発表年:2014年
ez的ジャンル:Jazz The New Chapter系新進ジャズ
気分は... :ジャズの新潮流をどう聴くか!
今回は新作ジャズ作品の中から、今年話題の"Jazz The New Chapter"の流れを汲む1枚、Gideon Van Gelder『Lighthouse』です。
2日前に、Robert Glasper以降の"進化するジャズ"を紐解いた音楽ムック本『Jazz The New Chapter』について触れましたが、本作はそんな流れに呼応したかのような素晴らしいジャズ作品に仕上がっています。
Gideon Van Gelderはオランダ出身、現在N.Y.在住の新進ジャズ・ピアニスト。かつてはJose Jamesのバンドにも在籍していました。
2010年に1stアルバム『Perpetual』をリリースして一部から高い評価を得ましたが、2ndとなる本作『Lighthouse』は、進化するジャズが広く認知された今日、進化形ジャズを象徴する1枚として前作以上の高い支持を受けるでしょう。
Gideon Van Gelderと共にJose James等も手掛けたBrian Benderを共同プロデューサーに迎えています。
レコーディング・メンバーは、Gideon Van Gelder(key)、Becca Stevens(vo)、Lucas Pino(sax、cl)、Rick Rosato(b)、Jamire Williams(ds)という5名。Jamire Williams以外は前作『Perpetual』と同じメンバーです。
Jazz The New Chapterの文脈でいえば、Becca StevensとJamire Williamsに注目ですね。
Becca Stevensは、Jazz The New Chapter系の新進ジャズ・ミュージシャンから圧倒的に支持されている女性ヴォーカリスト/SSWです。当ブログで紹介した作品であれば、Esperanza Spalding『Radio Music Society』(2012年)、Jose James『While You Were Sleeping』(2014年)に参加しています。
『Jazz The New Chapter』では、彼女のアルバム『Weightless』(2011年)を"『Black Radio』級の重要作"と褒めちぎっています。僕も最近になって『Weightless』を購入し、愛聴しています。
Jamire Williamsは、『Jazz The New Chapter』でも注目のドラマーとして度々名前が登場した気鋭のジャズ・ドラマーです。注目のトランペット奏者Christian Scottのサイドメンとしても活躍しています。『Jazz The New Chapter』でも指摘されている通り、ドラムの進化こそが新たなジャズの潮流を生み出している1つの大きな要因ですからね。
本作『Lighthouse』は、気鋭ドラマーJamire Williamsの起用が頷ける刺激的なリズムの「動」の演奏と、Toninho Horta、Milton Nascimentoといったブラジル、ミナス系ミュージシャンのカヴァーをはじめとする繊細で美しい「静」の演奏に大別されます。1枚の中で2つの対照的な音世界を楽しめるのがいいですね。
僕が本作を購入した要因は、前者の刺激的なリズムの演奏なのですが、聴き重ねてくると、後者のような演奏も進化形ジャズとAntonio Loureiro等のブラジルの気鋭ミュージシャンや静かなる音楽との接点のようなものが見えてきて惹き込まれています。
思ったほどBecca Stevensのヴォーカルが目立っていないのが玉にきずですが、それでもReturn To ForeverにおけるFlora Purimのような存在感があります。
ブラジル人ミュージシャンのカヴァー以外はGideon Van Gelderのオリジナルです。
進化するジャズを楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「Victory Joy Dance」
Jamire Williams参加の効果が顕著に表れたオープニング。刺激的なビートにのって、Gideon Van GelderのエレピやLucas Pinoのサックスも躍動します。まさにJazz The New Chapter的なジャズ・グルーヴではないかと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=sVFAFMZMBIU
「As Night」
Gideon Van Gelderの美しいピアノを堪能できる1曲。Lucas Pinoのクラリネットと微かに響くBecca Stevensのコーラスがナイト・ムードを高めてくれます。
「Visions」
この演奏も実にJazz The New Chapter的です。Gideon Van GelderのピアノとJamire Williamsの叩くビートのがっぷり四つの組み合いを存分に楽しめます。中間部のBecca Stevensのコーラスがコーヒーブレイク的で癒されます。
「Moonstone」
ブラジル、ミナス出身の人気ギタリストToninho Hortaの名曲をカヴァー。オリジナルは『Moonstone』(1989年)に収録されています。清らかなGideon Van Gelderの鍵盤の音色に魅了されます。
「Interlude」
「Visions」のリプライズによる短いインタールード。
「Pier//Cais」
Milton Nascimento作。ミナスの香りと現代ジャズの融合といったところでしょうか。『Jazz The New Chapter』でも紹介され、当ブログでも2ndアルバム『So』(2012年)を紹介したブラジルのマルチ奏者/コンポーザーAntonio Loureiroあたりと一緒に聴きたくなります。
「Glant」
Rick RosatoのベースとJamire Williamsのドラムによるスリリングなリズムにグッときます。Jamire Williamsのドラミングはやはり格好良い!そのリズムに煽られ、Gideon Van Gelderのピアノも実にエキサイティングです。
「Orbit」
南米の"静かなる音楽"の諸作と一緒に聴きたくなる美しい1曲。Gideon Van Gelderの繊細なピアノ・タッチに魅了されます。
「As Night - Reprise」
「As Night」のリプライズで美しい余韻に浸りながらアルバムは幕を閉じます。
『Perpetual』(2010年)
記事の中に出てきたBecca Stevens『Weightless』(2011年)についても近いうちに紹介したいと思います。
Becca Stevens『Weightless』(2011年)