発表年:1982年
ez的ジャンル:文無しひとりチープ・サウンド系ソウル
気分は... :ピコピコ.Marvin大好きデス♪
昨日のJohn Valentiが“白いStevie Wonder”ならば、本日は“赤いMarvin Gaye”を紹介します...なんて事はあるはずもなく(笑)、本家Marvin Gayeっす。
『I Want You』(1976年)、『What's Going On』(1971年)に続く、Marvin3回目の登場は、遺作となった『Midnight Love』(1982年)っす。
この頃のMarvinといえば、離婚、経済的窮状、精神不安定と踏んだり蹴ったり人生どん底状態にあり、ベルギーで半ば隠遁生活を送っていた。そんな中、長年の付き合いだったモータウンからCBSへ移籍し、再起をかけて発表した作品が『Midnight Love』(1982年)だった。
本作は、リアルタイムで僕が新作としてレコード購入した唯一のMarvin作品である。
当時、僕にとってMarvin Gayeという人は過去の偉大なミュージシャンというイメージが強かったので、新作というかたちでMarvinの歌を聴けるなんて思ってもいなかった。ましてや前述のMarvinの窮状などは全く知らなかった。
曖昧な記憶しかないが、シングル「Sexual Healing」のポップチャートにおけるチャートアクションのジャンプアップぶりに驚き、グッと本作への興味が高まったような憶えがある。
金欠でミュージシャンを雇う金の無かったMarvinは、ベルギーのスタジオで多重録音を行い、ホーン・セクションやGordon Banks、James Gadsonのサポート以外の楽器を一人でこなし本作を完成させた。届けられたのは、チープなピコピコ・サウンドとMarvinの開き直ったようなリラックスしたボーカルだった。
Daryl Hall & John Oates「I Can't Go For That (No Can Do)」あたりのチープなピコピコ・サウンドが好きだった僕には、シングル「Sexual Healing」に同じような匂いを感じ、レコード購入を決心した。
個人的には、今でも80年代前半のこのチープでスカスカなシンセ・サウンドにたまらない魅力を感じる。最近のHip-Hopのトラック作りにおいても、あえてチープなカンジを狙ったものが多く、このあたりのサウンドを意識しているような気がしマス。
結果として、本作は大ヒットとなり、1983年にはグラミー賞も受賞し、Marvinは見事に復活を遂げたのであった。
だが、本作がMarvinの遺作となってしまうとは...
1984年4月1日悲劇は起きた。Marvinが両親の実家で、なんと父親に射殺されてしまったのである。享年45歳であった。
このニュースを聴き、供養の意味で、本作『Midnight Love』と『What's Going On』のレコードを1回づつ聴いた記憶がある。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Midnight Lady」
オープニングは、ピコピコ・ファンキー・グルーヴ。僕の勝手なイメージとして、昔からこの曲を聴くとジャングルを連想してしまうんだよねぇ。
「Sexual Healing」
アルバム全体の雰囲気を象徴する大ヒット・シングル(全米ポップ・チャート第3位、R&Bチャート第1位)。名曲「Let's Get It On」の80年代版というカンジですな。チープだけどセクシーなサウンドが大のお気に入りっす。
El DeBargeによるカヴァーや、Fat Joe「Envy」などのサンプリング・ネタとして聴いている方もいるのでは?
最近だと、加藤ミリヤ「ディア・ロンリーガール」(2005年)のトラックがそうですね。というか、「ディア・ロンリーガール」はECD「ECDのロンリーガール」(1997年)がベースになっており、その「ECDのロンリーガール」も、筒美京平作品であるB級アイドル佐東由梨「ロンリー・ガール」(1983年)をサンプリングしているという流れっす。本作発表の翌年である1983年の筒美作品ということから察しがつくと思いますが...てなワケです(笑)
「'Til Tomorrow」
Marvinの本領発揮のフェロモン出まくりスロウ。同じエロエロ・ソウル仲間のIsley Brothers「Between The Sheets」あたりと一緒に聴けば、エロさ倍増ですな。Chico DeBargeがカヴァーしていますね。
「Turn on Some Music」
聴き込むほど気に入るミッド・チューン。チープ・トラックが逆にMarvinのボーカルを際立たせることに成功しているのかもね。Erick Sermon「Music」の大胆なサンプリングがありましたね。
「Third World Girl」
これも「Midnight Lady」と同じ路線。よって、この曲も僕の頭の中ではジャングルの風景が渦巻いている。
「Joy」
後のエレクトリック・ファンクの盛り上がりを先取りしているような曲ですね。
「My Love Is Waiting」
本作に関わってくれた人への謝辞から始まるエンディング曲。
購入したころは、「Sexual Healing」と本曲ばかり繰り返し聴いていた記憶がある。かつて、♪愛は何処へいったの♪と歌っていたMarvinの遺作のエンディング曲が「My Love Is Waiting」とは何か複雑な思いがする。
傑作アルバムだとは思わないけど、僕にとっては思い出深い、愛着のある作品である。