
発表年:2007年
ez的ジャンル:L.A.スピリチュアル・ジャズ・プロジェクト
気分は... :ストリングスの調べとスピリチュアル・ジャズ・・・
今回はL.A.のスピリチュアル・ジャズ・プロジェクトBuild An Arkの2ndアルバム『Dawn』(2007年)です。
US西海岸の奇才ミュージシャン/プロデューサーCarlos NinoやヴォーカリストのDwight Tribleを中心としたスピリチュアル・ジャズ・プロジェクトBuild An Arkの紹介は、1stアルバム『Peace With Every Step』(2004年)に続き2回目となります。
1stアルバム『Peace With Every Step』には総勢20名のメンバーが参加していましたが、2ndとなる本作『Dawn』(2007年)にはそれを上回る28名のミュージシャンがメンバーとして名を連ねます。
Carlos Nino(prod、vo)、Dwight Trible(vo)のほかに、70年代にTribeレコードを創設したトロンボーン奏者Phil Ranelin(tb)、70年代から活躍するキーボード奏者Nate Morgan(p、org)、シカゴのジャズ・ファンク・バンドThe Pharaohsのオリジナル・メンバーDerf Reklaw(ds、per、congas)、さらにはDamon Aaron(g)、Alan Lightner(ds、shaker、steel pans)、Joshua Spiegelman(fl、ts)、Adam Rudolph(lute、kalimba)、Mark Maxwell(vo、g)、Gaby Hernandez(vo)、Tracey Hart(vo)、Andres Renteria(cymbal)が前作から引き続き参加しているメンバーです。
それ以外にMiguel Atwood-Ferguson(viola、org、p)、Nedra Wheeler(b)、Nick Rosen(b)、Trevor Ware(b)、Dexter Story(ds)、Harris Eisenstadt(ds)、Peter Jacobson(cello)、Rebekah Raff(harp)、Big Black(vo、djembe)、Ralph "Buzzy" Jones(fl)、Joey Dosik(as)、Munyungo Jackson (per、xylophone、talking drum)、Avotcja(agogo、bell tree)、Sara Schoenbeck(bassoon)、Angela Estrada(vo)、Sheila Govindarajan(vo)等が参加しています。
新参加では今やすっかりL.A.シーンの中心的存在となったMiguel Atwood-Fergusonや伝説のパーカッション奏者Big Blackあたりの参加が目立ちますね。それ以外にもDexter Storyや最近ではQuantic Presents The Western Transient『A New Constellation』にも参加していたAlan LightnerあたりはJTNC好きの人ならば要チェックかもしれませんね。
前作と同じくPharoah Sandersのカヴァーが2曲収録されていますが、アルバム全体の雰囲気は1stアルバム『Peace With Every Step』とは少し異なります。
前作以上にヴィオラ、チェロといった弦楽器による美しい演奏の比重が高まった分、"静"の印象が強いアルバムかもしれません。このあたりはMiguel Atwood-Fergusonの貢献がかなり大きいと思います。また、フォーキー・ジャズ的な演奏も印象に残ります。スピリチュアル・ジャズには欠かせない民族楽器によるアクセントも随所に散りばめられています。
『Peace With Every Step』と比較すれば、地味な印象かもしれませんが、L.A.スピリチュアル・ジャズの素晴らしさを堪能できるアルバムです。
聴く順番としては、『Peace With Every Step』が先かもしれませんが、こちらも聴き逃して欲しくないアルバムです。また、JTNCの流れでMiguel Atwood-Fergusonに注目している人は必聴だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Sunshine」
Mark Maxwell/Miguel Atwood-Ferguson作。Nate MorganのピアノとMiguel Atwood-Fergusonのヴィオラが牽引するアルバムの序曲。
「Healing Song」
Pharoah Sandersのカヴァー1曲目。これぞスピリチュアル・ジャズといった趣の感動的な仕上り。Nate MorganのピアノとMiguel Atwood-Fergusonのヴィオラが奏でる美しく感動的な音色をバックに、Dwight Tribleのヴォーカルがスピリチュアルな雰囲気を醸し出します。何だかんだ言って、コレが本作で一番好きですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0ZmbqMktDaY
「Love, Sweet Like Sugar Cane」
Big Black作品をカヴァー。オリジナルはアルバム『Lion Walk』(1968年)に収録されています。ここでは作者Big Blackがヴォーカルをとっています。ラブ&ピースな雰囲気であったオリジナルに対して、本ヴァージョンは美しいストリングスに包まれたフォーキー・ジャズといった雰囲気の仕上がりです。
Big Blackのオリジナルをチェックするのも楽しいですよ。
Big Black「Love, Sweet Like Sugar Cane」
https://www.youtube.com/watch?v=BAepOKeiXP4
「Dawn」
Carlos Nino/Miguel Atwood-Ferguson作。
Derf Reklawのパーカッシヴなコンガ、Dexter Storyのドラムによるトライバルなリズム隊をバックに、Peter Jacobsonのチェロ、Miguel Atwood-Fergusonのヴィオラ、Joshua Spiegelmanのフルートが素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。飾り気がない分、ストレートに伝わってくるコーラス隊のヴォーカルもスピリチュアル・ジャズらしくてグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=TIDtRvXXx_U
「River Run」
Adam Rudolph作。リュート、ハープ、シロフォン、フルートにカリンバ、スティール・パンなどが絡むという音色の豊かさを楽しむべきトライバル・ジャズ!
「When Ancestors Speak」
Avotcja作。トーキング・ドラムにハープ、ベルツリーが絡む美しいイントロに続き、Peter Jacobsonのチェロ、Miguel Atwood-Fergusonのヴィオラが絡み、さらにはDwight Tribleのヴォーカルが加わるBuild An Arkならではのビューティフル・スピリチュアル・ジャズ。美しいストリングス等の響きとトライバルなリズムの美しき融合に魅了されます。
「Morning Glory」
Mark Maxwell作。美しきフォーキー・スピリチュアル・ジャズ。まさに輝かしい朝のような澄み切った音世界に感動します。
「In Her Smile」
Nick Rosen作。ジャズのリズム隊にPeter JacobsonのチェロとMiguel Atwood-Fergusonのヴィオラによる素晴らしいアンサンブルが絡む本作らしい演奏を聴けます。
https://www.youtube.com/watch?v=rFeykRbp9Jg
「"You Yourself Are The Key To The Universe."」
Pharoah Sandersのカヴァー2曲目。ここでもPeter JacobsonとMiguel Atwood-Fergusonの弦楽にJoshua Spiegelmanのフルートが絡むBuild An Arkならではのスピリチュアル・ジャズを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=gK-V2Cd25Yk
「Heaven」
ラストはチェロ、ヴィオラ、ファゴット、ハープ、ピアノによるクラシックの要素が強い美しい演奏で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=grlq3p8ZP8w
国内盤にはJackie DeShannonのヒットで知られるBurt Bacharach作品のカヴァー「What The World Needs Now Is Love」がボーナス・トラックとして収録されています。
Build An Arkの他作品もチェックを!
『Peace With Every Step』(2004年)

『Love Part 1』(2009年)

『Love Part 2』(2010年)
![ラヴ・パート2 [限定盤]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51wBXD6o5KL._SL160_.jpg)
『The Stars Are Singing Too』(2011年)
