発表年:2016年
ez的ジャンル:期待の男性R&Bシンガー
気分は... :繊細満々・・・
今回は新作アルバムからR&Bシーン注目の男性シンガーBJ the Chicago Kid、初のメジャー作品『In My Mind』です。
先週紹介したAnderson .Paak『Malibu』でも触れた話題のR&B作品を紹介したいと思います。
BJ the Chicago Kid(本名Bryan James Sledge)は1984年シカゴ生まれの男性R&Bシンガー/ソングライター。両親はクワイアのディレクター、兄のAaron Sledgeもミュージシャンです。兄AaronはMario、Tank、Tyrese等へ楽曲提供しており、本作でもソングライティングで参加しています。
19歳の時にL.A.を拠点に本格的な音楽活動を開始し、2005年にはStevie Wonder『A Time To Love』にコーラスで参加し、2006年にはKanye Westのシングル「Impossible」にBJ名義でフィーチャリングされています。
その後もKendrick Lamar、ScHoolboy Q、Ab-Soul、Jay Rock、Freddie Gibbs、Warren G.、GLCといった西海岸や注目のラッパーとの共演を重ねていきます。
2012年には1stアルバム『Pineapple Now-Laters』をリリースし、高い評価を獲得します。そして、これがきっかけで名門Motownとの契約を獲得しました。
さらにBig K.R.I.T.『King Remembered In Time』、Chance the Rapper『Acid Rap』、ScHoolboy Q『Oxymoron』、Dr. Dre『Compton』、Jill Scott『Woman』、 Joey Bada$$『B4.Da.$$ 』、Anderson .Paak『Malibu』といった話題作に続々と客演し、BJ the Chicago Kidへの注目度が最高潮となったタイミングでリリースされたメジャー初アルバムが本作『In My Mind』です。
BJ The Chicago Kid自身をはじめ、Mike & Keys、DJ Khalil、Uncle Dave、Cornelio Austin、Sean Cooper、DJ Reflex、Matt Edwards、Aaron Renner、District 9、Jairus "J.Mo" Mozee、Joe Syring、Lamar "MYGUYMARS" Edwards、Da Internz、Aaron Michael Cox、David Haddonといった多彩なプロデューサーが起用されています。
また、Kendrick Lamar、Chance the Rapper、Big K.R.I.T.等がフィーチャリングされています。
D'Angeloを彷彿させるファルセット・ヴォーカルがBJの魅力です。実際、BJはD'Angeloのカヴァーもリリースしています。
多彩なプロデューサーを起用し、アルバム前半は『In My Mind』のタイトルの通り、内省的な歌を現行R&Bらしいサウンドで聴かせてくれます。一方、後半は60〜70年代ソウルへの愛情を感じるヴィンテージ感のある楽曲が並びます。
Chance the Rapperとの共演曲「Church」、Big K.R.I.T.をフィーチャーしたヴォコーダー曲「The Resume」というシングル2曲、Isabellaのセクシーなフレンチ・ヴォイスが入った「Love Inside」、美しいバラード「Shine」、キャッチーな哀愁チューン「Wait 'Til The Morning」、Kendrick Lamarをフィーチャーしたヴィンテージ感のある「The New Cupid」、人気プロデュース・チームMike & Keysの手腕が光る「Crazy」、Marvin Gaye調のソウル・チューンとしての話題の「Turnin' Me Up」あたりがオススメです。
先週紹介したAnderson .Paak『Malibu』もそうですが、最近の西海岸のR&B/Hip-Hopシーンの勢いは凄いですね。
ここ数年R&Bシーンに少し物足りなさを感じていた僕ですが、今年はかなり楽しめる1年になりそうです。
全曲紹介しときやす。
「Intro」
BJ The Chicago Kidプロデュース。アルバムのイントロ。
「Man Down」
Buddy & Constantineをフィーチャー。Mike & Keys/DJ Khalilプロデュース。Flatbush Zombies & The Underachievers「Benefit Concert」のサンプリングと共に始まる哀愁トラックにのって、やりきれない心の叫びが聞こえてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=NbRMYvDJX2s
「Church」
Chance the Rapper/Buddyをフィーチャー。Mike & Keys/Uncle Daveプロデュース。先行してシングル・リリースされていた楽曲です。今後さらに注目度が増すであろう期待のラッパーChance the RapperとBJの共演はワクワクしますね。心の中の葛藤をChance the Rapperのライムがあぶり出し、BJ the Chicago Kidのヴォーカルがそれを優しく諭しているような感じです。二人の優れた才を知るにはうってつけの1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=xAE52TBtVrc
「Love Inside」
Isabellaをフィーチャー。Cornelio Austinプロデュース。切なるBJの歌声とIsabellaのセクシーなフレンチ・ヴォイスが印象的な哀愁チューン。途中でCommon「I Used to Love H.E.R.」がサンプリングされています。
https://www.youtube.com/watch?v=_Jn1gnSYE4Q
「The Resume」
Big K.R.I.T.をフィーチャー。Sean Cooperプロデュース。先行してシングル・リリースされていた楽曲です。ヴォコーダー入りの哀愁バラードがジワジワきます。
https://www.youtube.com/watch?v=QEh7dnVxV84
「Shine」
DJ Reflex/Matt Edwardsプロデュース。美しいピアノとストリングスをバックに、BJが美しいファルセット・ヴォーカルを披露してくれる素晴らしいバラード。兄Aaron Sledgeがバック・コーラスを務めています。
「Wait 'Til The Morning」
Isaをフィーチャー。Aaron Renner/District 9プロデュース。なかなかキャッチーな哀愁チューンで気に入っています。終盤のIsaのヴォーカルが何とも言えない余韻を与えてくれます。
「Heart Crush」
Jairus "J.Mo" Mozeeプロデュース。ロッキン・サウンドをバックに、BJのセクシーなファルセット・ヴォーカルを堪能できるバラード。
「Jeremiah/World Needs More Love」
Eric Ingramをフィーチャー。Jairus "J.Mo" Mozeeプロデュース。生演奏にこだわったヴィンテージ感のあるソウル・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=ThzNOQ6J6Ek
「The New Cupid」
Kendrick Lamarをフィーチャー。BJ The Chicago Kid/Joe Syringプロデュース。この組み合わせも楽しみですね。Raphael Saadiq「Oh Girl」、Jean Knight「Mr. Big Stuff」ネタを使ったリラックスしたヴィンテージ感が心地好い1曲に仕上がっています。PVでの登場シーンも含めて、先に成功を収めたKendrick LamarがBJを後押ししている感じがとてもいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OrzTkP2bJpk
「Woman's World」
Cornelio Austinプロデュース。この曲もオーケストレーションを配した60年代風のソウル・バラードです。BJのソウル魂をストレートに楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=SPxkXzkgdk0
「Crazy」
Mike & Keysプロデュース。BJのミックス・テープ『The M.A.F.E. Project』(2014年)のプロデュースも手掛けたMike & Keysだけあって、BJの魅力の引き出し方を心得ています。人気プロデュース・チームの手腕が光るセクシー&キャッチーな仕上りです。
「Home」
Lamar "MYGUYMARS" Edwards(1500 Or Nothin)プロデュース。故郷シカゴを歌った、BJの想いが詰まった感動的なバラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=2HBFvH_AoYo
「Falling On My Face」
Da Internz/Aaron Michael Coxプロデュース。味わい深いバラードを丁寧に歌い上げます。BJの歌心が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=7JieWTHVC2M
「Turnin' Me Up」
Jairus "J.Mo" Mozee/David Haddonプロデュース。Marvin Gayeへのオマージュ的な雰囲気のソウル・チューンを本作のハイライトに推す人も多いのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=KZdJoWm3cHU
ご興味がある方はBJ参加作品もチェックを!
Big K.R.I.T.『King Remembered In Time』(2013年)
Chance the Rapper『Acid Rap』(2013年)
ScHoolboy Q『Oxymoron』(2014年)
Dr. Dre『Compton』(2015年)
Joey Bada$$『B4.Da.$$ 』(2015年)
Jill Scott『Woman』(2015年)
Anderson .Paak『Malibu』(2016年)
正直,サウンド・アレンジを凝りすぎてつかみどころない曲もあって,ちょっと戸惑うこともあり,オーセンティックなメロディーと生音だけで勝負したら,もっと素晴らしいアルバムになったのでは・・・という気もします。ただ,古き良きソウルへの敬愛も垣間見ることのできるアルバムで,聴けば聴くほど味が出てくる奥の深さを感じますね。
ありがとうございます。
現在のL.A.のR&B/Hip-Hopシーンの面白さを象徴する1枚ですね。
個人的には現行R&Bらしさとヴィンテージ感のバランスが取れている点を気に入っています。
L.A.の旬なアーティスト/プロデューサーとのコラボによるケミストリーを期待したくなるアーティストです。その意味ではピープルツリーも含めて注目していきたいですね。