発表年:2012年
ez的ジャンル:NEXT Collective系新世代ジャズ・ドラマー
気分は... :これはジャズ・アルバムではない・・・
今回は注目の新世代ジャズ・ドラマーJamire Williamsが率いるユニットErimajの1stアルバム『Conflict Of A Man』(2012年)です。
これまでデジタル配信のみでのリリースでしたが、今年になりCD化されました。
昨日から勝手に開始したJazz The New Chapter強化月間の第2弾です。
昨日は進化するジャズに多大な影響を与えた故J Dillaを代表する1枚として、Slum Village『Fantastic, Vol. 2』(2000年)を紹介しました。
今日の主役であるJamire Williamsは1984年生まれ。まさにJ Dillaを聴いて育ってきた新世代ドラマーです。
Kenny GarrettやDr. Lonnie Smithのバンドで実力をつけたJamireは、同世代である気鋭のトランぺッターChristian Scottのリーダー作へのレコーディング参加で大いに刺激を受けます。
そして、自身のユニットErimaj(ユニット名はJamireの綴りを逆にしたもの)を結成したり、Ben Williams(b)、Matthew Stevens(g)、Gerald Clayton(p、el-p)、Kris Bowers(el-p)、Christian Scott(tp)、Logan Richardson(as、fl)、Walter Smith III(ts、cla)による若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveへ参加しています。
先日紹介したJazz The New Chapterの流れを汲む新作ジャズGideon Van Gelder『Lighthouse』でもドラムを叩いていたのはJamire Williamsであり、大いに存在感を示していました。
2012年にリリースされたErimajのデビュー作となる本作『Conflict Of A Man』は、USのiTunesジャズ・チャートで第1位を獲得しています。さらに日本では今年『Jazz The New Chapter』発売後にCD化が実現し、作品への注目が高まっています。
レコーディングには、Jamire Williams(ds)、Matthew Stevens(g)、Corey King(tb)、Vincente Archer(b)、Chris Turner(vo)、Jason Moran(p)、John Ellis(sax)、Burniss Earl Travis(b)、Tomoko Omura(violin)、Maria Jeffers(cello)といったメンバーが参加しています。。
Matthew StevensはJamireと同じくNEXT Collectiveのメンバーです。Vincente ArcherはThe Robert Glasper Trioのメンバーとして、『Double Booked』(2009年)までRobert Glasperを支えていたベーシストですね。Corey Kingは当ブログでも紹介したEsperanza Spalding『Radio Music Society』(2012年)、Jose James『No Beginning No End』(2013年)、Derrick Hodge『Live Today』(2013年)といったJazz The New Chapter重要作に参加しています。話題のネオソウル/ジャズ・シンガーChris Turnerや、天才ピアニストJason Moranは『Jazz The New Chapter』でも作品が取り上げられている注目のミュージシャンです。また、
アルバムの内容は、ジャズの枠に囚われないオルタナティヴ・ロック、ソウル、Hip-Hopのエッセンスも取り込んだ演奏を満喫できます。また、J Dillaのカヴァーも収録されており、まさにJazz The New Chapterの内容に呼応したかのような音を聴くことができます。特にオルタナ・ロックのエッセンスを上手く織り交ぜているのが特長だと思います。
Jamire本人が"これはジャズ・アルバムではない"と語っているように、ジャズ・ミュージシャンによるジャズに囚われないサウンドを楽しむアルバムだと思います。
その意味では普段ジャズを聴かない人も楽しめる1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Unrest (Journey to the Land of Milk & Honey)」
Jamire Williams作。ジャズに囚われないサウンドを目指すErimajらしいオープニング。ワールド・ジャズ風のミステリアスな雰囲気が印象的です。
「Black Super Hero Theme Song」
Corey King作。Jamireの新世代ドラマーらしいプレイを満喫できる曲です。やはり、進化するジャズの肝はドラムであることを実感できます。格好良い!
https://www.youtube.com/watch?v=LDilBhJ3bOg
「This Night, This Song」
The Tony Williams Lifetimeのカヴァー。オリジナルは『Turn It Over』(1970年)に収録されています。JamireがTony Williamsをカヴァーするのはわかりますが、その中でもスピリチュアルなヴォーカル曲「This Night, This Song」を取り上げるというのが意外ですね。オリジナルを受け継ぐミステリアス&スピリチュアルな雰囲気ですが、終盤にはJamireによる人力ドラムンベース調のドラミングを聴くことができます。Chris Turnerのファルセット・ヴォーカルやJason Moranの美しいピアノも効果的です。
「The Day the Sun Rose Twice」
Jamire Williams/Corey King作。タイトルを見ればわかる通り、前曲からの流れ汲んで夜モードから夜明けモードへシフトしています。Robert Glasper Experimentに通じる雰囲気ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=iToXlWLt4T4
「Nothing Like This」
話題のJ Dillaのカヴァー。オリジナルは『Ruff Draft』に収録されています。Jamire自身"誰もJ Dillaを超えることはできない"と述べるほど、やはりJ Dillaは偉大なんですね。J Dillaの遺志を受け継ぐビートを叩き出すJamireのプレイに注目です。
https://www.youtube.com/watch?v=Iw3iSZusuCs
「Plants」
Jamire Williams/Corey King作。新世代ならではのインタープレイでエキサイトさせてくれます。リミットの外れたJamireのプレイが凄いです!
https://www.youtube.com/watch?v=-XbfuGQE40k
「Conflict of a Man」
Alan Hampton/Jamire Williams/Corey King作。『Jazz The New Chapter 2』でも大きく取り上げられていたAlan Hamptonがソングライティングで参加しています。Chris Turnerの哀愁ヴォーカルをフィーチャーしたオルタナ感のあるサウンドは、最近のJose Jamesあたりにも通じるものはがありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=3TvEh4mw5tE
「Social Life」
Jamire Williams/Corey King作。Chris Turnerのヴォーカルによる美しく切ない哀愁のソウル・チューンは、もはやジャズ・ユニットという雰囲気ではありませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=qYVHvVrFaTc
「Choosing Sides」
Matthew Stevens作。ラストもオルタナ感のある演奏で締め括ってくれます。このあたりの何でもアリな感じがErimaj最大の魅力かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=oYihWZVMFA0
ご興味がある方は、Jamire Williams参加のJazz The New Chapter重要作をチェックを!
Christian Scott『Yesterday You Said Tomorrow』(2010年)
Christian Scott『Christian Atunde Adjuah』(2012年)
NEXT Collective『Cover Art』(2013年)