発表年:1986年
ez的ジャンル:ポルトガル人女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :エキセントリックなヴォーカルの虜に...
今回はポルトガル出身の女性ジャズ・シンガーMaria Joaoが、Maria Joao Quintetとしてリリースしたアルバム『Conversa』(1986年)です。
Maria Joaoは1956年ポルトガル、リスボン生まれの女性シンガー。
Maria Joao Quintet名義で『Maria Joao Quintet』(1983年)、『Cem Caminhos』(1985年)、『Conversa』(1986年)といったアルバムをリリースしているのをはじめ、ソロ・アルバムやポルトガル人ピアニストMario Laginhaとの共演アルバム、その他アーティストとの共演アルバムをコンスタントにリリースしています。
当ブログでポルトガル人アーティストの作品を紹介するのは初めてですね。
僕の場合、ポルトガル音楽といえばファド(Fado)のイメージが強いですね。90年前後のワールド・ミュージック・ブームの際、ファドを知りましたがCDを購入し、聴き込むまでには至りませんでした。それ以来ポルトガル人アーティストを意識する機会はあまりなかったかもしれません。
その意味で、今日紹介するMaria Joaoような素晴らしい女性シンガーに遅ればせながら出会えたことは嬉しい限りです。
歌声や諸作品のジャケ写真から想像するに、"永遠のチャーミングさ"を持った翔んでる女性シンガーという印象を受けます。"ポルトガルの矢野顕子"と評したレビューもいくつか拝見しましたが、確かにそんな雰囲気かもしれません。
今回紹介する『Conversa』(1986年)はドイツのジャズレーベルNABELからリリースされた作品であり、本作用にレコーディング・メンバーを人選した模様です。
集められたメンバーはMaria Joao(vo)以下、Martin Fredebeul(as、ss、cla、fl)、Peter Walter(p、marimba、tamb)、Carlos Bica(b)、Peter Groning(ds)、Michael Kuttner(per)という編成です。
全体としてライブ・アルバムのような臨場感があるのが魅力です。何より主役のMariaのヴォーカルが実にヴィヴィッドなのがいいですね。また、ブラジリアン・フレイヴァーの演奏が多いのも本作が再評価されている要因でしょうね。
Maria Joaoのエキセントリックなヴォーカルはとにかくインパクト大です。最初は戸惑う人も繰り返し聴いているうちに、きっと虜になるはず!
全曲紹介しときやす。
「O Ronco Da Cuica/Lush Life」
Joao Bosco作の「O Ronco Da Cuica」、Billy Strayhorn作の「Lush Life」のメドレー。15分超の大作です。前半の「O Ronco Da Cuica」はスピリチュアルなエッセンスも入ったアフロ・サンバ・テイストの演奏を楽しめます。Mariaのエキセントリックなスキャットにもグッときます。続くジャズ・スタンダード「Lush Life」では一転し、しっとりとした演奏をバックに"ポルトガルの矢野顕子"的なヴォーカルを満喫できます。
「Them There Eyes」
Doris Tauber/Maceo Pinkard/William Tracey作のスタンダード。イントロはファンク調ですが、本編はスピーディーなスウィンギー〜ビ・バップ・チューンです。Mariaの軽快なヴォーカルもお見事!
「Closed System」
Peter Walter作。Mariaのキュートなスキャットが駆け巡るブラジリアン・フュージョン。ブラジリアン・フュージョン好きであれば気に入るはず!
http://www.youtube.com/watch?v=4UL3LgpZweE
「Se Eu Quiser Falar Com Deus」
Gilberto Gil作。Elis Reginaもカヴァーしていた曲ですね。Gilberto Gil自身のヴァージョンは『Luar (A Gente Precisa Ver o Luar)』(1981年)で聴くことができます。前半はCarlos Bicaのベースの素晴らしい弓さばきに魅了されます。中盤になってようやくMariaのヴォーカルが加わり、美しいジャズ・バラードを聴かせてくれます。
「A Uma Escrava Que Lhe Ocultou O Sol」
Al-Mu Tamid/Janita Salome作。中世の詩人Al-Mu Tamidの詩にポルトガル人SSW、Janita Salomeが曲をつけたもの。アラブあたりのエスニックな香りが漂うワールド・ミュージック的な仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=pbFWP5PXxfE
「Conversa」
Jose Peixoto作。ラストなミステリアスな雰囲気です。彼女の自由なヴォーカルにミステリアスな演奏がよくマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=lx7NwMH_YOQ
ご興味のある方はMaria Joao & Mario Laginhaのアルバムもチェックしてみては?
Maria Joao & Mario Laginha『Cor』(1998年)
Maria Joao & Mario Laginha『Lobos, Raposas E Coiotes』(1999年)
Maria Joao & Mario Laginha『Chorinho Feliz』(2000年)
Maria Joao & Mario Laginha『Undercovers』(2002年)
Maria Joao & Mario Laginha『Tralha』(2004年)
Maria Joao & Mario Laginha『Chocolate』(2008年)
Maria Joao & Mario Laginha『Iridescente』(2012年)