発表年:2016年
ez的ジャンル:チリ出身女性ジャズ・シンガー/ギタリスト/ソングライター
気分は... :足跡を残す・・・
今回は新作アルバムから女性ジャズ・アーティスト作品を!
チリ出身の女性シンガーCamila Mezaの最新作『Traces』です。
Camila Mezaは、チリ、サンティアゴ出身の女性ジャズ・シンガー/ギタリスト。現在はN.Y.を拠点に活動しています。
これまで『Skylark』(2007年)、『Retrato』(2009年)、『Prisma』(2013年)という3枚のアルバムをリリースしており、Sunnyside第一弾となる本作『Traces』は4thアルバムとなります。
プロデュースはCamila MezaとNZ出身のジャズ・ベーシストMatt Pierson。
レコーディング・メンバーはCamila Meza(vo、g)、Matt Pierson(b)、Shai Maestro(p、el-p、org、mellotron、celesta)、Kendrick Scott(ds)、Bashiri Johnson(per)、Jody Redhage(cello)、Sachal Vasandani(vo)。
注目メンバーはKendrick ScottとShai Maestro
Kendrick ScottはJazz The New Chapter好きの人であれば、お馴染みのジャズ・ドラマーですね。
イスラエル出身のShai Maestroは、同郷の先輩であり、近年その才能が最も注目されるジャズ・ベーシストの一人であるAvishai Cohenのグループに長年在籍していたジャズ・ピアニストです。当ブログで紹介した作品であれば、Mark Guiliana Jazz Quartet『Family First』(2015年)にも参加していました。
前髪パッツンのキュートなポーズのジャケからは、透明感のある女性ジャズ・シンガーというイメージですが、実際の音を聴くとギタリストとしてのプレイもなかなかです。ヴォーカル面でも自在なヴォーカリーズ・スタイルも披露してくれており、才能のあるジャズ・アーティストといった印象を強く受けます。
また、全10曲中6曲が彼女のオリジナルであり、ソングライターとしての実力も示してくれています。さらにカヴァー4曲には母国チリの偉大なソングライターVictor Jaraの作品や、ブラジル人アーティストDjavanの作品も含まれ、ワールド・ジャズ的な要素もあるのが僕の嗜好にフィットします。
Kendrick Scott、Shai Maestroらがバックを務めることもあり、"今ジャズ"作品としても十分楽しめます。
Camila Meza『Traces』 EPK
https://www.youtube.com/watch?v=kR3-HqZBHdc
僕はCDショップでジャケのみで勝手にブラジル人女性SSWだと勘違いして試聴したのですが、予想外のジャズ・サウンドで嬉しい勘違いになりました(笑)
CDショップのサイトでは、Becca Stevens Bandあたりとの共通点を謳っていますが、個人的にはGretchen Parlatoあたりと一緒に聴きたい気分になりました。
今の季節にフィットする透明感のある女性ジャズ・アーティスト作品です。
全曲紹介しときやす。
「Para Volar」
Camila Meza作。彼女の変幻自在のヴォーカルが軽やかに舞う爽快なオープニング。中盤以降のヴォーカル&ギターが一体化したプレイに彼女のジャズ魂を感じます。
「Away」
Camila Meza作。US男性ジャズ・シンガーSachal Vasandaniとのデュエット。彼女のSSW的側面を楽しめるフォーキー・ジャズです。チェロやチェレスタの音色もいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=khCpADa00T8
「Traces」
Camila Meza作。タイトル曲は"今ジャズ"らしい雰囲気に包まれています。Camilaのギタリストとしての才を実感できると同時に、Matt Piersonのベース、Shai Maestroのピアノ、Kendrick Scottのドラムと息の合った演奏で楽しませてくれます。
「Amazon Farewell」
ブラジルの世界的シンガー・ソングライターDjavanの作品をカヴァー。オリジナルは『Puzzle Of Hearts』(1990年)に収録されています。ミステリアスかつスリリングなワールド・ジャズ的サウンドは僕好み。演奏にエレガントなスパイスを加えてくれるJody Redhageのチェロも効いています。
「Mar Elastico」
Camila Meza作。チェレスタのメロウな音色とCamilaのピュアなスペイン語ヴォーカルを聴いていると童心に返ったような気分になります。
「Luchin」
彼女の母国チリのフォルクローレ男性シンガー・ソングライターであり、歌による社会変革Nueva Cancion運動の旗手の1人であったVictor Jaraの作品をカヴァー。チリ人としての誇りやDNAを感じる1曲です。
「Greenfinch and Linnet Bird」
Stephen Sondheim作。ミュージカル『Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street』(1979年)の挿入歌をカヴァー。Gretchen Parlatoあたりと一緒に聴きたくなるスタンダード・カヴァーです。中盤のギター・プレイもグッド!
「Mangata」
Camila Meza作。情感たっぷりのJody Redhageのチェロと共に始まるミステリアスな1曲。スペイン語ヴォーカルがミステリアスな雰囲気をさらに高めているのかも?
※ジャケやインナーには本曲が8曲目、次の「Emerald」が9曲目となっていますが、実際のCDでは本曲が9曲目、「Emerald」が8曲目に収録されています。
「Emerald」
Camila Meza作。N.Y.今ジャズらしい女性ジャズ・ヴォーカル感が伝わってくる演奏です。彼女の持つしなやかな音世界と好バッキングがよくフィットしています。
「Little Person」
Jon Brian作。映画『脳内ニューヨーク(Synecdoche, New York)』(2008年)のために書かれた楽曲をカヴァー。Camilaのピュアな歌声を活かした素敵なバラードでしっとりと締め括ってくれます。
ご興味がある方はCamila Mezaの他作品もチェックを!
『Skylark』(2007年)
『Retrato』(2009年)
『Prisma』(2013年)