発表年:2012年
ez的ジャンル:エクスペリメンタル系LAビート・ミュージック
気分は... :彼は進化し続ける!
今回はエクスペリメンタルな音楽ファンが最も注目するクリエイターの一人であるFlying Lotusの最新作『Until The Quiet Comes』です。
Flying Lotus(本名:Steven Ellison)は1983年カリフォルニア生まれの音楽プロデューサー/ミュージシャン。
彼の叔母はJohn Coltraneの妻であり、ジャズ・ミュージシャンとしても活躍したAlice Coltraneです。
これまで『1983』(2006年)、『Los Angeles』(2008年)、『Cosmogramma』(2010年)という3枚のアルバムをリリースしています。
Hip-Hop、エレクトロニック・ミュージック、スピリチュアル・ジャズを融合させたエクスペリメンタルなLAビート・ミュージックはアルバムをリリースするたびにシーンに大きなインパクトを与えてきました。
特に前作『Cosmogramma』は、低音の効いたエレクトロニック・ミュージックに生音を上手く融合させた独自の音世界を進化させたことに加え、RadioheadのThom Yorkeが参加したこともあり、Flying Lotusの名を一気に多くの人に知らしめるアルバムとなりました。
4thアルバムとなる本作は『Until The Quiet Comes』(2012年)はタイトルの通り、ビート・ミュージックに「静」のエッセンスを取り入れたアルバムであり、アンビエント感覚のサウンドも聴くことができます。Flying Lotus本人も語っているようにサウンドトラックのような雰囲気が漂うアルバムに仕上がっています。
ただし、故J Dillaを敬愛する彼の原点はHip-Hopであり、そうしたHip-Hop的アプローチのサウンドも随所で確認できます。
アルバムには前作に続きThom Yorkeが参加し、さらにErykah Baduの名もクレジットされています。また、Niki Randa、Laura Darlington、Thundercat(Stephen Bruner)といった前作参加アーティストが引き続きフィーチャーされています。
『Until The Quiet Comes』previews
http://www.youtube.com/watch?v=KRkssedopfQ
知名度が高くなったといっても、エクスペリメンタルな要素があり、短い曲が多いアルバムなので、まだまだリスナーを選ぶ作品かもしれません。それでもアーティストとしてのスケール感を増していくFlying Lotusは、今聴くべき旬なアーティストの一人だと思います。
曲は全てFlying Lotus(Steven Ellison名義)のオリジナルです(ゲストらとの共作含む)。
全曲紹介しときやす。
「All In」
ビューティフル&コズミック&ドリーミー・ジャズ・チューンでアルバムは幕を開けます。このオープニングで一気にFlying Lotusの音世界に惹き込まれます。
「Getting There」
Niki Randaをフィーチャー。夢の途中といった幻想的な雰囲気が広がります。
http://www.youtube.com/watch?v=5tDTqUdMFBE
「Until The Colours Come」
前曲同様に幻想的な雰囲気が漂うアンビエントな小曲。
「Heave(n)」
ジャズ+エレクトロニック・ミュージック+Hip-Hop+アンビエントというまさに本作らしい音が楽しめる天国気分のインスト。
「Tiny Tortures」
「All The Secrets」
エクスペリメンタル色の強い2曲。Flying Lotus自身が本作の制作前にStereolabを聴いていたとライナーノーツに書いてありましたが、そんな影響を感じる仕上がりです。
「Sultan's Request」
地を這う低音ベースとビートが印象的な楽曲。ある意味従来のFlying Lotusに最も近い曲かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=QhzR7e_cPlM
「Putty Boy Strut」
ゲーム・ミュージック的なエッセンスをFlying Lotusのエッセンスでまとめ上げています。シングルにもなりました。
http://www.youtube.com/watch?v=SuQGfk9Gmgo
「See Thru To U」
Erykah Baduをフィーチャーした話題曲。シングルにもなりました。Erykahのバックでベーシストとしても活躍するThundercatを介して2人のつながりが出来た模様です。Erykah様の個性とFlying Lotusのセンスが見事に融合した幻想的なフューチャー・ソウルに仕上がっています。やはり、アルバムでこの曲が一番好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=A7lbY-THNHc
「Until The Quiet Comes」
タイトル曲はエクスペリメンタルな雰囲気の中にもジャズ的センスを感じる1曲に仕上がっています。
「DMT Song」
Thundercatをフィーチャー。美しくも切ないメロディ&ヴォーカルが印象的な小曲です。
「The Nightcaller」
その方面では人気のあるビートメーカーSamiyam(Sam Baker)も関与している1曲。インストながらもエレクトロニック感の効いたなかなか印象的な1曲に仕上がっています。
「Only If You Wanna」
アルバムの中で最もジャズを感じる仕上がり。本人はStereolabから影響を受けた曲だと述べているようですが、正直あまりそれは感じませんでした。
「Electric Candyman」
Thom Yorkeをフィーチャー。Flying LotusとThom Yorkeの顔合わせって妙に納得してしまいますね。Flying LotusのThom Yorkeへのリスペクトが感じられる仕上りです。
「Hunger」
Niki Randaをフィーチャー。ワールド・ミュージック的な雰囲気も漂うミステリアスな仕上がり。RadioheadのメンバーJonny Greenwoodが手掛けた映画『ノルウェイの森(Norwegian Wood)』楽曲をサンプリングしています。
「Phantasm」
Laura Darlingtonをフィーチャー。この曲も僕のお気に入り。本作らしいアンビエントなサウンドに幻想的なLaura Darlingtonのヴォーカルが浮遊します。
http://www.youtube.com/watch?v=Q7J_hwksbbw
「Me Yesterday // Corded」
捨て難い魅力がある幻想的な前半からエレクトロニックでフューチャーリスティックな後半へ展開されます。
http://www.youtube.com/watch?v=8DgAhgmpXNA
「Dream To Me」
ラストはストリングスも入った幻想的なサウンドで締め括ってくれます。
国内盤にはボーナス・トラックとして「The Things You Left」が収録されています。
他のFlying Lotus作品もチェックを!
『1983』(2006年)
『Los Angeles』(2008年)
『Cosmogramma』(2010年)