2014年11月03日

Daniel Crawford『The Awakening』

Robert Glasperフォロワー的な進化形ジャズ☆Daniel Crawford『The Awakening』
ジ・アウェイクニング
発表年:2014年
ez的ジャンル:Glasperフォロワー系進化形ジャズ
気分は... :コメント辛口ですが気に入っています!

今回は新作ジャズ作品からL.A.出身のピアニストDaniel Crawfordの進化形ジャズを感じさせる2ndアルバム『The Awakening』です。

L.A.出身のDaniel Crawfordは、Raphael SaadiqMary J. BligeRahsaan Patterson等の大物R&Bアーティストのツアー・メンバーを務めた経験があるようです。また、プロデューサーとして数多くのミックステープもリリースしている模様です。

2012年に全編インストの1stアルバム『Red Pill』をリリースしており、本作『The Awakening』は2ndアルバムにあたります。

Robert Glasper Experiment『Black Radio』の影響を受けた"進化形ジャズ"作品であり、そのエッセンスを取り入れたサウンドを随所で聴くことができます。また、クロスオーヴァー・ソウル/ジャズ的なダンサブル・サウンドを取り入れた楽曲もあります。

また、3曲収録されているカヴァー曲のセレクトが、Led ZeppelinPrinceFela Kutiというのも進化形ジャズらしいですね。

ゲストとして、デトロイトのネオソウル・シンガーAmp Fiddler、当ブログでも紹介したネオソウルからクラブミュージックまで幅広い音楽性で知られるフィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター/プロデューサー/DJVikter Duplaix、R&B/ゴスペル・シーンで活動する男性シンガー・ソングライターCleveland P. Jonesが参加しています。Amp Fiddlerの参加は彼のEP『Basementality 2』収録曲「Hold On 」のリミックスをDanielが担当しており、その流れでの参加のようです。

このように進化形ジャズの流れに乗って、そのエッセンスを上手く詰め込んだアルバムに仕上がっています。

ただし、器用に進化形ジャズやクロスオーヴァー・サウンドのエッセンスを吸収しているものの、まだまだDaniel Crawfordというアーティストの独自スタイルにまでは昇華していない印象も受けます。その意味では試行錯誤の感も否めませんが、進化形ジャズの拡がりを実感できます。

個人的には本作を聴くことで、自分が進化形ジャズの何に魅力を感じているのかを再認識できました。曲によっては辛口コメントもありますが、あくまで僕自身の嗜好を整理するためのものとご理解下さい。

進化形ジャズの盛り上がりを象徴する1枚として、十分楽しめる作品です。

全曲紹介しときやす。

「The Awakening Intruth」
Robert Glasper的なアルバムを予感させるアルバムのイントロダクション。

「Kashmir」
Led Zeppelinのカヴァー(Jimmy Page/Robert Plant/John Bonham作)。Zepのオリジナルは『Physical Graffiti』(1975年)に収録されています。オリジナルのダイナミックな雰囲気を受け継いだ、意外と素直なカヴァーに仕上がっています。もう少しヒネりを加えても楽しかったのでは?とも思いますが、Zepを知らない世代の人が聴く分には、これ位分かりやすい感じがいいのかもしれませんね。

「Your Guess Is As Good As Mine」
先入観なしで聴くと、70年代クロスオーヴァー/フュージョンの雰囲気もありますね。

「The One」
Vikter Duplaixをフィーチャー。このあたりはVikter Duplaixの諸作に通じるクロスオーヴァーなダンサブル・チューンに仕上がっています。

「Under The Cherry Moon」
Prince殿下のカヴァー。オリジナルはアルバム『Parade』(1986年)に収録されています。どうせ殿下をカヴァーするのであれば、もっとジャズのイメージとかけ離れた楽曲をセレクトした方が面白かった気がします。演奏自体は悪くありませんが、もう少し進化形ジャズっぽいドラミングがあれば・・・とも思ってしまいます。

「Duke」
僕好みのクロスオーヴァー・ジャズ/フュージョン。ただし、進化形ジャズとして聴くのであれば、当ブログで紹介したRuth Koleva『Ruth』(ドラムはRichard Spaven)のような雰囲気にした方が面白かった気がします。

「Home (Africa)」
Cleveland P. Jonesをフィーチャー。アフリカン・テイストのネオソウルのエッセンスを取り入れた本曲が僕の一番のお気に入りです。この演奏についてはRGE『Black Radio』からの影響を自分の果実にしている印象を受けます。

「Strictly For My Negus」
高揚感のあるインスト。この演奏も『Black Radio』のエッセンスを上手く吸収しています。

「The Change」
この曲はボーナス・トラック扱い。クロスオーヴァー・ジャズ的な仕上がりです。

「Trouble」
Amp FiddlerのヴォーカルとMonetのフルートをフィーチャー。Monetのフルートが先導する小気味良いジャジー・ソウルに仕上がっています。

「Water No Get Enemy」
Fela Kutiのカヴァー。オリジナルはアルバム『Expensive Shit』(1975年)に収録されています。カヴァー3曲の中ではダントツでこの演奏が好きです。アフロビートとジャズが違和感なく融合しているのがいいですね。

「Sun Of God」
実にドラマティックな演奏で聴く者を飽きさせません。

「The Awakening」
RGE的な演奏を楽しめるタイトル曲は実にエキサイティングです。「Home (Africa)」と並ぶ僕のお気に入り。

本作を聴いて改めて思ったのは、やはり進化形ジャズの肝はドラムにあるという点です。CDに記載されていないので、レコーディング・メンバーは不明ですが、本作に強力な新世代ジャズ・ドラマーが参加していれば、作品のインパクトがさらに増していた気がします。
posted by ez at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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