録音年:1959年
ez的ジャンル:ピアノ・トリオ・ジャズの定番
気分は... :心が浄化されマス
『Alone』(1968年)、『Waltz For Debby』(1961年)に続く、3回目のBill Evans登場デス。
本ブログで恒例となっている4半期ごとのアクセス数Top10で前回(2006年7-9月)第1位に輝いたのが『Waltz For Debby』だった。
どちらかと言えば、R&B/Soul、Hip-Hop系のアクセス数が多い本ブログでジャズ・アルバムへのアクセス数が一番多いというのは、かなり意外な結果だったけど、Bill Evansファンが多いことが素直に嬉しかったっす。
さて、今回は『Waltz For Debby』と同じ、Scott LaFaro(b)、Paul Motian(ds)との最強トリオによる代表作『Portrait In Jazz』(1959年)っす。
『Portrait In Jazz』は、もしかしたら一番ポピュラーなBill Evansの作品かもしれませんよね。僕も最初に購入したBill Evans作品はコレでした。当時、僕のJazzに対するイメージって、黒人、破天荒みたいなイメージがあったので、この選挙ポスターのようなクソまじめで仏頂面の白人(Evans)が写るジャケは印象的だったね。
初リーダー作『New Jazz Conceptions』(1956年)を発表した頃は、まだ自らのスタイルを模索していたEvansは、1958年から1959年にかけて、帝王Miles Davisのグループへの参加し、歴史的名盤『Kind Of Blue』(1959年)などのセッションを通じて、モーダルなスタイルを自分のものにしていった。
それを昇華すべく結成したのがLaFaro、Motianとの最強トリオであり、その第1作が本作『Portrait In Jazz』である。よく言われる表現だけど、やっぱりエレガントという表現がピッタリだよね。
そのエレガントさは、Evansのピアノの素晴らしさもさることながら、LaFaroのベース、Motianのドラムが一体化したインタープレイの見事さに尽きると思いマス。
熱心なジャズ・ファンの方からすると、あまりにベタなセレクトと笑われそうですが、やっぱりコレは絶対抑えておくべき1枚だし、飽きずに一生聴き続けることができる作品だと思いますよ。
全曲紹介しときやす。
「Come Rain or Come Shine」
ミュージカル『St.Louis Woman』のために書かれたスタンダード(作詞Johnny Mercer、作曲Harold Arlen)。余計な音がない分、ピアノ、ベース、ドラムの絡みに耳を澄ませると味わい深いっす。
Bill Evans Trioとスウェーデンの歌姫Monica Zetterlundとの共演作『Waltz For Debby』でも取り上げていました。
他アーティストのカヴァーでは、Dinah Washington、Art Blakey & The Jazz Messengers、Sonny Clark、Keith Jarrett、Wynton Kellyなどのジャズ・ミュージシャンが取り上げています。意外なところでは、Eric Clapton & B.B. Kingによるカヴァーなんていうのもありマス。個人的には、映画『For The Boys』のサントラのBette Midlerバージョンも捨て難いですな(このサントラはBeatles「In My Life 」の名カヴァーが目玉ですけどね)。
「Autumn Leaves」
その後、Evansが何度もレコーディングすることになった定番曲。元々はJuliette Grecoによるシャンソンの名曲。Cannonball Adderley『Somethin' Else』(1958年)の演奏が有名かもしれませんが、本作の演奏も実にスリリングなインタープレイが展開され、素晴らしいと思いマス。僕はこのアルバムと言えば、すぐにこの曲が思い浮かぶなぁ。
Wynton Kelly、Keith Jarrett、Red Garlandなど数多くのミュージシャンが取り上げています。
「Witchcraft」
1957年のFrank Sinatraのヒットで有名な曲(作詞Carolyn Leigh、作曲Cy Coleman)。Marvin Gayeもカヴァーしています。本作では恋の魔法にかかったようなウキウキな演奏が印象的ですね。
「When I Fall in Love」
元々は1952年の映画『One Minute To Zero』のために書かれた曲。その後Nat King Coleが取り上げて有名になった曲なのだとか。スタンダード感漂う実にロマンチックな演奏ですね。「Someday My Prince Will Come」、「Autumn Leaves」と並んで、僕がよく聴く曲デス。
Miles Davis、Keith Jarrett、Jackie McLean、Blue Mitchell、Red Garlandなんかも取り上げていマス。
「Peri's Scope」
Evansのオリジナル。とても小粋な感じのする演奏ですね。EvansのピアノとLaFaroのベースの絡みが楽しい(この曲に限ったことではありませんが)。
「What Is This Thing Called Love?」
Cole Porter作品。元々はミュージカル『Wake Up and Dream』のために書かれたもの。“恋とは何?”という永遠のテーマを、ここでは実にスリリングに聴かせてくれます。恋にはこのスピード感が大事なのか(笑)
「Spring Is Here」
Richard Rodgers & Lorenz Hartzによるスタンダード。John Coltraneも取り上げていますね。個人的にはCarly Simonのバーション(アルバム『Torch』収録)をよく学生時代に聴いていまシタ。しっとりと翳りのある演奏がステキですね。
「Someday My Prince Will Come」
「いつか王子様が」という邦題の方がピンとくる1937年のディスニー映画『白雪姫(Snow White and the Seven Dwarfs)』の主題歌(作詞Larry Morey、作曲Frank Churchill)。
個人的には本作で一番聴く頻度が多いお気に入り曲。「Waltz for Debby」(アルバム『Waltz for Debby』収録)、「Alice in Wonderland(不思議な国のアリス)」(アルバム『Sunday At The Village Vanguard』収録)の3曲をセットで聴くのが、僕のお気に入りパターンっす。エレガントな演奏を聴きながら、童心に戻れるカンジがたまりません。
本バーション以外ならばMiles Davisのバージョンが僕のお気に入りデス。Dave Brubeck、Keith Jarrett、Wynton Kellyなども取り上げていマス。
「Blue in Green」
Miles Davisの名盤『Kind Of Blue』(1959年)収録のMiles DavisとBill Evans共作曲。本作でのリリカルな演奏にはただただウットリするのみですね。
こうやって全曲を眺めてみると、改めて充実の1枚だと再認識した次第っす。
ちょっと今へこみ気味なんだけど、Bill Evansの演奏はそんな心を優しく浄化してくれるカンジっす。これだからBill Evansは止められない。