発表年:2009年
ez的ジャンル:復活系ブラック・ジャズ
気分は... :今年のグラミーは・・・
毎年、つまらないと批判しながらついつい観てしまうグラミー賞・・・
今年も文句を言いつつ、しっかり観てしまいました。
正直、主要4部門をはじめ、受賞そのものについては全く関心がなく、観ていても退屈でしたが、パフォーマンスは結構楽しめましたね。
特にLady GagaによるTribute to David Bowieと、Johnny Deppも参加したThe Hollywood VampiresのTribute to Lemmyが圧巻でしたね。
一方、Tribute to Glenn FreyのJackson Browneは老いが目立ちましたね。
それ以外ではKendrick Lamarのパフォーマンスはインパクトありましたね。彼が主要部門を受賞すれば、もう少し興味が湧いたのかもしれませんが・・・
今回はデトロイトの伝説のジャズ・レーベルTribeで活躍したジャズ・ミュージシャン達が、デトロイト・テクノの巨人Carl Craigの呼び掛けに応じて再集結したアルバムTribe『Rebirth』(2009年)です。
Tribeは、Phil Ranelin、Wendell Harrisonによって設立されたデトロイトのジャズ・レーベル。ブラック・ジャズの代表的なレーベルの1つとして、70年代ジャズ・シーンに軌跡を残しました。
そんな70年代の伝説のジャズ・レーベルを甦らせたのが、デトロイト・テクノの巨人Carl Craig。Innerzone Orchestra、The Detroit Experimentに代表されるように、テクノとジャズの融合を図ってきたCarl CraigがTribeのジャズ・ミュージシャン達へアプローチしたのは自然な流れだったのかもしれません。
Carl Craigの呼び掛けに応じたのは、Tribeの創設者であるPhil Ranelin(tb)、Wendell Harrison(sax)、さらにはMarcus Belgrave(tp)、Doug Hammond(ds)、といったかつてのTribe所属ミュージシャン達です。
プロジェクトは2007年の「Livin' In A New Day」、2008年の「Vibes From The Tribe」といった12"シングルで始動し、2009年にフル・アルバムとなる本作『Rebirth』をリリースしました。
Carl Craigがプロデュース&ミックスを手掛け、レコーディングには前述の4名以外にAmp Fiddler(key、org)、John Arnold(g)、Kelvin Sholar(el-p)、Karriem Riggins(ds)等のミュージシャンも参加しています。
Carl Craigが自分の色を出し過ぎず、Tribeの伝説的ミュージシャンを主役に据え、ブラック・ジャズに徹しているのが印象的です。
「Vibes From The Tribe」、「Glue Finger」、「13th And Senate」、「Where Am I」といった、かつてのTribe名曲の再演もいいですが、「Son Of Tribe」、「Ride」といった今日的な格好良さを持つ演奏にもグッときます。
Tribeのサウンドとスピリッツの影響力を再確認できる1枚です。
全曲を紹介しときやす。
「Livin' In A New Day」
Phil Ranelin作。前述のように、プロジェクトの始動となったシングル曲。デトロイトのDNAを受け継ぐミュージシャン達をバックに、Wendell Harrison、Marcus Belgrave、Phil Ranelinが健在ぶりを示すプレイを聴かせてくれます。70年代ブラック・ジャズを実にスマートに再現している感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=AlfVsSt6Tqs
「Glue Finger」
Marcus Belgrave作。『Gemini II』(1974年)収録曲の再演。フリーキーなアフロ・ファンクであったオリジナルと比較して、トライバルなエッセンスが強調されたパーカッシヴな演奏となっています。
https://www.youtube.com/watch?v=QXe4pcT0YLk
「Denekas Chant」
Doug Hammond作。ブラック・ジャズのエッセンスを分かりやすいかたちで聴かせてくれます。Ralphe Armstrongのベースに先導されたWendell HarrisonのクラリネットとPhil Ranelinのトロンボーンが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=uNjIDHdpG58
「Vibes From The Tribe」
Phil Ranelin作。『Vibes From The Tribe』(1975年)収録のジャズ・ファンク・クラシックの再演です。オリジナルの雰囲気を受け継ぎつつ、今日的な隠し味を加え、2009年ならではの「Vibes From The Tribe」を聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=O0waO6mNaHY
「Son Of Tribe」
Carl Craig/Marcus Belgrave/Wendell Harrison作。この曲はCarl CraigとTribeのブラック・ジャズの融合感がありますね。Damon WarmackとDamon Warmackのリズム隊にグッときます。僕の一番のお気に入り!
https://www.youtube.com/watch?v=wL-c2luYVO0
「Jazz On The Run」
Wendell Harrison作。John Arnoldのファンキー・ギターとKelvin Sholarのエレピに先導され、Marcus BelgraveのトランペットとWendell Harrisonのフルートが小粋なアンサンブルを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=GZzTR8GueDA
「Ride」
Wendell Harrison作。Tribe云々に関係なく、疾走感のあるグルーヴにグッときます。そんな格好良いバックに呼応し、Wendell Harrison、Marcus Belgraveがソロをきめてくれます。
「Lesli」
Lawrence Williams作。Wendell Harrison、Marcus Belgrave、Phil Ranelinのアンサンブル、ソロを楽しむための演奏ですね。ミステリアスな大らかさがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=xBepbwss5SM
「13th And Senate」
Phil Ranelin作。『The Time Is Now!』(1974年)収録曲の再演。Doug Hammondがドラムで参加し、オリジナルの雰囲気を再現してくれます。オールド・ジャズな味わいがいいですね。Kelvin Sholarのエレピがいいアクセントになっています。
「Where Am I」
Wendell Harrison作。『An Evening With The Devil』(1972年)収録曲の再演。ここではJoan Belgraveの女性ヴォーカルをフィーチャーしたビューティフル・バラードに仕上げています。
「Livin' In A New Day (Carl Craig Remix)」
CDボーナス・トラック。「Livin' In A New Day」のCarl Craigによるリミックス。本来のCarl Craigらしいサウンドを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=atVZO7ujgCg
ご興味がある方は70年代のTribe作品もチェックを!
Wendell Harrison『An Evening With The Devil』(1972年)
Phil Ranelin『The Time Is Now!』(1974年)
Phil Ranelin『Vibes From The Tribe』(1975年)
Marcus Belgrave『Gemini II』(1974年)