発表年:2010年
ez的ジャンル:進化系男性ジャズ・シンガー
気分は... :慌てず、騒がず、達観する・・・・・・
今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第6弾、Jose James『Blackmagic』(2010年)です。
1978年ミネアポリス生まれの男性ジャズ・シンガーJose Jamesの紹介は、3rdアルバム『No Beginning No End』(2013年)、4thアルバム『While You Were Sleeping』(2014年)に続き3回目となります。
ジャズの枠を飛び越えて進化し続ける新世代の男性ジャズ・シンガーJose Jamesは、『Jazz The New Chapter』、『Jazz The New Chapter 2』でも大きく取り上げられていましたね。Blue Noteからリリースされた3rd『No Beginning No End』(2013年)、4th『While You Were Sleeping』(2014年)の2枚には、進化形ジャズをリードする男性ジャズ・シンガーJose Jamesの姿が存在します。
ただし、Gilles Petersonに認められ、彼のレーベルBrownswood Recordingsから1st『The Dreamer』、2nd『Blackmagic』(2010年)をリリースしていた頃は、進化形ジャズというよりもクラブジャズ/クラブミュージックの文脈で聴かれていましたよね。
当時の僕もJose Jamesというアーティストをそうした方面から見ていた気がします。そのため、本作『Blackmagic』に関して、"悪くはないけど、もっとクラブジャズ/ダンス・ミュージック寄りの作品が聴きたかったなぁ"という印象を持っていました。
しかし、JTNC的な文脈を踏まえて『Blackmagic』を聴き直すと、参加メンバーも含めて実に興味深く聴くことができました。
LAビート・ミュージックの中心人物Flying Lotus、デトロイト・ハウスの奇才Moodyman、UKを代表する進化形ジャズ・ドラマーRichard Spaven、最新作『Lighthouse』が話題の新進ジャズ・ピアニストGideon Van Gelder、Flying LotusのレーベルBrainfeederからビート・ミュージック、Hip-Hop、ソウル、エレクトロニカと融合した最新形ジャズ作品『Early Riser』をリリースしたTaylor McFerrin、日本が誇る新進ジャズ・トランぺッターTakuya Kuroda(黒田卓也)といった『Jazz The New Chapter』、『Jazz The New Chapter 2』における重要ミュージシャンがズラリと顔を揃えています。このメンツだけでもJTNCに興味がある方は必聴ですよね。
それ以外にも当時レーベル・メイトであったBen Westbeech、日本が世界に誇るトラックメイカーDJ Mitsu The Beatsといった興味深いゲストが参加しています。また、ダブステップの巨匠Bengaの楽曲をカヴァーしたことも話題となりました。
改めて聴くと、実にソウルフルな作品ですね。しかも、70年代のソウルフルなエッセンスと、J Dillaに代表されるHip-Hop/ネオソウル的なエッセンスをバランス良く昇華させている感じがいいですね。
さらに、そうしたサウンドをRichard Spaven、Gideon Van Gelder等の新進ジャズ・ミュージシャンと共に創り上げると同時に、Flying Lotus、Moodyman、Bengaといった他ジャンルのアーティストのスパイスでアルバムにジャンル融合的なアクセントを加えているところが心憎いですね。
JTNCのような進化形ジャズの流れを予見していたかのようなJose Jamesの嗅覚に驚かされる1枚です。
慌てず、騒がず、達観する・・・男の美学を感じるダンディな1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。 ※国内盤の構成
「Code」
Jose James/Steven Ellison(Flying Lotus)作。注目のFlying Lotusプロデュースの1曲目。淡々としたメロウ・トラックをバックに、Joseの男性ヴォーカルとMoni Pinedaの女性ヴォーカルが絡む、地味ながらもジワジワくるオープニングです。
https://www.youtube.com/watch?v=oSlWOWdmJ9I
「Touch」
Jose James作。Gideon Van Gelderプロデュース。Joseのセクシー・ヴォーカルに魅了される落ち着いた仕上がり。Gideon Van Gelderの素晴らしいピアノ・タッチも随所で聴くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=5SGhwHs6BiQ
「Lay You Down」
Alex Bilowitzプロデュース。J Dilla的ビートと浮遊するGideon Van Gelderのエレピが印象的なネオソウル調の仕上がり。Alex Bilowitz、Saunders Sermons、黒田卓也によるホーン・アンサンブルもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=XQ1LCsGFtCA
「Electro Magnetic」
国内盤ボーナス・トラックその1。Jose James/Ben Westbeech/Takenya Quann作。Ben Westbeechをフィーチャー。当時のBrownswoodの2枚看板の共演ですね。クロスオーヴァー的な音をイメージしてしまいますが、意外にもネオソウル調のジャズ・ヴォーカル作品に仕上がっています。同じくネオソウル調であった前曲「Lay You Down」からの流れで、ボーナス・トラックにも関わらず、この曲順にしたのがわかる気がします。終盤にはTK Wonderの女声ラップも聴けます。Jose Jamesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=2oK5ZRo1Xfc
「Promise In Love」
DJ Mitsu The Beatsプロデュース。元々はDJ Mitsu The Beats『A Word To The Wise』(2009年)でJose Jamesがゲスト参加した楽曲です。Jose自身がこの出来栄えを気に入り、自身のアルバムにも収録することになった模様です。オールドスクールでロマンティックなヴァイヴスが伝わってくるメロウ・チューン。Jordana De Lovelyの女性ヴォーカルや黒田卓也によるトランペットも華を添えてくれます。Joseが自身のアルバムに収録したくなるのも頷ける絶品の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=qqDvO--aO3k
「Warrior」
Beni Uthman(Benga)/Jose James作。ダブステップの巨匠Bengaの「Emotions」にJoseが歌詞をつけてカヴァー。Bengaのオリジナルは『Diary Of An Afro Warrior』(2008年)に収録されています。JTNC的な文脈で聴くと、ダブステップを生音演奏でカヴァーしているのが興味深いですね。ここではやはりRichard Spavenのドラミングに魅せられますね。これぞ進化形ジャズ!Jose James/Gideon Van Gelderプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=Udh7uyriKu8
Benga「Emotions」
https://www.youtube.com/watch?v=REATO2HXANA
「Made For Love」
Jose James/Steven Ellison作。Flying Lotusプロデュースの2曲目。Flying Lotusプロデュース曲の中では、このトラックが一番L.A.ビート・ミュージックとの融合を感じる仕上がりですね。
https://www.youtube.com/watch?v=j1WpzCvZJ_g
「Save Your Love For Me」
ジャズ/ブルース・ピアニストBuddy Johnson作のスタンダードをカヴァー。スタンダードをJ Dilla的な揺らぎのあるビートで聴かせてくれるのがいいですね。改めて聴くと実に味わい深いです。Gideon Van Gelderの小粋なピアノもグッド!Jose Jamesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=ogZdod4fyJE
「The Greater Good」
Jose James/Vincent Helbers/Richard Spaven作。クラブジャズ的な耳で聴いていたときは大して印象に残らなかった曲ですが、JTNCを踏まえて聴くと、なかなか味わい深いですね。Jose James/Richard Spaven/Gideon Van Gelderプロデュース。
「Blackmagic」
タイトル曲はFlying Lotusプロデュースの3曲目。Flying Lotus色は薄いですが、Jose Jamesらしい雰囲気を醸し出すことには成功しています。
https://www.youtube.com/watch?v=FnrMWzsJLHs
「Detroit Loveletter」
話題となったMoodymanプロデュース曲。意外にもMarvin Gayeテイストなセクシー・ソウル・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=pRnFKmz7acI
「Love Conversation」
Jose James/Taylor McFerrin作。当時は無名であったTaylor McFerrinがプロデュースを務めています。Jordana De Lovelyのヴォーカルをフィーチャーしたミステリアスなラブソングです。
https://www.youtube.com/watch?v=aTabkgYE-ds
「Beauty」
さり気ない曲ですが好きです。優しいJoseの歌声とそれに寄り添うようなJordana De Lovelyの女性ヴォーカル、さらにはGideon Van Gelderの美しいピアノに魅了されます。Jose Jamesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=KWm_L1pZXns
「No Tellin' (I Need You)」
Jose Jamesプロデュース。Jose自身がピアノも弾きながら歌っています。Joseの切なる歌声が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=86xRs6BzdE0
「The Light」
10分超の長尺曲。哀愁モードのバラードですが、Jose Jamesの持つ美学のようなものを感じます。Gideon Van Gelderのリリカルなピアノの貢献大です。Jose Jamesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=7RB9IC5_i4w
「Work Song」
国内盤ボーナス・トラックその2。Nat Adderley/Oscar Brown Jr.作によるお馴染みのジャズ名曲を、ベテラン・ジャズ・ピアニストJunior Manceをフィーチャーしてカヴァーしています。
Jose Jamesの他作品もチェックを!
『The Dreamer』(2007年)
Jose James & Jef Neve『For All We Know』(2010年)
『No Beginning No End』(2013年)
『While You Were Sleeping』(2014年)