発表年:1970年
ez的ジャンル:移行期セルメン
気分は... :ポップになりすぎず・・・
今回はSergio Mendes & Brasil '66のラスト・アルバム『Stillness』です。
当ブログで、これまで紹介してきたSergio Mendes作品は以下の9枚。
『Brasil '65』
※Wanda Sa(Wanda De Sah)、Rosinha De Valencaとの共演作
『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil '66』(1966年)
『Equinox』(1967年)
『Look Around』(1968年)
『Fool On The Hill』(1968年)
『Sergio Mendes' Favorite Things』(1968年)
『Crystal Illusions』(1969年)
『Vintage 74』(1974年)
『Sergio Mendes & the New Brasil '77』(1977年)
前述のように、本作『Stillness』(1970年)はBrasil '66名義のラスト・アルバムです。次作『Pais Tropical』(1971年)からグループはSergio Mendes & Brasil '77を名乗るようになります。
本作のメンバー構成は少し複雑です。ジャケ、裏ジャケ、インナースリーブに写るメンバーは7名。ただし、ジャケ及び裏ジャケとインナースリーブとでは写っているメンバーが一部異なります。
これは本作の制作中にオリジナル・メンバーとして活躍してきた女性ヴォーカルのLani Hallが脱退し、それに代わりGracinha Leporaceが新メンバーとして加入したためです。
Gracinha LeporaceはGrupo Manifesto、Bossa Rioのメンバーとしても活躍し、プライベートでもSergio Mendesの奥方になった人です。
ジャケ、裏ジャケにはLani Hall、インナーにはGracinha Leporaceが写っています。実際には新加入のGracinhaがヴォーカルをとっているのは「Lost In Paradise」のみなのですが・・・
それ以外のメンバーは、Sergio Mendes(p、vo)、Karen Philipp(vo)、Sebastiao Neto(b)、Claudio Slon(ds)、Rubens Bassini(per)、Laudir Soares de Oliveira(per)という6名です。Claudio Slon、Laudir Soares de Oliveiraが新加入メンバーです。
それ以外にOscar Castro-Neves(g)等のサポート・メンバーが参加しています。
ジャケからも想像できますが、従来のBrasil '66とは異なる雰囲気のアルバムです。Mendes自身が意図的にイージーリスニング/ポップ色の強い音を避けたのでしょう。アルバムにはUS/UKの音楽シーンを反映したラブ&ピースなフォーキー/ロック的なサウンド、それとは対照的にブラジル色を強く打ち出した楽曲、クロスオーヴァー感のある楽曲などが並びます。
音楽シーンの変わり目に直面し、従来からの変化を求めた本作を聴けば、セルメンがBrasil '66に区切りをつけたのも頷けます。
セルメン作品の中では地味な扱いの1枚ですが、ポップさの抑え加減が絶妙であり、今の僕の音楽嗜好にはとてもフィットする1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Stillness」
Paula Stone作。従来のBrasil '66のイメージとは大きく異なる幻想的なフォーキー・チューン。フォーキー・ギターとフルートをバックに、Lani Hallが少し陰のあるヴォーカルを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ro1ZPAGJOyE
「Righteous Life」
Paula Stone作。「Stillness」同様、当時のUSチャートを反映するかのようなシンガー・ソングライター風の仕上がり。ラブ&ピースな雰囲気が漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=kFez0-bULgA
「Chelsea Morning」
Joni Mitchell『Clouds』作。Joniのオリジナルは『Clouds』(1969年)に収録されています。Judy Collinsのカヴァー・シングルでもお馴染みの曲ですね。本作らしいSSW作品のセレクトですが、ラテン・パーカッションを効かせたサウンドは従来のBrasil '66らしさも覗かせます。その意味では、Brasil '66の従来からの魅力と本作らしいエッセンスのバランスが上手くとれた仕上がりだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=2yPKKRzHByI
「Cancao Do Nosso Amor」
Dalton Madeiros/Silveiro Madeiros作。ここではMendes自身がヴォーカルをとるソフトリー&ムーディーな仕上がりです。
「Viramundo」
Gilberto Gil/Capinan作。Gilのオリジナルは『Louvacao』(1967年)に収録されています。軽快なブラジリアン・リズムが心地好い仕上がりです。過度にポップにしすぎず、ブラジル色を強く打ち出したアレンジがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=7Bmub9JFgxk
「Lost In Paradise」
Caetano Veloso作。Caetanoのオリジナルは『Caetano Veloso』(1969年)に収録されています。当ブログではGal Costa、Alexia Bomtempoのカヴァーも紹介済みです。新加入のGracinha Leporaceがヴォーカルをとる楽曲です。オーケストレーションを配しつつ、この時期のUS/UKのSSWやロックの空気感を上手く取り入れている好カヴァーに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=Rf6x5Brfi_8
「For What It's Worth」
Buffalo Springfieldのカヴァー(Stephen Stills作)。オリジナルは『Buffalo Springfield』(1966年)に収録されています。当ブログではThe Voices Of East Harlem、Miriam Makebaのカヴァーも紹介済みです。Buffalo Springfieldの名曲を、フォーク・ロックな雰囲気を残しつつ、パーカッシヴな雰囲気で聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=QONvHhi0jNM
「Sometimes In Winter」
Blood, Sweat & Tearsのカヴァー(Steve Katz作)。オリジナルは『Blood, Sweat & Tears』(1968年)に収録されています。ラブ&ピースな空気に包まれたピースフル・チューンはこの時代らしい仕上りです。クロスオーヴァー感のあるアレンジもセルメン新時代を感じさせます。
https://www.youtube.com/watch?v=43qkEGgzdBc
「Celebration Of The Sunrise」
Oscar Castro-Neves/Tiao Neto作。ダバダバ・スキャット入りのブラジリアン・フォーキー。2分にも満たない曲ですが、なかなか心地好いです。
「Stillness」
「Stillness」のリプライズでBrasil '66の歴史が幕を閉じます。
Sergio Mendes作品の過去記事もご参照下さい。
Wanda de Sah featuring The Sergio Mendes Trio With Rosinha De Valenca『Brasil '65』(1965年)
『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil'66』(1966年)
『Equinox』(1967年)
『Look Around』(1968年)
『Fool On The Hill』(1968年)
『Sergio Mendes' Favorite Things』(1968年)
『Crystal Illusions』(1969年)
『Vintage 74』(1974年)
『Sergio Mendes & the New Brasil '77』(1977年)