発表年:1996年
ez的ジャンル:脱ネオアコ系ドラムンベース
気分は... :儚いビートでクールに踊り明かそう...
Ben WattとTracey ThornのデュオEverything But the Girl(EBTG)の2回目の登場っす。
前回はネオアコの名作であるデビュー作『Eden』(1984年)でしたが、今回はそのサウンドを一気にドラムンベース、テクノなどのクラブ系サウンドにシフトさせていった『Walking Wounded』(1996年)っす。
僕がイメージするEBTGはネオアコだし、Tracey Thornのソロ『A Distant Shore』(1982年)、Ben Wattのソロ『North Marine Drive』(1983年)、そしてEBTGとしてのデビュー作『Eden』(1984年)の3枚は青春の思い出の1ページというカンジで今でも愛着が深い。
でも、EBTGのオリジナル・アルバムは大体持っている僕が一番聴いた頻度が多いアルバムは本作『Walking Wounded』(1996年)かもしれない。
本作『Walking Wounded』には、ネオアコ・グループとしてのEBTGの面影は殆どなく、アルバム全体がドラムンベース/テクノといったクラブ系サウンドで占められている。その意味で、本作はEBTGファンにとっても賛否両論に分かれた作品だったんじゃないかなぁ。
僕自身はネオアコのみならず、クラブ系サウンドも大好きなので、この路線変更にそれ程抵抗感はなかったかな。
サウンド自体は大きく変化したけど、アルバム全体を聴き終わって、EBTGらしさは変わっていないという印象を受けた。むしろ、Tracey Thornの気だるく、淡々としたボーカルにドラムンベースのサウンドは実にマッチしていると思ったくらいだった。
当時、Ben Wattが“ドラムンベースは21世紀のボサノヴァである”といった主旨の発言をしていたと記憶している。
このアルバムで聴かれるドラムンベース・サウンドのヒンヤリ感は確かに、ボサノヴァのそれと共通するものがあるかもしれない。その意味では、BenとTraceyの二人にとって、本作のアプローチは自然なものであり、周囲が思うほど大きな変化ではなかったのかもね。
当時、時代の流れでドラムンベースもある程度聴き、LTJ Bukem、4 Hero、Goldie、Roni Sizeなどの作品もウチのCD棚には一応揃っているものの、結局僕が一番しっくりきたドラムンベース作品は本作かもしれないなぁ。
個人的には、自分をクールダウンしたり、一人孤独な世界に入りたい時なんかにCD棚から思わず取り出してしまう1枚っす。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Before Today」
まさに21世紀のボサノヴァという表現がピッタリなオープニング・ナンバー。個人的にはアルバムで一番好きな曲デス。この物悲しいけど、クールなカンジがたまりません。アルバムから4thシングルとなった曲。
「Wrong」
アルバムからの2ndシングルで全英チャート第8位を記録したヒット曲。Traceyの中性的なボーカルとハウス・サウンドの組み合わせがなかなかグッド。僕が持っているCDにはTodd TerryによるRemixも収録されていマス。
「Single」
メランコリック・ムードのアルバムからの3rdシングル。Tim Buckley「Song to the Sirens」をサンプリングするあたりがBen Wattらしいかもね。
「The Heart Remains a Child」
この曲が一番従来のEBTGに近いかもしれませんね。まぁ、小休止の1曲ってカンジですな。
「Walking Wounded」
アルバムからの1stシングル。全英チャート第6位のヒットとなりまシタ。EBTGらしいドラムンベース・サウンドを堪能できる1曲デス。僕が持っているCDにはOmni TrioによるRemixも収録されていマス。
「Big Deal」
ノスタルジックなんだけどフューチャーという不思議な感覚の1曲。
「Mirrorball」
クールで孤独な印象を受ける曲が多いなかで、この曲は暖かいカンジがするね。
「Good Cop Bad Cop」
この曲もドラムンベースな1曲デス。儚いムードがたまらなく大好きっす。ドラムンベースのクールなリズムって儚いムードを醸し出すにはピッタリかもね。
本作を気に入った方は、本作の次に発表された『Temperamental』(1999年)も同じ路線ですので、ぜひどうぞ!