
発表年:1977年
ez的ジャンル:ボサノヴァ男性コーラス
気分は... :至高のコーラスに極楽、極楽...
興味ないと言いつつ、ついつい観てしまったグラミー賞。
主要部門には最初から全く関心がなかったので、受賞結果にも特に感想はありません。
受賞結果で僕が関心を持ったのは、Best R&B AlbumのRobert Glasper Experiment『Black Radio』、Best Jazz Vocal AlbumのEsperanza Spalding『Radio Music Society』という当ブログで紹介した2枚ぐらいですかね。
Best R&B Album:Robert Glasper Experiment『Black Radio』

Best Jazz Vocal Album:Esperanza Spalding『Radio Music Society』

パフォーマンスでは、Bruno Mars/Rihanna/Sting/Damian Marley/Ziggy Marleyによる「Tribute to Bob Marley」、Elton John、Mavis Staplesらによる「Tribute to Levon Helm(The Band)」、LL Cool J、Chuck Dらによる「Tribute to Adam Yauch(Beastie Boys)」という3大トリビュートは良かったですね。あのあたりはグラミーも捨てたものではないと思いました。
それ以外ではJustin Timberlake/Jay-Z、Jack Whiteのパフォーマンスも気に入りました。
パフォーマンス・イベントとしてはそれなりに楽しいグラミーですが、音楽賞としては限界にきている気がします。これだけ音楽が多様化・細分化するなかで、包括的にSong of the YearやAlbum of the Yearを選ぶ意味合いがどれだけあるのですかね。まだアカデミー賞の方が納得感があります。
今回はグラミーとはまったく無縁のO Quarteto『Antologia Da Bossa Nova - 20 Anos Depois』(1977年)です。
O Quartetoはブラジルの男性コーラス・グループ。
その驚異的なハーモニーは男性版"Quarteto Em Cy"と称されたほどでした。
メンバーはCarlos Alberto de Lima Vianna、Walter Gozzo、Hermes Antonio dos Reis、Paulinho Palarico Correaの4名。
グループは1968年に1stアルバム『O Quarteto』、1969年に2ndアルバム『O Quarteto』をリリースしますが、その後活動を停止してしまいます。
しかし、1977年に再結成され、制作されたアルバムが本作『Antologia Da Bossa Nova - 20 Anos Depois』です。タイトルの通り、ボサノヴァ生誕20周年を記念したボサノヴァ名曲カヴァー集です。
Sergio Ricardo、Roberto Menescal/Ronaldo Boscoli、Johnny Alf、Baden Powell、Tom Jobim(Antonio Carlos Jobim)、Marcos Valle、Carlos Lyra、Durval FerreiraLuiz Bonfaといった偉大なブラジル人コンポーザーの作品を取り上げています。
O Quartetoの至極のコーラスによるボサノヴァ名曲ガイドといった趣のアルバムです。
ボサノヴァ好き、ブラジル音楽好きのみならず、The Singers Unlimitedあたりのジャズ・コーラス好きの人が聴いてもグッとくるコーラス作品だと思います。
アレンジはCesar Camargo Mariano(当時のElis Reginaの夫)が手掛けています。彼が奏でるメロウ・エレピや幻想的なシンセもアルバムの魅力を高めています。
ブラジル音楽の底力がぎっしり詰まった1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Zelao/O Nosso Olhar」
オープニングはSergio Ricardo作品の2曲。ではCesar Camargo Marianoによる幻想的なメロウ・サウンドをバックに、O Quarteto面々が美しいコーラスを聴かせてくれます。終盤のスキャットにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=WKVcYSjZOBY
「A Morte De Um Deus De Sal/O Barquinho」
Roberto Menescal/Ronaldo Boscoli作品の2曲。特に「O Barquinho(邦題:小舟)」は名曲の誉れ高い1曲ですね。そんな名曲を浮遊感のある美しいコーラスで堪能できます。
「A Morte De Um Deus De Sal」について、当ブログでBossacucanova & Roberto Menescalのヴァージョンを紹介済みです。「O Barquinho(邦題:小舟)」について、当ブログでElis Reginaの『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』、『Elis Regina in London』、『Aquarela Do Brasil』収録の3ヴァージョンを紹介済みです。
「Ceu E Mar」
Johnny Alf作品。当ブログではJoyce & Johnny Alfヴァージョンを紹介済みです。ア・カペラの出だしにグッときます。その後もCesar Camargo Marianoのメロウ・エレピをバックに、巧みなスキャットを交えたマジカル・コーラスで魅了してくれるメロウ・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=CLULT3sjYmQ
「Vou Deitar E Rolar/Deixa」
Baden Powell作品を2曲。Paulo Cesar Pinheiroが作詞した「Vou Deitar E Rolar」は、何といっても当ブログでも紹介したElis Reginaヴァージョンがお馴染みですね。当ブログではWillie Colonのカヴァーも紹介済みです。Vinicius de Moraesが作詞した「Deixa」について、当ブログではElis Regina、Sambalanco Trio、The G/9 Groupのカヴァーを紹介済みです。
僕自身Elis Reginaヴァージョンの「Vou Deitar E Rolar」が大好きなので、それも手伝ってアルバムで一番のお気に入りです。「Deixa」を挟んで再び「Vou Deitar E Rolar」に戻る構成もグッド!
「Corcovado/Insensatez/Desafinado」
Tom Jobim(Antonio Carlos Jobim)作の名曲3曲のメドレー。これはもう鉄板ですね。実にエレガントかつドラマティックな雰囲気でこの名曲メドレーを聴かせてくれます。これぞ至極のボッサ・コーラスといった趣ですね。
「Corcovado」について、当ブログではこれまでJoanie Sommers、Cannonball Adderley、Wanda Sa(Wanda De Sah)、Mario Castro-Neves & Samba S.A.、Diane Denoir/Eduardo Mateo、Earl Okin、Dardanellesのヴァージョンを紹介済みです。
「Insensatez」(Vinicius De Moraes作詞)について、当ブログではこれまでTriste Janero、Duke Pearson、Oscar Peterson、Earl Okinのカヴァーを紹介済みです。
「Desafinado」(Newton Mendonca作詞)について、当ブログではこれまでNara Leao、Roberto Menescal、Gary McFarland、Tania Maria、Os 3 Moraisのヴァージョンを紹介済みです。
「Preciso Aprender A Ser So/Samba De Verao」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作品を2曲。後者は「So Nice (Summer Samba)」の曲名で説明した方がお馴染みかもしれません。2曲ともにMarcosのオリジナルは『O Compositor E O Cantor』(1965年)に収録されています。少しミステリアスな「Preciso Aprender A Ser So」に続き、「Samba De Verao」のメロディを聴くとホッとしますね。やはり改めてエヴァーグリーンな魅力を持った名曲であることに気づかされます。そんな名曲をミラクルなハーモニーで満喫できるのは格別です。
「So Nice (Summer Samba)」について、当ブログではこれまで
『Samba '68』収録のMarcosヴァージョンをはじめ、Astrud Gilberto/Walter Wanderley Trio、Bebel Gilbertoのカヴァーを紹介済みです。
「Primavera/Maria Do Maranhao/Marcha Do Quarta-Feira De Cinzas」
Carlos Lyra作品を3曲。「Primavera」、「Marcha Do Quarta-Feira De Cinzas」はVinicius de Moraesが作詞を担当し、「Maria Do Maranhao」はNelson Lins de Barrosが作詞を手掛けています。特にCesar Camargo Marianoのメロウ・エレピとシンセによる幻想的なバックに続き披露される、ア・カペラの「Maria Do Maranhao」が絶品です。
「Oba-La-La」
Joao Gilberto作品。Joaoのオリジナルは1st『Chega de Saudade』(1959年)に収録されています。ラテン・パーカッションを効かせたアレンジでアルバムの中のいいアクセントになっています。
「Moca Flor/Tristeza De Nos Dois」
Durval Ferreira作品を2曲。素晴らしいスキャットを満喫できる「Moca Flor」から、切ないメロディを素晴らしいハーモニーで聴かせてくれる「Tristeza De Nos Dois」への流れがいい感じです。
「Moca Flor」(Lula Freire/Durval Ferreira作)について、当ブログではTamba Trio、Tamba 4、Clara Morenoのカヴァーを紹介済みです。
「Tristeza De Nos Dois」(Mauricio Einhorn/Bebeto/Durval Ferreira作)について、当ブログではTamba Trio、Tamba 4、Wanda Sa(Wanda De Sah)、Agustin Pereyra Lucenaのカヴァーを紹介済みです。
「Manha De Carnaval」
Antonio Maria/Luiz Bonfa作の名曲「カーニバルの朝」のカヴァー。ア・カペラで極上の「カーニバルの朝」を聴かせてくれます。
「Manha De Carnaval」について、当ブログではDexter Gordon、Gerry Mulligan、Balanco、Astrud Gilberto、Jack Marshall & Shelly Manne、Steen Rasmussen Feat. Josefine Cronholm、Oscar Peterson、Akua Allrich、Claude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's Seven、Diana Panton、Country Comfort、Isabelle Aubretのカヴァーも紹介済みです。
至極の男性コーラスに続き、至極の女性コーラスQuarteto Em Cyもいかが?
『Quarteto Em Cy』(1966年)

『Em Cy Maior』(1968年)

『Quarteto Em Cy』(1972年)

ありがとうございます。
そうですね。O Quartetoの驚異のコーラスとCesar Camargo Marianoの奏でる鍵盤のバランスが絶妙ですね。
こんなに素晴らしい作品を作ることができるのであれば、もっと作品を残して欲しかったですね。