2014年09月07日

Richard Spaven『Whole Other』

UK敏腕ドラマーによる話題の進化形ジャズ・アルバム☆Richard Spaven『Whole Other』
ホール・アザー
発表年:2014年
ez的ジャンル:進化形ジャズ系敏腕ドラマー
気分は... :これぞ今ジャズ・・・

今回はUKの敏腕ドラマーRichard Spavenの最新作『Whole Other』です。

先週のGideon Van Gelder『Lighthouse』に続き、話題の音楽ムック本"Jazz The New Chapter"の流れを汲む、進化形ジャズ・アルバムです。

Richard Spavenは、Mark De Clive-Lowe4HeroJose JamesFlying Lotus等の作品に参加している人気ドラマーです。

これまでRichard Spavenについては、オランダ人プロデューサー/キーボード奏者Vincent Helbersらと組んだクロスオーヴァー・ユニットSeravinceのアルバム『Hear To See』(2012年)を当ブログで紹介済みです。

また、今年当ブログで紹介した新作アルバムでいえば、Ruth Koleva『Ruth』Jose James『While You Were Sleeping』といった話題作でSpavenが大きく貢献しています。

"Jazz The New Chapter"で示されたように、Robert Glasper以降の進化形ジャズの中核を成すのがドラムです。J Dilla以降のリズム感覚を持つChris DaveMark ColenburgJamire WilliamsKendrick ScottMark GuilianaMarcus Gilmoreらが新世代ドラマーの代表格ですが、Richard Spavenもそうしたドラマーの一人です。

彼が大きく関与したSeravince『Hear To See』(2012年)やRuth Koleva『Ruth』(2014年)を聴けば分かるとおり、新世代ドラマーの中ではクラブミュージック/クロスオーヴァー寄りのアプローチも目立つアーティストですよね。その分、僕などはUSジャズ・ミュージシャンなどよりも、とっつきやすいのかもしれません。

そんなRichard Spavenの最新作『Whole Other』は、進化形ジャズの流れを汲むと同時に、トータルなサウンド・クリエイター的な才覚も持つSpavenらしいジャンル横断的な幅広い音楽性を堪能できます(Richard Spaven本人によるプロデュース)。また、2/3の楽曲がベースレスの演奏なのも新世代ドラマーらしいのでは?

レコーディングには、Richard Spaven(ds)以下、Spavenと同じくJose Jamesのバンドで活動する日本人トランぺッターTakuya Kuroda(黒田卓也)(tp)、Spavenがアルバム・プロデュースも手掛けたオランダの新感覚ジャズ・ユニットFinn Silverの女性リード・ヴォーカルFridolijn van Poll(vo)、Gilles Petersonも注目する、ロンドンを拠点に活動するRoxane DayetteとSam Paul EvansによるユニットThe Hics(vo)、The Cinematic OrchestraのギタリストStuart McCallum(g)、Zero 7等のレコーディングに参加しているRobin Mullarkey(b)、Jose James『No Beginning No End』(2013年)にも参加していたGrant Windsor(el-p)、DegoSunlightsquare、Bah Samba、Bugz In The AtticSeravince等の作品でフィーチャーされているUKクラブミュージック/クロスオーヴァー好きの人であればお馴染みの女性ヴォーカリストSharlene Hector(vo)、Ben Edwards(flh)、Graeme Blevins(fl)、、Danny Fisher(g)、Dave Austin(g)、そしてL.A.ビート・ミュージックの奇才Kutmahといったミュージシャンが参加しています。

進化形ジャズとクラブミュージック/クロスオーヴァーを股に掛けるRichard Spavenが叩き出す、今のリズム、サウンドに耳を傾けましょう。

全曲紹介しときやす。

「Assemble (Intro)」
Richard Spaven/Stuart McCallum作。Spavenの叩くリズム、黒田卓也のトランペット、Fridolijn van Pollのエコーのようなヴォーカルがコズミックな音空間を築します。

「Whole Other」
Richard Spaven/Stuart McCallum/Sam Paul Evans/Baker作。The Hics(Roxane Dayette/Sam Paul Evans)をフィーチャー。進化形ジャズらしいSpavenのドラミングを堪能できます。進化形ジャズとUKフューチャー・ジャズの境のようなサウンドを目指すあたりがSpavenらしいのでは?ある意味、本作のハイライトだと思います。

「Taj」
Richard Spaven/Grant Windsor/Graeme Blevins作。タイトルからしてエスニックの香りがする、進化形ジャズ・ミーツ・ワールドミュージックといった趣の演奏です。トータルなサウンド・クリエイターとしてのSpavenのセンスを感じます。

「SideIISide」
Richard Spaven/Sharlene Hector/Graeme Blevins作。Sharlene Hectorがミステリアスなヴォーカルを聴かせてくれます。日本が誇るジャズ・ミュージシャン菊地成孔氏が進化形ジャズのリズムを"第二次ドラムンベース"と称していますが、それを実感できる演奏になっています。特にUKフューチャー・ジャズ/クラブミュージックとの接点も多いSpavenの演奏だと"第二次ドラムンベース"という表現がとてもしっくりきますね。

「Tribute」
Richard Spaven/Stuart McCallum作。SpavenのドラムとMcCallumのギターが織り成すダウンテンポで幻想的な音空間を堪能できます。

「The Look Out」
Richard Spaven/Stuart McCallum作。微かに聴こえてくるFridolijn van Pollの女性ヴォーカルが独特の雰囲気を醸し出す美しい演奏です。作者Stuart McCallumの曲「Indigenous」をサンプリング。

「Bianca」
Egberto Gismonti作。本作唯一のカヴァーがブラジルの奇才アーティストEgberto Gismontiの作品というところにSpavenの持つ広い音楽性が窺えます。ここではDanny FisherとDave Austinによるアコースティック・ギターをメインに据え、Spavenはプロデューサーとしてトータルなサウンドに重きを置いているようです。

「Closure」
Kutmah/Richard Spaven作。L.A.ビート・ミュージックの重要人物Kutmahとのコラボ。進化形ジャズを聴くうえで、L.A.ビート・ミュージックとの接点というのも注目ポイントの1つですが、本曲はまさにそんな流れを象徴するコラボです。特にUKフューチャー・ジャズ/クラブミュージックとも近いSpavenがL.A.ビート・ミュージックとどう融合するのか?という意味で実に興味深く聴くことができました。

「Speedbird」
Richard Spaven/Stuart McCallum作。ラストはフューチャー・ジャズ/ダウンテンポな雰囲気で締め括ってくれます。

ご興味がある方は、Seravince『Hear To See』やRichard Spavenの関与が大きいRuth Koleva『Ruth』もチェックを!

Seravince『Hear To See』(2012年)
ヒア・トゥ・シー

Ruth Koleva『Ruth』(2014年)
ルス
posted by ez at 02:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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