2014年09月09日

Slum Village『Fantastic, Vol. 2』

故J Dillaが創り出したHip-Hopの金字塔☆Slum Village『Fantastic, Vol. 2』
Fantastic vol.2
発表年:2000年
ez的ジャンル:J Dilla系Hip-Hop
気分は... :全米オープン決勝、イルカ軍団快勝、『Jazz The New Chapter 2』・・・

テニスの全米オープン決勝、NFL開幕戦でドルフィンズが白星スタート、話題の音楽ムック本の続編『Jazz The New Chapter 2』の発売・・・今日は書きたいことが山ほどあるのですが・・・

とりあえず『Jazz The New Chapter 2』から・・・

新しいジャズの潮流を紐解いた話題の音楽ムック本『Jazz The New Chapter』の続編『Jazz The New Chapter 2』が昨日発売となりました。

『Jazz The New Chapter 2』
Jazz The New Chapter 2 (シンコー・ミュージックMOOK)
『Jazz The New Chapter〜ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』
Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)

『Jazz The New Chapter』では、Hip-Hop、ネオソウル、LAビート・ミュージック、インディー・ロック、ポストロック、ワールドミュージック等のさまざまなジャンルと融合するRobert Glasper以降の"進化するジャズ"の地図が示されました。

『Jazz The New Chapter 2』は、パート1の追加・補完的な内容であり、ご興味がある方は2冊セットで読むと楽しいと思います。僕も早速購入し、ざっと目を通しましたがTaylor McFerrin『Early Riser』Gideon Van Gelder『Lighthouse』Richard Spaven『Whole Other』といった当ブログで紹介した新作ジャズ作品がきっちりフォローされておりニンマリしています(笑)

新作以外にもJazz The New Chapterの流れで紹介したい作品が我が家のCD棚にかなり溜まってきているので、今月はJazz The New Chapter強化月間として、関連する作品を集中的に紹介したいと思います。と言っても、ジャズ作品ばかり紹介するわけではなく、進化するジャズに影響を与えた作品や、ジャンル融合的な作品も紹介していきます。

まず第1弾として、"進化するジャズ"に大きな影響を与えたHip-HopクラシックSlum Village『Fantastic, Vol. 2』(2000年)です。

Slum Villageは、ご存知の通り故J Dilla(1974-2006年)が在籍していたHip-Hopグループです。J Dilla(当時はJay Dee)がT3Baatinという高校の仲間と1988年にデトロイトで結成しました。

A Tribe Called QuestQ-Tipと出会い、その才能を認められたJay Deeは、The Pharcyde『Labcabincalifornia』(1995年)のプロデュースを皮切りに、プロダクション・チームThe Ummahでの活動などで、その名がシーンで知られるようになります。さらに、2000年代のR&B/Hip-Hopの流れを決定づけた音楽コレクティヴThe Soulquariansのメンバーとなり、絶頂期を迎えることになります。

その傍らでSlum Villageとして『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』(1996年)、『Fantastic, Vol. 2』(2000年)といったアルバムをリリースしています。その後、ソロ活動に専念するためJ Dillaはグループを脱退しています。

『Jazz The New Chapter』に話を戻すと、"進化するジャズ"の中心人物は『Black Radio』(2012年)で音楽シーンに衝撃を与えたRobert Glasperですが、そのGlasperをはじめとする進化形ジャズ・ミュージシャンに大きな影響を与えたのがJ Dillaです。

極端な言い方をすれば、J Dillaのトラックを聴いたことがない人に、"進化するジャズ"の面白さは理解できないというのが『Jazz The New Chapter』のスタンスですからね。

『Jazz The New Chapter』には、J Dillaを代表する1枚として、彼もプロデュースで参加したCommon『Like Water For Chocolate』(2000年)が挙げられていました。

J Dilla作品を未聴の方がいれば、『Like Water For Chocolate』あたりから入るのもいいかもしれませんが、そこをパスしたならば、次の作品としてチェックして欲しいのがSlum Village名義の本作『Fantastic, Vol. 2』(2000年)です。

やはり、J DillaのホームグループであるSlum Villageの作品をチェックしておきたいですよね。『Like Water For Chocolate』以上に、J Dillaの独自性を満喫できるはずだと思います。

1997〜1998年頃にレコーディングされた本作には、Q-TipD'AngeloといったThe Soulquariansの仲間や、Pete RockJazzy JeffBusta RhymesKuruptといったゲストを迎えています。

何の予備知識なしに聴いても、J Dillaという不世出の天才が創り上げたHip-Hopの1つの金字塔的作品として楽しめるはずです。

さらにRobert Glasperの諸作を聴いたうえで、Jazz The New Chapter的な観点から聴くと、さらに楽しみが増す1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
時計の目覚ましの音と共にアルバムはスタートします。終盤の声ネタはA Tribe Called Quest「Butter」です。
https://www.youtube.com/watch?v=Sp0q-LqBR94

「Conant Gardens」
Little Beaver「A Tribute to Wes」ネタのベース・ラインのループを使いながら、J Dillaらしいビートを響かせます。A Tribe Called Quest「Award Tour」の声ネタ、終盤には『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』収録の「Keep It on (This Beat)」も声ネタもサンプリングされています(これ自体James Brown「Make It Funky」ネタですが)。
https://www.youtube.com/watch?v=rNW32tg-mbU

「I Don't Know」
Jazzy JeffのスクラッチをフィーチャーしたHip-Hopクラシック。J Dillaらしい独自の揺らぎのあるビートはBaden Powell「E Isso Ai」ネタのメロウなループとよくフィットして実に心地好いですね。Jazzy Jeffの擦りもいい感じです。James Brownの声ネタが配されています。
https://www.youtube.com/watch?v=rXd5ZXTjStA

「Jealousy」
Bill Evans「Are You All the Things」のエレピ・ネタが心地好く弾みます。
https://www.youtube.com/watch?v=rkdVhMIxkF4

「Climax (Girl Shit)」
Isao Tomita「Clair De Lune」ネタの浮遊するメロウ・トラックが絶品です。揺らぎのあるビートの威力発揮ですね。Steve Miller Band「Space Intro」もサンプリングしています。
https://www.youtube.com/watch?v=-p16_e_x7c4

「Hold Tight」
Q-Tipをフィーチャー。KC & the Sunshine Band「What Makes You Happy」ネタのループと共にスタート。さらにはThe Cannonball Adderley Quintet「Experience in E」ネタのサンプリングがミステリアスな雰囲気を醸し出します。J DillaQ-Tipとのタッグは、さらにQ-Tipの初ソロ『Amplified』へと続いていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=3FQLgD_8wcs

「Tell Me」
D'Angeloをフィーチャー。D'Angeloの持つグルーヴ感覚とJ Dillaの持つビート感覚が融合したThe Soulquarians屈指のコラボですね。
https://www.youtube.com/watch?v=q4NikHEU6Ww

「What It's All About」
Busta Rhymesをフィーチャー。Alicia Myers「Don't Stop What You're Doin'」ネタのメロウ・ダンサーな上モノ、J Dillaのビート、Bustaのダミ声フロウの組み合わせは実にキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=mKvSQzwlJuQ

「Forth and Back」
Kuruptをフィーチャー。Kuruptの客演は少し意外な気もします。Tom Browne「Funkin' For Jamaica」ネタの重心が低くアブストラクト感のあるトラックが印象的です。Kool & the Gang「Jungle Boogie」の声ネタやHerbie Hancock「I Thought It Was You」、Crown Heights Affair「Far Out」ネタも軽く入っています。
https://www.youtube.com/watch?v=znQxLCp-Rsk

「Untitled/Fantastic」
前半の「Untitled」は何の予備知識もなく聴くと、ATCQの楽曲と思い込んでしまいそうですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0BOJH-G0T3I

当ブログでも度々その名前が登場すると同時に、Build An ArkやFlying Lotus等の作品に参加し、『Jazz The New Chapter 2』でも特集が組まれていた弦楽器奏者Miguel Atwood-Fergusonがオーケストラを従え、本曲をカヴァーしています。これ自体が進化するジャズにおける本作やJ Dillaの影響力を象徴していますね。

「Fall in Love」
Gap Mangione「Diana in the Autumn Wind」をサンプリングするあたりにJ Dillaのセンスと音楽IQの高さを感じます。ビートはIron Butterfly「Soldier in Our Town」ネタ。
https://www.youtube.com/watch?v=_Mjco9g5dCY

「Get Dis Money」
Jazz The New Chapter的なセレクトとしてチェックしておきたいトラックですね。Herbie Hancock「Come Running to Me」をサンプリングしています。Robert Glasperが、J Dillaと同様の影響力を語っていたHerbie Hancock。その両者がクロスする本曲をJazz The New Chapter的な観点から聴くのも楽しいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=F-oLqMwzvBY

「Raise It Up」
Thomas Bangalter「Extra Dry」ネタのループによるミニマル感が興味深いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=eATZrHwNW7w

「Once Upon a Time」
Pete Rockをフィーチャー。Dee Dee Bridgewater「Afro Blue」をサンプリング。Jazz The New Chapter的な観点に立てば、J DillaがDee Dee Bridgewater「Afro Blue」をサンプリングし、J Dillaから影響を受けたRobert Glasper『Black Radio』で「Afro Blue」をカヴァーするというソング・サイクルは実に興味深いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=hjhGGvJXeaA

「Players」
The Singers Unlimited「Clair」の声ネタを巧みに使った浮遊トラックが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=xqylSGpyhOI

「Eyes Up」
ブリブリとうねるファンキー・トラックが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=JDHX67ovBd0

「2U4U」
D'Angelo「Jonz In My Bonz」をサンプリング。J DillaがD'Angeloネタを使うのは少し反則技な気もしますが(笑)、究極に心地好いユラユラ浮遊するグルーヴを堪能できます。夢心地気分です。
https://www.youtube.com/watch?v=L_vNfcaX8oc

「CB4」
今では聴き慣れた乾いたビートと淡々としたフロウの組み合わせですが、それもJ Dillaのおかげですね。
https://www.youtube.com/watch?v=vbh-sopLNWA

「Go Ladies」
本編のラストは、Don Blackman「Holding You, Loving You」ネタの浮遊トラックで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=x5f4uhkDAK8

「Thelonius」
CDの隠れトラック。Common『Like Water For Chocolate』(2000年)収録曲としてお馴染みですね。『Jazz The New Chapter』の中でもRobert Glasperが影響を受けた楽曲として本曲が挙げられていました。『Like Water For Chocolate』であれば、「The Light」「The 6th Sense」あたりのHip-Hopクラシックに耳を奪われる人が多いにも関わらず、「Thelonius」に惹かれるあたりがRobert Glasperの感性なのかもしれませんね。George Duke「Vulcan Mind Probe」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=7mvlaULr2Xs

『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』J Dillaのソロ作もチェックを!

『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』(1997年 ※2006年に再発)
FANTASTIC VOL. 1

Jay Dee『Welcome 2 Detroit』(2001年)
Welcome to Detroit

Jaylib『Champion Sound』(2003年)
Champion Sound

J Dilla『Donuts』(2006年)
Donuts

J Dilla『The Shining』(2006年)
The Shining

Jay Dee『Jay Deelicious: The Delicious Vinyl Years』(2007年)
Jay Deelicious: The Delicious Vinyl Years

J Dilla『Jay Stay Paid』(2009年)
Jay Stay Paid

テニスの全米オープン決勝、残念ながら錦織選手はストレート負け!でも今日は彼が悪かったというより、相手のチリッチが生涯最高のプレーと呼べるほど良すぎた!という感じでしたね。錦織選手の今大会の見事な戦いぶりに拍手を送りましょう!

NFL開幕戦でドルフィンズが白星スタート・・・これについては明日にでも書きます。
posted by ez at 09:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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