発表年:1983年
ez的ジャンル:オランダ録音系ブラジリアン・ジャズ
気分は... :Ivan Lins作品との相性が◎
今回はオランダで録音されたブラジリアン・ジャズ作品Samba Trio『Tristeza』(1983年)です。
Samba Trioは、Alfredo Silva(b、vo)、Alberto Silva(per、vo)というウルグアイ出身のSilva兄弟がJoaquim Requejo(g、vo)、紅一点のTheresa Sayas(ds)と共にスペインで結成したグループ。トリオと言いながらカルテット編成です(笑)。ちなみにSilva兄弟はスペインを活動拠点にする本国のみならずブラジルでも活動していたようです。
彼らのライブにたまたま来ていた偉大なUS女性ジャズ・シンガーElla Fitzgeraldがその演奏を気に入り、彼女の口添えでオランダのレーベルTimelessで制作された作品が本作『Tristeza』です。
オランダTimelessといえば、以前に紹介したブラジリアン・フュージョン作品Batida『Batida』(1984年)もそうでしたね。
内容はすべてブラジル音楽のカヴァーという構成になっています。ただし、ブラジル音楽に憧憬するウルグアイ人兄弟がスペインで結成したグループのオランダ録音というのが何か興味深いですね。また、Batida『Batida』のようなブラジリアン・フュージョン作品もリリースしているTimeless作品ということで、フランジャーのかかったギターの音色がフュージョン風味なのが特徴的です。
特にIvan Lins作品を3曲取り上げているのが印象的です。確かに、本作を聴く限り、彼らとIvan Lins作品の相性の良さを感じます。
彼らのブラジル音楽に対する愛情が伝わってきます。
聴いているだけで清々しい気分になれる1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Tristeza」
Haroldo Lobo/Niltinho作の名曲カヴァー。当ブログではSergio Mendes & Brasil'66、Elis Regina、Birgit Lystager、Carlos Lyraのヴァージョンを紹介済みです。個人的にも大好きな曲(僕が一番聴くのはBirgit Lystagerヴァージョンですが)なので嬉しいカヴァーです。軽快なサンバ・リズムが実に心地好いですね。
「Amelia Emilia」
「Ai! Que Saudades De Amelia」(Ataulfo Alves/Mario Lago作)と「Emilia」(Wilson Batista/Haroldo Lobo作)のカヴァー。前者は以前にTania Mariaのカヴァーも紹介済みです。しっとりした序盤から軽快なジャズ・サンバへと展開します。終盤には息の合ったコーラスワークで盛り上げてくれます。
「Chick De Ipanema」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作の名曲「イパネマの娘」をカヴァー。コーラス・ワークも含めて実に爽快なカヴァーです。また、途中でMarcos Valle作品の名曲「Samba De Verao (Summer Samba)」を挿入するサービスぶりに大満足です。
名曲「イパネマの娘」について、当ブログではTamba Trio、Agustin Pereyra Lucena、Diane Denoir/Eduardo Mateo、Roberto Menescal、Bossacucanova & Roberto Menescal、Sheila Landis/Rick Matle、Papik、Trio 3Dのカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はチェックを!
「O Pato」
Jayme Silva/Neusa Teixeira作の名曲「あひる」をカヴァー。当ブログではこれまでSergio Mendes & Brasil'66、Lennie Dale & Sambalanco Trioのカヴァーを紹介済みです。楽しげなヴォーカル&演奏で盛り上げてくれます。コーラス・グループとしての彼らを堪能できます。終盤のアヒルの鳴き声もお見事(笑)
「Chega Mais」
ブラジル・ロックの女王Rita Leeのカヴァー(Rita Lee/Roberto de Carvalho作)。オリジナルは『Rita Lee』(1979年)に収録されています。こういった曲を取り上げることでアルバム全体の構成にメリハリがつきますね。個人的にも大好きな演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=aQQ9YUhq68c
「Tres Horas Da Manha」
Ivan Lins/Waldemar Correia作。Ivan Linsのカヴァー1曲目。当ブログでは有名なTamba TrioヴァージョンやAgustin Pereyra Lucenaのカヴァーを紹介済みです。彼らとIvan Lins作品の相性の良さを感じる爽快な仕上がりになっています。
「Quadras De Roda」
Ivan Linsのカヴァー2曲目。オリジナルは当ブログでも紹介した『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)に収録されています。オリジナルも大好きな本曲が僕の一番のお気に入りです。オリジナルの雰囲気を受け継いだ小気味良いカヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=GKLbrj0_vJA
「Grito De Alerta」
Gonzaguinha作。Maria Bethania『Mel』(1979年)収録曲です。しっとり味わい深い仕上がりで聴かせてくれます。
「Aquelas Coisas Todas」
Toninho Horta作の名曲。オリジナルは当ブログでも紹介した『Terra dos Passaros』(1979年)に収録されています。また、当ブログではLuisito Quintero、Tamba Trio、Starship Orchestraのヴァージョンも紹介済みです。軽快なメロウ・グルーヴは実に心地好いですね。
「Essa Marie」
Ivan Linsのカヴァー3曲目(Ronaldo Monteiro/Ivan Lins作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Modo Livre』(1974年)に収録されている人気曲です。派手さはありませんが、この疾走感にはグッときます。
「Deve Ser Amor」
Baden Powell作。本作唯一のインスト。小気味良いジャズ・サンバで一息つく感じでしょうか。
「Vera Cruz」
ラストはMilton Nascimento作のブラジリアン・クラシックをカヴァー。当ブログではSirius B、Batidaのカヴァーも紹介済みです。ここではミステリアスな雰囲気で聴かせてくれます。
個人的には和テイストのジャケにも惹かれます。