発表年:1971年
ez的ジャンル:女流Baden Powell系ギタリスト
気分は... :凛とする!
"女流Baden Powell"とも呼ばれたブラジル人女性ギタリストRosinha De Valencaが1971年にリリースした『Um Violao em Primeiro Plano』です。
ボサノヴァ・ギターの最高峰Rosinha De Valencaの紹介は、『Cheiro De Mato』(1976年)に続き、2回目となります。また、Wanda de SahやSergio Mendesと共演した『Brasil '65』も紹介しています。
本作『Um Violao em Primeiro Plano』(1971年)には、いくつかの特徴があります。1つ目はRosinhaが凄腕ギターのみならず、ヴォーカルも数多く披露してくれている点です。決して、上手いわけではなりませんが、キュートな歌声を聴くと嬉しくなってしまいます。
2つ目は、当時のブラジル軍事政権下でロンドン亡命中であった
Caetano VelosoやGilberto Gilの楽曲を積極的に取り上げている点です。
それ以外にも、ファンクやロックのエッセンスを取り入れた楽曲や、スパニッシュ・モードの演奏、女流Baden Powellらしいギターを満喫できる楽曲などさまざまな聴き所があります。
Rosinha De Valencaというアーティストの心意気や飽くなき探求心を実感できる1枚です。
凛としてギターを構えるジャケのRosinhaの表情がいいですね!
全曲紹介しときやす。
「Aza Branca」
Humberto Teixeira/Luiz Gonzaga作。素晴らしいギター・ソロに続き、男女ヴォーカルが重なる美しい展開から、リズム隊やホーン隊も加わったファンク・ロックへ一転します。そして、再び美しいギターの響きが・・・この時代らしい演奏を楽しめます。
「London, London」
ロンドン亡命時のCaetano Veloso作品をカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Caetano Veloso』(1971年)収録されています。また、当ブログではAlexia Bomtempoのカヴァーも紹介済みです。あえて亡命者であるCaetanoの作品を取り上げるあたりに、Rosinhaの心意気を感じます。ストリングスやマリンバも加わったエレガントな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=62ca1nCcKnk
「Mudei De Ideia」
Antonio Carlos e Jocafiのカヴァー。Antonio Carlos e Jocafiのオリジナルは『Mudei De Ideia』(1971年)に収録されています。当ブログではOsmar Militoのカヴァーも紹介済みです。Rosinhaのキュートなヴォーカルを聴くことができるボッサ・グルーヴに仕上がっています。
「Zanzibar」
Edu Loboの名曲カヴァー。オリジナルは『Cantiga de Longe』(1970年)に収録されています。また、当ブログではEarth,Wind & Fire、Steen Rasmussen Feat. Josefine Cronholm、Ronald Mesquitaのカヴァーも紹介済みです。フロア・キラー・チューンとしてお馴染みの名曲をRosinhaの格好良いギターが奏でます。本ヴァージョンもスリリングでかなりいいですね。もっと長尺で聴きたいです!
「Boi Ta-Ta」
Eugenio Malta/Messias Dos Santos作。Rosinhaのヴォーカルを前面に押し出したポップな仕上がり。親しみやすいメロディと素朴なヴォーカルの組み合わせが和みます。
http://www.youtube.com/watch?v=Vz4UxPE2VWk
「Marinheiro」
Caetano Velosoヴァージョンでお馴染みのトラディショナル・ソング。当ブログではSergio Mendes & Brasil '77、Caetano Velosoヴァージョンの影響を受けているものと思われます。ブラジルらしいエッセンスを織り込んだフォーキーかつリズミックなアプローチがいいですね。
「Summertime」
DuBose Heyward/George Gershwin作。Gershwin作の有名スタンダードをカヴァー。女流Baden Powellならではの「Summertime」を聴かせてくれます。お見事!
http://www.youtube.com/watch?v=qiQlDXNcb3s
名曲「Summertime」に関して、当ブログではJohn Coltrane、Big Brother & The Holding Company、Gabor Szabo、Dinah Washington、Essra Mohawk、Lambert, Hendricks & Ross、Sheila Landis/Rick Matle、Fred Johnsonのカヴァーを紹介済みです。ご興味がある方はそちらの記事もご参照下さい。
「De Conversa Em Conversa」
Harold Barbosa/Lucio Alves作のサンバ名曲。当ブログではJoao Gilbertoのカヴァーも紹介済みです。キュート&メロウなサンバ・チューン。Rosinhaのナチュラル・ヴォーカルもよくマッチしています。
「One O'Clock Last Morning」
Gilberto Gil作。オリジナルは当ブログでも紹介した『Gilberto Gil』(1971年)に収録されています。Caetano Velosoと同じく、亡命中のロンドンで録音したGilberto Gil作品を取り上げるあたりに大きな意味があったのだと思います。女流Baden Powellらしいギター・プレイを存分に堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=os7Dsa2YTLs
「Samba Da Minha Terra」
Dorival Caymmi作。当ブログではTamba Trioのカヴァーも紹介済みです。開放的なサンバのリズムがキュートなRosinhaのヴォーカルと共に心地好く響きます。メロウ・サンバ好きの僕には嬉しい1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=-wIA5Z5zyUs
「Concierto De Aranjuez」
スペインの作曲家Joaquim Rodrigo Vidreによるクラシック・ギター協奏曲「アランフェス協奏曲」をカヴァー。スパニッシュ・モードで哀愁のメロディを奏でます。
http://www.youtube.com/watch?v=nwjy8ZLTX1o
「Tema Espanhol」
Rosinha De Valenca作。ラストのオリジナル曲も前曲に続き、スパニッシュ・テイストです。闘牛場にいるかのような、美しく情熱的なギターを満喫できます。ギタリストとしてのRosinhaの腕前を存分に堪能できます。
Rosinha De Valencaの他作品もチェックを!
Wanda de Sah featuring The Sergio Mendes Trio With Rosinha De Valenca 『Brasil '65』(1965年)
『Apresentando Rosinha de Valenca』(1964年)
『Rosinha de Valenca』(1973年)
『Rosinha de Valenca e Banda ao Vivo』(1975年)
『Cheiro De Mato』(1976年)
Sivuca & Rosinha de Valenca『Gravado Ao Vivo』(1977年)