発表年:2001年
ez的ジャンル:UK男性ソウル
気分は... :新作への期待も高まります
今回はアシッド・ジャズ期から活躍するUKソウルの男性シンガーOmarの5thアルバム『Best By Far』(2001年)です。
Omar(Omar Lye-Fook)の紹介は、デビュー・アルバム『There's Nothing Like This』(1990年)、『Sing (If You Want It)』(2006年)に続き3回目となります。
間もなく7年ぶりとなる7thアルバム『The Man』のリリースが控えているOmarですが、その前におさらいとして5th『Best By Far』を取り上げたいと思います。
3rd『For Pleasure』(1994年)、4th『This Is Not a Love Song』(1997年)を大手のRCAからリリースしたOmarでしたが、個人的には1st『There's Nothing Like This』、2nd『Music』と比較して物足りなさを感じました。アメリカのマーケットも意識するあまり、Omarらしさが少し希薄になってしまった印象を受けました。結果として、4th『This Is Not a Love Song』を最後にOmarの新作購入を止めてしまいました。
そのため、本作『Best By Far』(2001年)や次作『Sing (If You Want It)』(2006年)といった素晴らしいアルバムをリアルタイムではスルーすることになってしまいました。この2枚については後年に後追いで購入し、愛聴しています。
本作はRCAを離れ、フランスの新進レーベルNaiveからリリースされました。当ブログでも紹介したMadonna『Music』(2000年)のメイン・プロデューサーに起用され、一躍注目を集めたエレクトロ系アーティストMirwaisも所属していたレーベルがNaiveです。
大手レーベルのプレッシャーや制約から解放され、真に自分が創りたい音をOmar自身の主導で制作した印象を受けます。自らプロデューサーを務め、一部の曲で元JamiroquaiのベーシストStuart Zenderと共同プロデュースしています。
OmarらしいUKソウルがベースながら、ジャズや70年代ソウル/ファンク、60年代サントラからクラブミュージックまで時空を自由に行き来しながらOmarミュージックをクリエイトしている感じがいいですね。また、サンプリング・ネタがすべて60年代サントラというのも印象的です。
その後のOmarを方向づけるターニング・ポイントとなった1枚だと思います。
本作を聴いていると、新作『The Man』への期待も高まります。
全曲紹介しときやす。
「I Guess」
ファンキー・ホーン隊やストリングスも配したスケールの大きなファンキー・チューン。Omarらしいソウル・サウンドに70年代ニューソウルのエッセンスをスパイスとして効かせています。
http://www.youtube.com/watch?v=W4grbsAV1og
「Something Real」
2step調のリズムにファンキー・ホーンを上手く絡めた仕上がり。シングルにもなりました。クロスオーヴァー感があっていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=XJEwDttmGFY
「Essensual」
Lalo Schifrin「Room 26」(Steve McQueen主演、映画『Bullitt』サントラ収録) のオルガンをサンプリングしたジャジー・ソウル。最近オルガン・ソウル・ジャズを聴く頻度が高い僕の嗜好にフィットします。
http://www.youtube.com/watch?v=bQrdy6a-IcM
「Be Thankful」
当ブログでも紹介したWilliam DeVaughnのソウル・クラシック「Be Thankful For What You Got」のカヴァー。当ブログではMassive Attack、Fingazz、Donald McCollumのカヴァーも紹介済みです。ここではErykah Baduとのデュエットで、OmarらしいUKソウルに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=w458aTECqEk
本曲にはAngie Stoneをフィーチャーしたヴァージョンもあります。本ヴァージョンと比較するとトライバル感があるサウンドが印象的です。僕が保有する国内盤には未収録ですが、輸入盤にはAngie Stoneヴァージョンも収録されているものもあります。
http://www.youtube.com/watch?v=euCCX4osKgs
Omar Feat. Angie Stone「Be Thankful」
http://www.youtube.com/watch?v=euCCX4osKgs
「Best By Far」
タイトル曲はジャジー&ダビーな仕上がり。こういった音はNaiveのようなレーベルだから創れる音かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=tyQDDs9ZVKI
「To The Top」
キャッチーなヴォーカル・アレンジにグッとくるネオソウル調の仕上がり。本作におけるOmarの好調ぶりを実感できる1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=hwcp0cMSlfo
「Goodness」
「Essensual」に続きLalo Schifrin作品のオルガンをサンプリングしたインタールード。
http://www.youtube.com/watch?v=8fUTDJtyPmk
「Prologue」
ストリングスによるインタールード。
「Tell Me」
ムーグ・シンセの刺激的な音色とエレガントなストリングスのコントラストがいい感じのソウル・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=tR6-2aAW59g
「Syleste」
ダブルベース、バス・クラリネットが印象的なジャジー・ソウル。ジャズ・アーティスト作品にOmarが客演しているような雰囲気です。Bacharach作の名曲「I Say A Little Prayer」のフレーズも引用しています。
http://www.youtube.com/watch?v=yW2GpNeNZs8
「Come On」
UKの女性R&BシンガーKele Le Rocをフィーチャー。ブリブリのベースラインが効いているソウル・チューン。なかなかパンチのある1曲に仕上がっていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=boLGFfnCZDg
「Emporium」
変態チックなシンセの音色にグッときます(笑)。こういう雰囲気もOmarらしいですよね。
http://www.youtube.com/watch?v=vtRaitcAmsw
「In The Morning」
John Barry「Midnight Cowboy」(映画『Midnight Cowboy』のサントラ)をサンプリングしたソウル・バラード。
http://www.youtube.com/watch?v=0sSPYg3ZYAw
「Syleste (Lounge Lizzard Mix)」
「Syleste」のリミックス。ラウンジ感のあるスタイリッシュなリミックスです。
http://www.youtube.com/watch?v=KSev0sIGtG0
国内盤にはさらにボーナス・トラックとして「Something Real (10 Degrees Below Vs X-Men Radio Mix)」が収録されています。
輸入盤の場合、収録曲や曲順の異なるものがいくつかあるので、内容をきちんと確認した方がいいと思います。
『There's Nothing Like This』(1990年)
『Sing (If You Want It)』(2006年)