
発表年:2008年
ez的ジャンル:奇才トラックメーカー系ブラジリアン・フュージョン
気分は... :ブラジル、これは悪夢か・・・
サッカーW杯「ブラジル対ドイツ」が前半終了。
勝負は後半なんて思いながら、のんびりモードで見ていたら、あっという間のドイツ5得点・・・信じられない悪夢に泣き出してしまうブラジル人サポーターに同情してしまいます。
今回は奇才トラックメーカーMadlibとブラジルの人気グループAzymuthのドラマーIvan "Mamao" Contiのコラボ作品Jackson Conti『Sunjinho』(2008年)です。
Madlib(本名Otis Jackson Jr.)作品の紹介はTalib Kweliとのコラボ・アルバム『Liberation』(2007年)、Blue Note音源のリミックス/リメイク集『Shades Of Blue』(2003年)、Quasimoto名義の『Yessir, Whatever』(2013年)に続き3回目となります。
また、Ivan Contiが属するブラジルの人気グループAzymuthについては、デビュー・アルバム『Azimuth』(1975年)を紹介済みです。
Jackson Contiというユニット名は2人の名前を合わせたものです。
Madlibのブラジル音楽への憧れを具現化した作品という印象です。お馴染みのブラジル名曲の数々をIvan Contiの力を借りながら、Madlibらしい解釈で再構築しています。それ程モロにHip-Hopしている曲はないので、ブラジル音楽好きの人であれば、スンナリ聴けると思います。
僕が所有するCDは上記ジャケですが、下記のジャケの盤もあるようです。
Jackson Conti『Sunjinho』 ※別ジャケット

全曲紹介しときやす。
「Mamaoism」
Ivan Contiのドラミングによるアルバムのプロローグ。
「Barumba」
Luiz Eca/Bebeto作。Tamba Trioのカヴァー。オリジナルは『Tempo』(1964年)に収録されています。小粋なジャズ・サンバ名曲をパーカッシヴなアフロ・サンバ調のカヴァーで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=MsTeEz6qKwU
「Anna de Amsterdam (Interlude)」
Chico Buarque作品を使った軽快なインタールード。オリジナルは『Chico Canta』(1973年)に収録されています。
「Praca da Republica」
アルバムの中でも人気の1曲なのでは?クロスオーヴァー好きの人が気に入りそうなコズミック・フュージョンです。キレの良い疾走感がグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=x1AhFX3rdKU
「Papaya」
AzymuthのベーシストAlex Malheiros(Sabrina Malheirosの父親)の作品。オリジナルはAlexのソロ・アルバム『Atlantic Forest』(1985年)に収録されています。爽快メロウ・フュージョンであったオリジナルに対して、本ヴァージョンはコズミック&アブストラクトな雰囲気が漂います。MadlibとAzymuthがうまく融合しているグッド・トラックだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=vnzGjMGaUNU
「Brasilian Sugar」
George Duke作。Flora Purimをフィーチャーしたオリジナルは『A Brazilian Love Affair』(1979年)に収録されています。ここではIvan Contiのエキサイティング・ドラムに続き、オリジナルの雰囲気を受け継ぎつつMadlibらしいスパイスを効かせています。
http://www.youtube.com/watch?v=aENlN4YfYME
「Sao Paulo Nights」
本作らしいコズミック・フュージョンなサウンドを堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=Oo8QHGWHvaw
「Xibaba」
Airto Moreiraの名曲。オリジナルは『Natural Feelings』(1970年)に収録されています。当ブログでは少し前にGilles Petersonのブラジリアン・オールスター・プロジェクトSonzeiraのカヴァーを紹介したばかりです。それ以外にDonald Byrd、Cal Tjaderのカヴァーを紹介済みです。ここでカラフルな軽快感のある「Xibaba」を楽しめます。
「Upa Neguinho」
Edu Lobo/Gianfrancesco Guarnieri作。Edu Loboの名曲をカヴァー。当ブログでは『Edu E Bethania』収録の本人のヴァージョンやElis Regina、Le Trio Camaraのカヴァーを紹介済みです。ここではシャープなドラムが主役の「Upa Neguinho」を聴くことができます。ブラジル音楽とジャズとHip-Hop的エッセンスが融合した本作らしい仕上がりなのでは?
「Casa Forte」
Edu Loboの名曲をカヴァー。当ブログではEdu Loboのオリジナル、Elis Regina、Sergio Mendes & Brasil '66、Isabelle Aubret、Heraldo Do Monte、Banda Black Rioのカヴァーを紹介済みです。このミステリアスな名曲を軽快なアッパー・チューンで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=Xh8Duss1R4c
「Amazon Stroll」
リズミカルで歯切れの良いトラックで一気に駆け抜けます。
「Berimbau」
Vinicius de Moraes/Baden Powell作のアフロ・サンバ名曲をカヴァー。アフロ・サンバ色をより強くしたカヴァーではなく、コズミック&エレガントなカヴァーにするあたりが心憎いですね。
本曲については、当ブログでLennie Dale、Diane Denoir/Eduardo Mateo、Agustin Pereyra Lucena、Sambalanco Trio、Nara Leao、Felicidade A Brasil、Gary McFarland、Kenny Rankin、Le Trio Camara、Trio 3D、Wanda de Sah featuring The Sergio Mendes Trio With Rosinha De Valenca のカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はそちらの記事もご参照下さい。
「Anna de Amsterdam (Reprise)」
「Anna de Amsterdam」のリプライズ。小出しにするなら、きちんと長尺で聴きたい(笑)
「Waiting On The Corner」
Humberto Teixeira/Sivuca作。オリジナルはDom Um Romao『Spirit Of The Times (Espirito Du Tempo)』(1975年)に収録されています。個人的にはアルバムの中でもかなりお気に入りの1曲。Madlibが手掛けるブラジリアン・フュージョンらしいサウンドに仕上がっている気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=4uofs-9sVIg
「Tijuca Man」
インタ―ルード的なパーカッシヴ小曲。
「Nao Tem Nada Nao」
Marcos Valle作。オリジナルは『Previsao Do Tempo』(1973年)に収録されています。Marcos Valleのメロウ作品を、ここではよりパーカッシヴかつコズミックに聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=4wClExQ0qGM
「Sunset At Sujinho」
エンディング前の小休憩といった感じのフュージョン調小曲。
「Segura Esta Onda」
ラストは表情が次々と変わるブラジル音楽絵巻といったサウンドで楽しませてくれます。
Azymuth、Madlibの過去記事もご参照下さい。
Azymuth『Azimuth』(1975年)

Madlib『Shades Of Blue』(2003年)

Talib Kweli & Madlib『Liberation』(2007年)

Quasimoto『Yessir, Whatever』(2013年)
