mS91h0FhIgs
「Witchcraft」
Carolyn Leigh/Cy Coleman作。Frank Sinatraのヒットで有名なスタンダード曲です。当ブログではBill Evans Trioのカヴァー(アルバム『Portrait In Jazz』収録)も紹介済みです。ここでは軽快かつムーディーなラテン・ジャズで聴かせてくれます。ムーディーといってもリズム隊のグルーヴが格好良いので、野暮ったい感じは全くありません。
http://www.youtube.com/watch?v=hF7qWlYgA-Y
「It Was A Very Good Year」
Ervin Drake作。この曲もFrank Sinatraのヴァージョンが有名ですね。ここでは妖しげな空気の漂う哀愁モードのラテン・ジャズを聴かせてくれます。Ron Carterのベースが演奏全体を牽引します。
「Gypsy Queen」
Gabor Szabo作。「Spellbinder」と並ぶ本作のハイライト。前述のように、Santanaの大ヒット・アルバム『Abraxas』におけるカヴァーでお馴染みの曲のオリジナルです。覚醒するサイケ・ラテン・グルーヴといった感じがたまりません。Santanaがカヴァーしたくなるのもわかる演奏ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=A3--HVjDk7s
「Bang Bang (My Baby Shot Me Down)」
Sonny Bono作。Cherのヒット曲をカヴァー。ここではSzabo自身がヴォーカルもとっています。哀愁サイケ・ポップ・チューンに仕上がっていますが、Szaboの妖しい泣きのギターに魅了されます。
http://www.youtube.com/watch?v=rXorHcH-5Ng
「Cheetah」
Gabor Szabo作。密かに好きな1曲。サイケ風味の妖しげな疾走感に惹かれてしまいます。
「My Foolish Heart」
作詞Ned Washinton、作曲Victor Youngによるスタンダード。映画『My Foolish Heart』(1949年)の主題歌です。当ブログではBill Evans Trio、Roman Andren、Astrud Gilbertoのカヴァーを紹介済みです。こうしたスタンダードもSzaboの手に掛かれば妖しげな空気を放ちます(笑)
「Yearning」
Gabor Szabo作。ラテンのリズムを前面に押し出したラテン・ジャズ・チューンに仕上がっています。
「Autumn Leaves & Speak To Me Of Love」
ラストはJoseph Kosma作「Autumn Leaves」、Jean Lenoir作「Speak To Me Of Love」というスタンダードのメドレー。「Autumn Leaves」については、当ブログでBill Evans Trio、Basso Valdambrini Quintetの演奏を紹介済みです。哀愁バラードの「Autumn Leaves」から、パーカッシブに疾走するラテン・グルーヴ「Speak To Me Of Love」へ一気にギア・チェンジします。
他のGabor Szabo作品もチェックを!
『Gypsy '66』(1966年)
『Jazz Raga』(1966年)
『The Sorcerer』(1967年)
『More Sorcery』(1967年)
『Wind Sky and Diamonds』(1967年)
『Bacchanal』(1968年)
『Dreams 』(1969年)
『High Contrast』(1970年)
『Mizrab』(1973年)
『Macho』(1975年)