発表年:2010年
ez的ジャンル:LAビート・ミュージックの雄
気分は... :ジャズ・ネクスト・レベルへ・・・
今回はLAビート・ミュージックの中心人物、Flying Lotusの代表作『Cosmogramma』(2010年)です。
1983年カリフォルニア生まれの音楽クリエイターであり、自身のレーベルBrainfeederから才能あるアーティストの作品を発信し続けるLAビート・ミュージックの中心人物Flying Lotus(本名:Steven Ellison)の紹介は、『Until The Quiet Comes』(2012年)に続き2回目となります。
昨日、一昨日に続きJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第5弾です。結局、3連休はJTNC関連作で通してしまいました。まぁ、たまにはこんなのもいいでしょう。
JTNC関連作といっても、一昨日のBecca Stevens Band『Weightless』(2011年)はフォーキー作品、昨日のKris Bowers『Heroes + Misfits』(2014年)はインディー・ロック等の多様なジャンルのエッセンスも取り入れた作品、今回のFlying Lotus『Cosmogramma』はLAビート・ミュージック作品といったように三者三様です。こうした従来のジャズの枠組みを飛び越え、様々なジャンルとの融合からジャズを捉え直すことこそがJTNCの本質ですからね。
『Jazz The New Chapter 2』の中でも、LAビート・ミュージックと進化するジャズの関係が大きくクローズ・アップされ、その中でも来月発売予定のFlying Lotusの最新作『You're Dead!』は"ジャズ・ネクスト・レベルの超問題作"と紹介されていました。
John Coltraneの妻であり、ジャズ・ミュージシャンとしても活躍したAlice Coltraneを叔母に持つという"ジャズDNA"を持ち、自身のレーベルBrainfeederから、惜しくも2012年に逝去した天才ピアニストAustin Peraltaやデビュー・アルバム『Early Riser』が素晴らしい出来栄えだったTaylor McFerrinといったジャズ作品を発信しているFlying Lotusがビート・ミュージックとジャズの架け橋になるというのは当然の帰結ですね。
LAビート・ミュージックを牽引し、故J Dillaを敬愛し、ジャズDNAを持つFlying Lotusは、まさにJTNCの流れにジャスト・フィットするアーティストです。
そこで新作『You're Dead!』が発売される前に、Flying Lotusの代表作『Cosmogramma』(2010年)をフォローしたく思います。
『Cosmogramma』は、『1983』(2006年)、『Los Angeles』(2008年)に続く3rdアルバムであり、RadioheadのThom Yorkeが参加したこともあり、Flying Lotusの名を多くの人に知らしめたアルバムであり、『Jazz The New Chapter』でもセレクトされている重要作です。
アルバムにはThom Yorke意外にも注目すべきミュージシャンが参加しています。今やFlying Lotusの右腕でもある天才ベーシストThundercat(b、vo)、L.A.ジャズ・シーンを象徴するプロジェクトBuild An ArkのメンバーでもあるRebekah Raff(harp)とMiguel Atwood-Ferguson(strings)、故John Coltraneの子息であり、Flying Lotusの従兄弟となるRavi Coltrane(ts)の4名です。
それ以外にBrian Martinez(g)、Dorian Concept(key)、Laura Darlington(vo)、Low Leaf(key)、Niki Randa(vo)、Richard Eigner(ds)、Todd Simon(tp)といったミュージシャンが参加しています。
エクスペリメンタルかつローファイな無機質感を持つビート・ミュージックは、ある意味聴く者を選ぶ音楽ジャンルかもしれません。
しかしながら、本作『Cosmogramma』はThundercatの超人的なベース・プレイ、Rebekah RaffのハープとMiguel Atwood-Fergusonによるストリングスの美しい調べ、John ColtraneのDNAを受け継ぐRavi Coltraneのサックス等が加わったことでLAビート・ミュージックが劇的に進化したことを感じさせる意欲作です。
話題作かつ問題作になるであろう『You're Dead!』を聴く前に、ぜひ本作をチェックしておきましょう!
全曲紹介しときやす。
「Clock Catcher」
無機質でダークな電子サウンドとRebekah Raffの美しいハープが織り成す宇宙があります。
https://www.youtube.com/watch?v=LzUGaugPg2s
「Pickled!」
Thundercatの超人的ベースが大きくフューチャーされた本曲は、"もしJaco Pastoriusがビート・ミュージックと出会ったら・・・"といった趣ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=2BpPQv2yFnM
「Nose Art」
ビート・ミュージックらしいローファイ感覚の仕上がり。この意図したチープな音をどう捉えるかは聴き手次第・・・
https://www.youtube.com/watch?v=T0VukBwcHnM
「Intro//A Cosmic Drama」
本作らしいRebekah Raffのハープ、Miguel Atwood-Fergusonのストリングスと電子サウンドの融合を聴くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=ExbckB15XeM
「Zodiac Shit」
前曲からの流れでRebekah RaffのハープとMiguel Atwood-Fergusonのストリングスが前面に打ち出された美しい前半と、Thundercatのベースが先導するカオス的な後半のコントラストが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=wtjZOf0WmdE
「Computer Face//Pure Being」
ゲーム・ミュージック風の仕上がり。このあたりは僕も戸惑ってしまいます(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=il78kyjCDkc
「... And The World Laughs With You」
話題のThom Yorke参加曲。Flying Lotus本人の強い希望により実現した共演らしいです。無機質なビート・ミュージックはThom Yorkeの儚げなヴォーカルとよくマッチしますね。
https://www.youtube.com/watch?v=-u1DVwk-eqg
「Arkestry」
Ravi Coltraneがサックスで参加した本曲はアルバムの中でも最もジャズしている曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=Glp1aa76HVY
「MmmHmm」
Thundercatのヴォーカル&ベースをフィーチャー。JTNCの流れで聴くと、この曲なんかはかなりフィットする感じがします。やはりThundercatのベースはいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=ht5VaNI-RfA
「Do The Astral Plane」
ドゥーワップ調のスキャットが印象的な仕上がり。Flying Lotusのブラック・ミュージック的な意識を感じる1曲です。Miguel Atwood-Fergusonによるストリングスも盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ouI9BSAx1ro
「Satelllliiiiiiiteee」
Flying Lotus、Thundercatに加え、オーストラリア出身のプロデューサー/キーボード奏者Dorian Conceptが参加。リズミック&コズミックな音世界は僕好みであり、ジャズ的な仕上がりだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Rf4QmILo08w
「German Haircut」
Ravi Coltraneのテナー、Rebekah Raffのハープ、Richard Eignerの生ドラムを入れたフリージャズ風の仕上がり。John ColtraneとAlice Coltraneの姿が思わず脳裏を過ります。
https://www.youtube.com/watch?v=8uzQVepGDLk
「Recoiled」
僕のお気に入り。ビート・ミュージックの進化を感じます。JTNC的な観点から聴いても興味深い仕上がりなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=HyDMrxZLfPM
「Dance Of The Pseudo Nymph」
本曲のビートを聴いていたら、昨日紹介したKris Bowers『Heroes + Misfits』におけるインディー・ロック的なアプローチを思い出してしまいました。僕の中でLAビート・ミュージックとジャズ界を担うであろう新進ピアニストが一つの線で結ばれました。改めてFlying Lotus作品におけるThundercatの役割の大きさを感じるベースラインにも注目です。
https://www.youtube.com/watch?v=dr_zDCjphF0
「Drips//Auntie's Harp」
Miguel Atwood-Fergusonのストリングス、Rebekah Raffのハープを配した本作らしいFlying Lotusの音世界を堪能できます。叔母Alice Coltraneへのオマージュ的な雰囲気もありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=ipQIXbCByCU
「Table Tennis」
卓球のラリーの音をサンプリングしたビートをバックに、Laura Darlingtonの儚げなヴォーカルが響き渡ります。
https://www.youtube.com/watch?v=5WFGuDxTSL8
「Galaxy In Janaki」
ラストはThundercat、Rebekah Raff、Miguel Atwood-Fergusonという本作への貢献大の3名が勢揃い!神秘的なビート・ミュージックで締め括ってくれます。Flying Lotusの音世界の1つの完成形という気がします。
「Velvet Cake」
国内盤のボーナス・トラック。カオス・モードで躍動するビートにグッときます。
https://www.youtube.com/watch?v=NHxxoIIPKVk
他のFlying Lotus作品やBrainfeederの重要作もチェックを!
『1983』(2006年)
『Los Angeles』(2008年)
『Until The Quiet Comes』(2012年)
Austin Peralta『Endless Planets 』(2011年)
Thundercat『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)
Thundercat『Apocalypse』(2013年)
Taylor McFerrin『Early Riser』(2014年)