2015年10月22日

Judee Sill『Heart Food』

悲運の女性SSWの美しくも切ない2nd☆Judee Sill『Heart Food』
ハート・フード
発表年:1973年
ez的ジャンル:悲運の女性SSW
気分は... :寂しげな歌声が愛おしい・・・

今回は悲運の女性シンガー・ソングライターJudee Sillの2ndアルバム『Heart Food』(1973年)です。

Judee Sillは1944年L.A.生まれ。

複雑な家庭環境で育ってきた影響からか、Judeeは10代で家出をし、非行を繰り返していました。ドラッグに溺れる一方でクラブやコーヒー・ハウスでライヴ活動を行うなどミュージシャンの道を志すようになります。

そんな中でL.A.のガレージ・バンドThe LeavesのメンバーJim PonsがJudeeの楽曲「Dead Time Bummer Blues」を気に入り、グループでレコーディングします。さらにThe Leaves解散後にJim Ponが加入したThe TurtlesがJudeeの楽曲「Lady-O」をシングル曲として取り上げたことで彼女の名がシーンで知られるようになります。

そんな彼女に目を付けたのがDavid Geffenであり、Geffenが設立したばかりのAsylum Recordsとの契約に成功します。Jackson Browneをデビューさせるために設立されたAsylumでしたが、結果としてJudeeのデビュー・アルバム『Judee Sill』(1971年)が記念すべきAsylumの第1弾アルバムとなりました。

『Judee Sill』からのシングル「Jesus Was a Cross Maker」Graham Nashがプロデュースし、さらにGraham NashDavid Crosbyのツアーのオープニング・アクトをJudeeが務めました。

Asylumとしては、JudeeをJoni Mitchellのようなアーティストとして売り出したかったのでしょうが、期待したほどの成功を収めることはできませんでした。全体的に地味だし、キリスト教的な歌詞はヒッピー全盛の時代に若者の支持は得られづらかったのでしょうね。

1973年には今回紹介する2ndアルバム『Heart Food』(1973年)をリリースしますが、こちらの売れ行きも芳しくなく、Asylumとの契約を打ち切られてしまいます。

1979年にドラッグの過剰摂取につき死亡。享年35歳。

悲運のシンガー・ソングライターという点でいえば、Nick Drakeあたりとイメージが重なりますね。

フォークと宗教音楽、バロック音楽が結びついたJudeeの美しくも儚い音世界には、聴く者の胸を揺さぶる何か特別なものが宿っている気がします。

Turtlesも取り上げた「Lady-O」Graham Nashプロデュースの「Jesus Was a Cross Maker」が収録された1st『Judee Sill』(1971年)を最初に取り上げるべきかもしれませんが、今回は個人的に彼女の曲で一番好きな「The Kiss」が収録されている2nd『Heart Food』(1973年)を取り上げました。

前作も手掛けたHenry Lewyがプロデュースし、レコーディングにはJim Gordon(ds)、Buddy Emmons(g)、Spooner Oldham(key)、Chris Ethridge(b)、Gloria Jones(vo)、Louie Shelton(g)、Richard Perissi(french horn)、Harris Goldman(violin)、David Schwartz(viola)、Carolyn Willis(vo)、Emil Richards(per)、Bobbye Hall(per)等が参加しています。

僕の一番のお気に入り「The Kiss」やフリーソウル人気曲「Soldier Of The Heart」あたりがハイライトだと思います。

それ以外であれば、ソウルフルな「Down Where The Valleys Are Low」、エレピの効いたフォーキー「The Phoenix」も僕好み。また、ラストの大作「The Donor」はミサのエッセンスを取り入れたJudeeならではの世界観が反映された1曲です。

「The Kiss」に代表される彼女の美しくも何処か寂しげな歌声がたまらなく愛おしくなります。

楽曲はすべてオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「There's A Rugged Road」
カントリー・タッチのオープニング。将来へ希望を抱きながら、現在の孤独で苦しい状況を耐え忍ぶ開拓者を歌う歌詞は、Judeeの当時の心情を反映したものなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=3FLrRyRKWGc

「The Kiss」
前述のように僕が一番好きなJudee作品。かのXTCのAndy Partridgeをして、"これまで聴いた最も美しい歌"と言わしめた名曲です。フォークとバロック音楽が結びついた彼女らしい純粋無垢な美しくも儚い音世界の魅力が最も実感できる曲だと思います。苦悩や苦しみから解放されたいと神に救いを求める彼女の美しすぎる歌声と、その後の彼女を待ち受ける不運を重ね合わせると胸に込み上げてくるものがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=UdnQkQYT63E

そういえば、"北欧のStevie Wonder"ことTuomoが本曲にインスパイアされて作った「Hold Me (Till The Morning)」という曲を当ブログで紹介したのを思い出しました。
Tuomo「Hold Me (Till The Morning)」
 https://www.youtube.com/watch?v=5EResJk9tWo

「The Pearl」
この曲もカントリー・タッチです。綺麗なパールを周囲に長らく求めてきたが、実は自分の中にあることに気づきつつ、それを掴めずにいるモヤモヤ感が歌われています。
https://www.youtube.com/watch?v=wJDfet1w05E

「Down Where The Valleys Are Low」
オルガンやヴァイヴの音色や女性コーラスが印象的なソウル・フレイヴァーの仕上がり。自分の居場所を探す切なる願いが伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=mV_erIikfA4

「The Vigilante」
70年代西海岸女性SSWらしいカントリー・フレイヴァーの仕上がり。穏やかな語り口ながらもJudeeのキリスト教的倫理観が表現されています。
https://www.youtube.com/watch?v=E7Uk5ul-tME

「Soldier Of The Heart」
ファンキーな味わいの本曲は、アルバムの中で最もキャッチーな仕上りであり、Free Soulのコンピにも収録されました。Judeeらしからぬ躍動感ですが、「The Kiss」と並ぶ本作のハイライトだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=nlxyuei6PzI

「The Phoenix」
シンプルながらも味のあるフォーキー・チューン。エレピの音色が効いています。不死鳥のように生き抜こうしつつ、葛藤するJudeeの切なる歌声がたまらくいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=VrxtJorXiiQ

「When The Bridegroom Comes」
当時のJudeeの恋人であったDavid Omer Beardenとの共作。ピアノの弾き語りで結婚式の花嫁について歌ったものですが、花嫁と精霊を結び付けるあたりがJudeeらしい歌世界かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=cz_tQD4DgwM

「The Donor」
ラストは9分を超える大作。ミサの歌詞が繰り返し歌われる、Judeeの宗教音楽からの影響が色濃く反映されたある意味最もJudee Sillらしい曲かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=I61zfxc2cHo

『Judee Sill』(1971年)
ジュディ・シル

『Dreams Come True』(2005年)
ドリームズ・カム・トゥルー
posted by ez at 02:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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