発表年:2008年
ez的ジャンル:ファンク・ジャム・バンド
気分は... :シャキシャキ!レタス
今回はファンク・ジャム・バンドLettuceが2008年にリリースした『Rage!』です。
Lettuceは1992年にボストンで結成されたファンク・ジャム・バンド。
初期メンバーはEric Krasno(g)、Sam Kininger(sax)、Ryan Zoidis(sax)、Adam Deitch(ds)、Erick Coomes(b)、Adam Smirnoff(g)、Jeff Bhasker(key)という7名。
特にEric Krasnoは、ジャズ・ファンク・バンドSouliveのメンバーとしても知られていますね。それも含めて、普段は他の活動をしているメンバーが集まり、演奏を楽しむバンドという側面も強いかもしれません。
これまでLettuce名義では『Outta Here』(2002年)、『Live at Blue Note Tokyo』(2004年)、『Rage!』(2008年)、『Fly!』(2012年)といったアルバムをリリースしています。
本作『Rage!』(2008年)は『Outta Here』(2002年)に続く2枚目のスタジオ録音作です。メンバーは上記に示した7名からJeff Bhaskerが抜け、代わりにSouliveのキーボード奏者でもあるNeal EvansとRashawn Ross(tp)が加わった8名体制となっています。
それ以外に故J Dillaにフックアップされ、R&Bシーンで人気を博している男性シンガーDwele、現在ではグループのメンバーとなっている男性シンガーNigel Hall、SouliveのドラマーAlan Evans(per)、Maurice Brown(tp)、Joshua Roseman(tb)等がレコーディングに参加しています。
Curtis Mayfieldの「Move On Up」、Charles Wright & The Watts 103rd St Rhythm Band「Express Yourself」というカヴァー2曲以外はメンバーのオリジナルです。
メンバー自身は本作を"プレイしすぎないテイストフルな作品"と説明しています。その意味では、怒涛のファンク・サウンドではなく、余白のあるファンク・グルーヴを楽しむアルバムだと思います。
また、僕が本作に惹かれたのは、本作に収録されたいくつかの曲が、2006年に逝去したJ Dillaからの影響を受けた作品である点をメンバー自身が公言している点です。その表れとして、彼の本名(James Dewitt Yancey)を冠した「Mr. Yancey」という曲がCDボーナス・トラックとして収録されています。
天才トラック・メイカーとファンク・ジャム・バンドの接点は興味深いですね。
いろいろな楽しみ方ができるファンク作品だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Blast Off」
リラックスしたホーン隊のプレイが本作の空気を象徴しているかもしれません。熱くなりすぎず、メンバー達が演奏を楽しんでいる感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=dBDM1ZIpm9s
「Sam Huff's Flying Raging Machine」
軽やかながらも、ずっしりとした手応えも感じる格好良いファンク・グルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=1QPJuJPi2EM
「Move On Up」
Curtis Mayfieldの人気曲をDweleをフィーチャリングしてカヴァー。オリジナルは『Curtis』(1970年)に収録されています。まさにCurtis Mayfield風のDweleのヴォーカルも含めて先人たちへのリスペクトを感じるストレートなカヴァーです。前述のようにJ Dillaの死に影響を受けたカヴァー・セレクトで、J Dillaがその才能を認めたDweleをフィーチャーするところがグッときますね。
https://www.youtube.com/watch?v=KdOiWxMKm50
「King Of The Burgs」
ゴリゴリとしたファンク・グルーヴで突き進みます。このあたりのノリは人気ジャム・バンドらしくさすがですね。
https://www.youtube.com/watch?v=togN4HnlINM
「Need To Understand」
彼らの言うプレイしすぎないテイストフルな演奏を実感できます。
https://www.youtube.com/watch?v=l54uRmGZbqA
「The Last Suppit」
キレのあるサウンドで疾走するこの演奏もかなり格好良いですね。このバンドの魅力がコンパクトに凝縮された1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=VFJehhhgxjQ
「Dizzer」
新メンバーNeal Evansの作品。2分にも満たない曲ですが、アルバムにアクセントをつけています。
https://www.youtube.com/watch?v=rwVilU-d1ZA
「Makin' My Way Back Home」
Nigel Hallをフィーチャー。Nigel Hallのソウルフル・ヴォーカルとロッキンなギター・サウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=p4MxvUSqOGw
「Salute」
ジャム・バンドらしい臨場感のある演奏がいいですね。メンバーが演奏を楽しんでいる様子が伝わってきます。
「Speak EZ」
タイトルからして僕のテーマか(笑)。本作らしい音の間を楽しめるファンク・チューンです。
https://www.youtube.com/watch?v=SxBZ3qLweAY
「Express Yourself」
Charles Wright & The Watts 103rd St Rhythm Bandのヒット曲をカヴァー。オリジナルは『Express Yourself』(1970年)に収録されています。「Move On Up」同様、オリジナルに忠実なカヴァーに仕上がっています。このバンドには変な独自解釈よりも、こういうストレートなカヴァーがマッチしていますね。
https://www.youtube.com/watch?v=AHv0md_HCYc
「Relax」
哀愁メロディ&Hip-Hop的ビートのパートとストレートなファンク・グルーヴのパートが交錯します。この演奏もJ Dillaの影響を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=tNpcLY1GdhE
「By Any Shmeeans Necessary」
ラストは重量感のあるファンク・チューンで締め括ってくれます。Zapp/Roger的なエッセンスも感じられます。
https://www.youtube.com/watch?v=fqv_8FhQTbU
「Mr. Yancey」
CDボーナス・トラック。タイトルの通り、J Dillaに捧げられた曲です。J Dillaのトラックを意識したサウンドはアルバム本編の演奏と一線を画すものですが、J Dilla好きの人が聴くと、かなり興味深いはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=D8oNrJSESos
「Star Children」
国内盤CDのみのボーナス・トラック。本編にはないスペイシー・ファンクに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=4tCEWBZ0P_o
『Outta Here』(2002年)
『Live at Blue Note Tokyo』(2004年)
『Fly!』(2012年)