2014年12月01日

Kenny Garrett『Simply Said』

Chris Dave参加!キャッチーながらもGarrettの音楽性を存分に楽しめる1枚☆Kenny Garrett『Simply Said』
Simply Said
発表年:1999年
ez的ジャンル:メロディアス系コンテンポラリー・ジャズ
気分は... :若手は褒めて伸ばす!

今回は現代ジャズ・シーンを代表するアルト・サックス奏者Kenny Garrettが1999年にリリースした『Simply Said』(1999年)です。

Kenny Garrettは1960年デトロイト生まれのジャズ・サックス奏者。

地元のバンドで活躍した後、N.Y.へ進出。1984年に初リーダー作『Introducing Kenny Garrett』(1984年)をリリース。その後 Art Blakey & the Jazz Messengers、Miles Davisのグループに参加し、注目を浴びます。

90年代以降はコンスタントに作品をリリースし、若手ミュージシャンを積極的に起用したり、ジャンル、国境を越えた活動でジャズ・シーンを牽引しています。

当ブログで紹介した作品でいえば、Cameo『Machismo』Guru『Jazzmatazz Vol II:The New Reality』Q-Tip『Kamaal The Abstract』といったR&B/Hip-Hop作品にKenny Garrettがゲスト参加しています。

コンテンポラリー・ジャズを代表するアルト・サックス奏者ですね。

僕がKenny Garrettの名を初めて知ったのは、80年代半ばに彼が参加していた"新伝承派"の若手グループOut Of The Blue『Inside Track』(1986年)でした。当時、Marsalis兄弟Mulgrew MillerOut Of The Blue等の"新伝承派"ジャズ作品を好んで購入している時期がありました。結果として、1〜2年で僕の中のコンテンポラリー・ジャズ・ブームは終焉してしまいましたが・・・

そんな感じで、恥ずかしながら、これまでKenny Garrettのリーダー作をきちんと聴かずにいた僕でしたが、今年話題の音楽ムック本『Jazz The New Chapter』を読んで、彼の存在の重要性を再認識し、彼のリーダー作を遅まきながら聴くようになった次第です。

何枚か入手した彼のリーダー作の中で、一番頻繁に聴いているのが今日紹介する『Simply Said』(1999年)です。『Jazz The New Chapter』の中でもピックアップされていた作品です。

JTNC的な観点からは、後にRobert Glasper Experimentのメンバーとして活躍する進化形ジャズを象徴するドラマーであるChris Daveが参加している点で注目されている作品ですね。Chris Daveをジャズの世界へ誘ったのはKenny Garrettであり、本作が初共演作となります。

レコーディング・メンバーはKenny Garrett(as、ss)、Shedrick Mitchell(p、org)、Nat Reeves(b)、Chris Dave(ds)、Jeff "Tain" Watts(ds)、Pat Metheny(g)、Marcus Miller(el-b)、Mulgrew Miller(p)、Bashiri Johnson(per)です。

今日ではChris Daveの参加に注目が集まりますが、当時はPat Metheny、Marcus Miller、Mulgrew Millerのゲスト参加が話題だったのでは?ただし、Pat Methenyは全く目立ちませんが・・・

全体として実に聴きやすいアルバムであり、その分ファンの間では賛否が分かれたアルバムのようですね。僕自身は技術論に終始するようなジャズの聴き方はできないし、そういった聴き方も大嫌いなので、こういったアルバムは大歓迎です。

また、ファンク、アフリカ、アジア、ボサノヴァ、ラップなどのエッセンスも取り入れ、Garrettの音楽性の広さ、懐の深さを感じることができる作品にもなっています。また、こうしたGarrettの音楽性の広さを具現化するためには、Chris Daveのようなドラマーの存在が必要であったのでしょうね。

本作は前年に亡くなったジャズ・ピアニストKenny Kirklandへ捧げられた作品となっています。

Shedrick Mitchell作の「Words Can't Express」以外はKenny Garrettのオリジナルです。

Garrettの素晴らしいプレイは勿論のこと、JTNC好きの人はChris Dave中心に聴いても楽しめると思います。実際、僕はそんな聴き方をしていましたが、アルバム1枚だれることなく楽しめました。

全曲紹介しときやす。

「G.T.D.S.」
オープニングはMarcus Miller参加のファンク・チューン。MarcusのベースとChris Daveの変則ながらも抜けの良いドラミングが目立っています。そんなリズム隊を従え、Garrettがリラックスしたプレイを聴かせてくれます。Shedrick Mitchellのオルガンも効いています。
http://www.youtube.com/watch?v=2Bt4HNBDXmc

「Charlie Brown Goes To South Africa」
僕の一番のお気に入り。タイトルの通り、アフリカを意識した演奏です。Garrettのサックスもアフリカの大地のような包容力があります。ここではShedrick Mitchellが素晴らしいピアノを披露してくれます。演奏全体を下支えするChris Daveの躍動するドラムもグッド!

「Delta Bali Blues」
この演奏も大好き!タイトルからして、バリのエスニック・テイストとデルタ・ブルースの融合を意図しているのでしょうね。Garrettのサックスの音色に大地の息吹を感じます。聴いていて、心が安らぐサウンド・スケープ的な演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=sjjgeE1T6Oo

「Conversation With Hutcherson」
タイトルからして、Bobby Hutchersonを意識した演奏なのでしょうね。Shedrick Mitchellのエレガントなピアノにグッときます。でも、このメロディは何度聴いても、童謡「おもちゃのチャチャチャ」を想起してしまうのは僕だけでしょうか(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=6tQqiBL9x_4

「Words Can't Express」
本曲のみShedrick Mitchell作です。澄み切ったピアノとサックスの音色に感動する素敵なバラードです。
http://www.youtube.com/watch?v=r5VhYFvL7lU

「Back Where You Started」
Tick Tock Vocal Crewを命名されたJeff Watts、Mulgrew Miller、Raymond Harris、Nat Reevesによるスポークン・ワード(というよりラップですね)を取り入れた楽曲。前述のように、GuruQ-Tip等のHip-Hopアーティストとも共演しているGarrettなので、全く違和感はありません。
http://www.youtube.com/watch?v=KQnOfzjKg4Y

「Sounds Like Winter」
Pat Metheny、Marcus Miller参加曲。ただし、Methenyのギターはあまり目立ちません。タイトルの通り、Garrettの丁寧なフレージングをはじめ、冬ジャズらしい落ち着きのある演奏です。

「Can I Just Hold Your Hand ?」
落ち着きのあるボッサ調の演奏は僕好み。ロマンティック・ムードのGarrettのサックスとShedrick Mitchellのピアノにうっとりです。

「Organized Colors」
序盤はShedrick Mitchellによる美しいピアノを楽しみ、その後はGarrettのJohn Coltraneライクな情熱的サックスをはじめとするエキサイティングな演奏を満喫できます。

「3rd Quadrant」
この曲のみドラムがChris DaveではなくJeff "Tain" Wattsが起用されています。また、ピアノで昨年惜しくも逝去したMulgrew Millerが参加しています。エキサイティングな演奏は悪くありませんが、Chris Daveに注目して聴いている僕としては関心が低いです。
http://www.youtube.com/watch?v=TPdPEBksCAw

「Simply Said」
ラストは美しいタイトル曲で締め括ってくれます。思わずKenny Gをイメージしてしまうようなスムーズジャズ調の仕上がりですが、聴く者の心の奥に届く特別なサムシングを感じます。きっと、こういった演奏に対して賛否があるのでしょうが、僕は大好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=dEH3uHlxIZs

Kenny Garrettの他作品もチェックを!

『Introducing Kenny Garrett』(1984年)
INTRODUCING KENNY GARRETT

『Prisoner of Love』(1989年)
プリズナー・オブ・ラヴ

『African Exchange Student』(1990年)
African Exchange Student

『Black Hope』(1992年)
ブラック・ホープ

『Triology』(1995年)
トリオロジー

『Stars & Stripes Live』(1995年)
Stars & Stripes

『Pursuance: The Music of John Coltrane』(1996年)
Pursuance: Music of John Coltrane

『Songbook』(1997年)
ソングブック

Kenny Garrett/John Scofield/Michael Brecker/David Friesen『Old Folks』(2001年)
Old Folks

『Happy People』(2002年)
Happy People

『Standard of Language』(2003年)
Standard of Language

『Beyond the Wall』(2006年)
Beyond the Wall

『Sketches of MD – Live at the Iridium』(2008年)
Sketches of MD Live at the Iridium

『Seeds from the Underground』(2012年)
シーズ・フローム・ジ・アンダーグラウンド (Seeds from the Underground)

『Pushing the World Away』(2013年)
Pushing The World Away [輸入盤]
posted by ez at 03:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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