発表年:2013年
ez的ジャンル:進化系男性ジャズ・シンガー
気分は... :D'Angelo『Voodoo』から13年・・・
今回はジャズ・ファンのみならず、R&B好き、クラブミュージック好きからも注目される男性ジャズ・シンガーJose Jamesの最新作『No Beginning No End』です。彼のBlue Noteからの第一弾アルバムです。
Jose Jamesは1978年ミネアポリス生まれ。10代でジャズに目覚め、10代後半からN.Y.のジャズ・スクールへ通った後、ジャズ・コンテストに出場しながらデビューの機会を窺っていました。
そんな中、2006年にロンドンで行われた国際ジャズ・コンペティションに出場したところをGilles Petersonに認められ、彼のレーベルBrownswood Recordingsからデビューする機会を得ます。そして、2007年にデビュー・アルバム『The Dreamer』をリリース。Gilles Petersonのイチオシ・シンガーということでクラブジャズ好きを中心に話題となりました。
その後、Jazzanova『Of All The Things』(2008年)、Nicola Conte『Rituals』(2008年)といった当ブログでも紹介したクラブジャズ/クロスオーヴァーの話題作へ参加し、シーンにその名を定着させました。Nicola Conteについては、『Love & Revolution』(2011年)にも参加しています。
さらに2ndアルバム『Blackmagic』(2010年)には、Moodymann、DJ Mitsu The Beats 、Taylor McFerrin、Flying Lotus、Ben Westbeech等のアーティストが参加し、益々クロスオーヴァー色を強めていきます。
一方、『Blackmagic』と同じ2010年にはベルギーのピアニストJef Neveとの共演によるスタンダード・アルバム『For All We Know』をリリースしています。
『The Dreamer』、『Blackmagic』は以前から愛聴盤です。特に『Blackmagic』はてっきり当ブログで紹介済みだと思い込んでいました。何処か憂いを帯びた感じに惹かれますよね。
本作のリリースに際しては、Leon Wareとの出会いが影響しているようです。L.A.で彼と面会し、故Marvin Gayeとの思い出を聞くうちに、Jose Jamesの中にジャズとソウルを融合させたアルバムというコンセプトが固まっていったようです。
こうしたコンセプトへの思いは、ベテラン・ベーシストPino Palladinoのプロデューサーへの起用からも窺えます。Jose James本人がD'Angelo『Voodoo』(2000年)やErykah Badu『Mama's Gun』(2000年)といったネオ・ソウル名作を強く意識し、その2作に大きく関与したPino Palladinoに白羽の矢を立てたようです。さらにこれら2作のエンジニアであったRussell Elevadoやミキシングを担当していたTom Coyneを起用する徹底ぶりです。このあたりからJose Jamesの意図が明確に窺えます。
ちなみにPino Palladinoと共にJose James本人と共にBrian Benderが本作のプロデュースを務めています。
Pino Palladino(b)やUKの人気ドラマーRichard Spaven(ds)、日本人トランぺッター黒田卓也といったJose James作品でお馴染みの2人、今最も旬なジャズ・アーティストRobert Glasper(p)と彼が率いるRobert Glasper ExperimentのドラマーChris Dave、R&Bファンにはお馴染みのAmp Fiddler、ベルベル人女性シンガーHindi Zahra、本作へ2曲の楽曲提供も行っている女性シンガー・ソングライターEmily King、女性タブラ奏者Suphala、それ以外にもKris Bowers(p)、Grant Windsor(key)、Corey King(tb)、Jeremy Most(g)等の多彩なアーティストがレコーディングに参加しています。
特にPino Palladinoと並んで黒田卓也の貢献が大きいのでは?日本人トランぺッター黒田卓也は本作のホーン・アレンジを全面的に手掛けています。
イギリス人ドラマーRichard Spavenは、Jose James作品以外にもMark De Clive-Lowe、4Hero、Flying Lotus等の作品に参加していますね。当ブログでは彼がイギリス人プロデューサー/キーボード奏者Vincent Helbersと組んだユニットSeravinceのアルバム『Hear To See』(2012年)も紹介済みです。
『Blackmagic』あたりのイメージで聴くと、全体として大人しい印象を受けるかもしれませんが、Jose Jamesらしさを満喫できる1枚であり、所々で彼の新しい一面に出会える楽しさもある1枚です。勿論、前述のようにD'Angelo『Voodoo』的なエッセンスを堪能する楽しみ方もあると思います。
また、Robert Glasperのアルバム同様に、本作参加のミュージシャンのピープル・ツリーを追いかけるのも楽しいと思います。
いろいろな意味で興味が尽きない1枚ですな。
全曲紹介しときやす。
「It's All Over Your Body」
Jose James/Pino Palladino/Fin Greenall/Grant Windsor/Richard Spaven作。Robert Glasper(p)、Chris Dave(ds)という
http://www.youtube.com/watch?v=K3lOMyo1uqk
「Sword + Gun」
Jose James/Hindi Zahra作。モロッコ出身、パリを拠点に活躍するベルベル人女性シンガーHindi Zahraをフィーチャー。彼女はフランスBlue Noteからデビュー・アルバム『Handmade』(2010年)をリリースしています。本作のなかでも異色のエスニック・モードの1曲に仕上がっています。でもこのミステリアスなムードはJose Jamesのカラーにフィットしていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=fDb_lino3bc
「Trouble」
Jose James/Scott Jacoby作。この曲はネオ・ソウル+Sly Stone調ファンクといった趣の仕上がりです。黒田卓也のトランペットが冴え渡ります。曲自体は偉大なるソウルマンたちのトラブルを歌ったものです。
http://www.youtube.com/watch?v=2HoflaconyY
Madlibの実弟Oh Noによるリミックスも要チェックです。。
Jose James「Trouble (Oh No Remix) 」
http://www.youtube.com/watch?v=uG3K1b-ciZ4
「Vanguard」
Jose James/Robert Glasper作。またまたRobert Glasper(p)、Chris Dave(ds)とのセッション。Robert Glasper Experiment『Black Radio』の雰囲気をそのまま持ってきたような仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=ouItEkKXBdA
「Come to My Door」
Emily King作。元々は彼女のアルバム『East Side Story』(2007年)に収録される予定だった曲なのだとか。クールで憂いを持ったイメージが強いJose Jamesですが、ここでは穏やかな雰囲気の歌声を聴くことができます。その意味では彼の新しい一面を窺える仕上りなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=MDv74VPHW1Q
「Heaven on the Ground」
Emily King作。Emily King作品が続きます。ここではEmily本人をフィーチャーし、シンプルなアコースティック・サウンドをバックにソフトリーなデュエットを聴かせてくれます。従来のJose Jamesのイメージからかけ離れた雰囲気ですが、これがなかなかいいんです。
http://www.youtube.com/watch?v=jYfHrfytmgQ
「Do You Feel」
Jose James作。新進の黒人ピアニストKris Bowersをバックに従えたソウルフルなバラード。シンプルですがJoseの熱いヴォーカルとKris Bowersの感動的なピアノを満喫できます。
「Make It Right」
Jose James/Pino Palladino作。Pino Palladinoとの共作曲は再び『Voodoo』的ネオ・ソウル感覚を楽しめます。
http://www.youtube.com/watch?v=BpygNPUxjKM
「Bird of Space」
Jose James作。Jose Jamesらしい哀愁ワールドが展開される1曲。この寂しげな感じこそがJose Jamesですよね(笑)
「No Beginning No End」
Jose James/Pino Palladino/Fin Greenall/Grant Windsor/Richard Spaven作。タイトル曲はメロウ・サウンドと淡々としたJoseのヴォーカルが相俟って、いい雰囲気の音空間をクリエイトしています。
「Tomorrow」
Jose James/Amp Fiddler作。Kris Bowersのピアノとストリングスをバックにした美しいバラードで本編を締め括ってくれます。まるで祈りのようなJoseのヴォーカルが感動的です。
http://www.youtube.com/watch?v=YAyO8DspbpQ
「Come to My Door (Acoustic Version)」
ボーナス・トラック。「Come to My Door」の別ヴァージョンであり、アコギのみのバックでEmily King本人をフィーチャーしたデュエットになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=4hFYjlimrlY
国内盤にはJessica Care Mooreをフィーチャーしたボーナス・トラック「Call Our Names」が収録されています。ポエトリー・リーディング調ヴォーカルによるネオ・ソウル調の仕上がりです。
未聴の方はJose Jamesの他作品もチェックを!
『The Dreamer』(2007年)
『Blackmagic』(2010年)
Jose James & Jef Neve『For All We Know』(2010年)
また、Emily King、Hindi Zahra、Robert Glasper Experiment、Richard Spaven(Seravince)といった本作参加アーティストのアルバムもチェックすると楽しいと思います。
Emily King『East Side Story』(2007年)
Hindi Zahra『Handmade』(2010年)
Robert Glasper Experiment『Black Radio』(2012年)
Robert Glasper Experiment『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)
Seravince『Hear To See』(2012年)
また、本作に影響を与えたD'Angelo『Voodoo』(2000年)、Erykah Badu『Mama's Gun』(2000年)もこれを機に再チェックしてみては?
D'Angelo『Voodoo』(2000年)
Erykah Badu『Mama's Gun』(2000年)