発表年:2012年
ez的ジャンル:メトロポリタン・サウダージ系ブラジル音楽
気分は... :簡にして要を得る!
今回はブラジルのベテラン男性シンガー/ギタリスト/ドラマーVinicius Cantuariaの新作『Indio De Apartamento(邦題:アパート暮らしのインヂオ)』です。
Vinicius Cantuariaの紹介は『Samba Carioca』(2010年)に続き2回目となります。
前作『Samba Carioca』(2010年)の後、Bill Frisellとの共演作『Lagrimas Mexicanas』(2011年)を挟んでソロ16作目となる新作『Indio De Apartamento』のリリースとなりました。
Vinicius Cantuaria & Bill Frisell『Lagrimas Mexicanas』(2011年)
『アパート暮らしのインヂオ』を邦題が表すように、アマゾンのマナウスで生まれ、現在はN.Y.に居を構える
メトロポリタンのインヂオVinicius Cantuariaらしい、アマゾン先住民のDNAを受け継ぐサウンドと摩天楼N.Y.の洗練された感性が見事に融合した1枚に仕上がっています。
アルバムにはBill Frisell(g)、坂本龍一(p)、Norah Jones(p)、Dadi(b)、Jesse Harris(vo)、Mario Laginha(key)、Olivier Glissa(key)、Liminha(b)といったゲストが参加しています。
サウンド自体はとてもシンプルなのに、実に味わい深いサウンドに魅了されてしまいます。まさに簡にして要を得るといった趣の音世界です。
全10曲で30分にも満たないアルバムですが、そのような物足りなさは全く感じません。
全曲紹介しときやす。
「Humanos」
邦題「人間」。Vinicius Cantuaria作。オープニングは冬のサウダージといった趣。淡々とした中に味わい深い音世界があります。
「Moca Feia」
邦題「醜い娘」。Vinicius Cantuaria/Leoni作。最近の僕のヘビロテになっている美しいボッサ・チューン。坂本龍一がピアノで参加し、サウンド全体にエレガントな雰囲気を与えてくれます。
「Purus」
邦題「プルス河」。Vinicius Cantuaria作。ここではViniciusがヴォーカルに加え、キーボード、ドラム、パーカッションと全ての楽器を演奏し、彼のマルチ奏者ぶりを楽しめます。インヂオのアイデンティティを感じる土着的な1曲に仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=ZG4KxB9QFjY
「Acorda」
邦題「起きて」。Vinicius Cantuaria/Arnaldo Antunes作。この曲も坂本龍一がピアノで参加。Viniciusのギター&ヴォーカルと教授のピアノのみのシンプルな演奏ですが、そのシンプルさがいいですね。「静かなる音楽」好きの人も気に入るのでは?
「Um Dia」
邦題「ある日」。Vinicius Cantuaria作。1分強のインタールード的な小曲ですが、なかなかいい雰囲気の演奏です。
「Quem Sou Eu」
邦題「僕がなんだというのだろう」。Vinicius Cantuaria作。Norah Jonesがピアノで参加。実に素敵なピアノの響きを奏でてくれます。2分にも満たない曲ですが、もっと長尺で聴きたいですね。
「This Time」
Vinicius Cantuaria/Jesse Harris作。前曲のNorahに続き、Norahの大ヒット曲「Don't Know Why」の作者Jesse Harrisがヴォーカルで参加。さらにBill Frisellのギターも加わっています。アルバムで最も完成度の高い感動的な1曲に仕上がっています。さすがJesse Harrisはメロディアスないい曲書きますね。この曲も最近の僕のヘビロテ。
「Chove La Fora」
邦題「外では雨が降っている」。Tito Madi作。この曲もBill Frisellが参加。Bill Frisellがさすがのギター・プレイを聴かせてくれます。雨の日に家でマッタリ気分で聴くとフィットする1曲です。終盤のViniciusとFrisellのギター・アンサンブルも味わい深いです。
「Indio De Apartamento」
邦題「アパート暮らしのインヂオ」。Vinicius Cantuaria作。「アパート暮らしのインヂオ」のタイトルに相応しく、インヂオ・モードのサウンドをメトロポリタン感覚で処理しているのがいいですね。
「Pe Na Estrada」
邦題「旅立ち」。Vinicius Cantuaria/Evandro Mesquita作。Bill FrisellとDadiが参加。ラストはSSWらしい味わい深い曲で締め括ってくれます。ブラジル音楽好きというよりも、米国SSW好きの人がグッとくる仕上がりなのでは?
他のVinicius Cantuaria作品もチェックしてみて下さい。
『Sol Na Cara』(1996年)
『Tucuma』(1999年)
『Vinicius』(2001年)
『Horse and Fish』(2004年)
『Silva』(2005年)
『Cymbals 』(2007年)
『Samba Carioca』(2010年)