発表年:1993年
ez的ジャンル:とりあえずアシッド・ジャズ
気分は... :バベルの塔を昇ると...
ここ数日の激動の中、月曜の午前中TVをつけっぱなしにしていたら、アカデミー賞の生中継が流れていた。
殆ど徹夜で頭がフラフラ状態の中、仕事を早く終わらせることに集中していたので、あまり各シーンは印象に残っていないが、助演女優賞にノミネートされた菊地凛子さんの華麗な衣装だけは思わず、TV画面を見入ってしまった。
その菊地凛子さんが出演していたのが、Brad Pittや役所広司も出演していた作品『Babel(バベル)』だ。
タイトルのバベルとは、旧約聖書の『創世記』に出てくる伝説上の巨大な塔であり、天に届く塔を建設しようとして、崩れてしまったといわれる。16世紀の画家ブリューゲルが描いた絵画が有名ですよね。
僕の場合、バベルと聞いて思い浮かべるものが2つある。
1つは、横山光輝原作の名作マンガ『バビル2世』である。
バビルの塔に住む超能力者の浩一が世界征服をたくらむ超能力者ヨミと戦う物語だ。
何と言っても、浩一を守る3つのしもべが印象的だったよね。
♪怪鳥型ロプロス空を飛べ♪ポセイドンは海を行け♪ロデム変身地を駆けろ〜♪
もう1つバベルで思い出すのが、今回紹介するUKの音楽ユニットD*Noteのデビュー・アルバム『Babel』(1993年)だ。ジャケ写真はまさにバベルの塔ですよね。
D*Noteは、UKのインディ・レーベルDoradoの設立者Matt Winn (Matt Wienevski)のユニット。1991年末にシングル「Now Is the Time」でデビューした後、1992年Doradoを設立。そこから数枚のシングルを経て、1993年にデビュー・アルバムとなる本作『Babel』を発表した。
強引にジャンル分けすると、当時のブームだったアシッド・ジャズの流れの中に位置づけられるのかなぁ。
クラブ・ジャズをベースにしつつも、Hip-Hop、ハウス、レゲエ、トリップ・ホップ、ファンク、現代音楽など当時のUKクラブ・ミュージックを独自の視点で消化している、単純にアシッド・ジャズと括れない独自の色を持ったユニットという印象が強かったね。
さらに、その後の作品ではドラムンベースも取り入れたり、ミニマル・ミュージック的な色合いも強まってきまシタ。このユニットの我が道を行くってカンジの孤高な雰囲気に、僕は惹かれたんだと思いマス。
僕が持っているのは、『Babel』(1993年)、『Criminal Justice』(1995年)、『Coming Up』(1996年)、『Coming Down』(1997年)の4枚。
でも、やっぱりこの1stのインパクトが強かったね。
アシッド・ジャズの一言では片付けられない、独自のサウンドを堪能あれ!
オススメ曲を紹介しときやす。
「Judgement」
Krazy Cool D-Zineによる攻撃的なラップがたたみかけるオープニング。その合間に入るPamela Andersonの女性ボーカルがやけに印象に残る。
「Now Is the Time」
記念すべきデビュー・シングル。Hip-Hopとアシッド・ジャズが実にスムーズに融合した名曲。このユニット独特の愁いを帯びたサウンドが実にいいカンジ。
「Aria」
Pamela Andersonの女性ボーカルをフィーチャーしたUKらしいエレガントな1曲。Matt Wienevskiのフルートがいいアクセントになっていマス。
「Rain」
3rdシングル。ハウス+アシッド・ジャズな1曲。ハウス・ビートにのって美しく響き渡るMatt Cooperのピアノが実に印象的デス。
「Bronx Bull」
実にヤバそうな臭いのする1曲。サスペンス・ドラマのBGMにピッタリなカンジですな。
「The More I See」
4thシングル。これはレゲエ・テイストの1曲。これは英国ジャマイカン・コミュニティのメッカであるブリストルにいた影響が反映された1曲。
「Pharoah」
このPharoahとは、本ブログでも何度か紹介したスピリチュアルなジャズ・サックス奏者Pharoah Sandersのことであろう。たしかにD*Noteのサウンドには、スピリチュアル・ジャズの影響を感じマス。
「The Message」
中世ヨーロッパの香りがする1曲。美しくも悲しいムードがD*Noteらしい。Matt Wienevskiのサックスが光りマス。
「Scheme of Things」
2ndシングル。この曲が一番ジャズ・テイストが強いかななぁ。ここでのラップは、英語なのにMC SolaarあたりのフレンチHip-Hopのように聴こえるから不思議だね。
「D*votion」
Matt Wienevskiのフルート大きくフィーチャーした幻想的なムードの1曲。
まさにバベルの塔を昇ろうとしているような独自の音世界を持ったアルバムですな。
人はやはりバベルの塔を建てようなんて思ってはいけないのだろうか...